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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第二章

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88/200

幕間:陰謀

「――またずいぶん面倒事を押しつけられたようだな」


 そう口を開いたのは男性。場所は窓のない広間。魔法の明かりによって照らされた空間には円卓がしつらえており、黒髪の女性が一人座っている。


「勝手に行動をしたロマスの始末……色々と騒動になっている中で処理をしなければならんとは」

「いえいえ、むしろこれは好機だと考えましたよ」


 と、黒髪の女性はニコリと笑いながら男へ返答する。


「ロマスには好き放題させておき、それに乗じていくらか細工をしました。それにより、この組織の本拠が暴かれた、とログエン王国は考えることでしょう」

「……つまり、組織幹部と思しき人間を捕まえさせ、事件解決させようと考えているのか」

「ええ、勇者オルトについてもログエン王国で主犯者が見つかれば、少なくとも尋問などされて情報を抜かれる可能性は低いでしょう」

「ロマスは体の良い身代わりか……勇者ユークについてはどうする?」

「さすがに彼がここへ辿り着くための材料は少なすぎる。聡明であるとのことなので事件解決でも色々調べるでしょうけれど、手がかりもなく騒動が収まればいずれ矛を収めるかと」

「……もしやオルトのことを知った後、ロマスの一件を利用しようと考えていたのか?」

「まさか、たまたま思いついただけですよ。ログエン王国が思った以上に事を進めるのが早かったため、ならばいっそと考えたまでです」

「そういうことか……とはいえ、騒動収束のために支払った代償はそれなりに痛いな」

「はい。傀儡となっている貴族達を利用しますからね。当面ログエン王国から得られる情報は少なくなるかと」

「活動に支障は出るのか?」

「影響は限定的ですが……本格的に聖戦を開始する段階となって情報不足、という可能性は懸念されます」

「ならば俺はログエン王国に重点を置いて活動しよう」

「ありがとうございます」

「ディリウス王国はどうする? ログエン王国で首謀者が出てきたとしても、ディリウス側としては疑問に思うだろう」


 男の疑問に対し女性は笑みを浮かべたまま応じる。


「そこは手を組んでいた貴族がいた、ということで。ほら、勇者シアラを引き込むために利用した貴族などがいたでしょう?」

「ああ、あれか……結局失敗した上に今回の騒動に加担しているが」

「彼女としてはなぜディリウス王国が、という疑問は解消されるでしょう」

「ある程度納得できる状況というわけか……こちらの目論見通り考えるかはわからないが、一応理屈としては成り立つ……問題は当面の活動をどうしていく?」

「予定通りに。ただ騒動によって活動を始めた勇者もいますから、彼らに注意しつつ、ですね」

「勇者ユークについてはどうする?」


 男の問い掛けに対し女性はしばし間を置いた。


「……彼は今回の騒動にも加わっています。元々勇者シアラの下で活動する、ということはわかっていたので、今回の件は予想していましたが」

「つくづく俺達を邪魔する人間だな……しかし、こいつは最初から勘づいていたということか?」

「最初から、とは?」

「修行を行っていた場所を離れ、一人旅を開始した……つまり、修行途中で俺達の存在に気付いた、と?」

「正直、組織として動いているかどうかはわからなかったと思いますよ」


 女性はそう語りつつ、自身の見解を述べる。


「彼としてはあちこちに存在する魔物を知覚し、それを倒そうと考えた……結果として大当たりを引いてしまった。そういう流れなのでしょう」

「つまり、俺達にとっては運が悪かったと」

「ええ、そういう見解でよろしいかと……ただ、勇者オルトを倒して以降については、ずいぶんと精力的に活動している」

「その狙いは組織壊滅、だな」

「そこは間違いないでしょう。もっとも、今回の騒動を解決したことでどう動くかまではまだ予想できませんが」

「聡明な勇者様だ、まだ裏があるのではと考えるところか?」

「かも、しれません。念のためその辺りの対策は立てるつもりではありますが」

「あまり観察をしていると気付かれる恐れがありそうだな」

「彼のことを監視する場合は、やり方を検討しなければならないかもしれませんね」

「……疑問だが、彼は史上最強の勇者という評価が成されている。今回の事態にいち早く気付いたこともあり、その辺りについても信憑性がある、などという話もチラホラ聞こえる。ここについてはどう考える?」

「以前会議の席で話した通り、評価についてはまだ断定できる材料はありませんね」

「君の考えを聞いている。サーシャ」


 問われた女性――サーシャは一時沈黙し、


「……そうですね、史上最強というのは素質を含めたものなのでしょう。この表現では過去に存在していた勇者を含め全てを超えているという評価になっているでしょうけれど、そう言い切るにはまだ彼の情報が少なすぎる。ただ」


 そこで、サーシャは笑みを浮かべた。


「組織はあらゆることを想定し、動く必要がある……未知の実力者である彼のことは、注意すべきだと考えてはいますよ――」


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