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史上最強勇者、家出する  作者: 陽山純樹
第二章

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情報整理

 重苦しい空気の中、次に発言したのはユーク。


「ログエン王国側でも騒動があった……しかも時期としては一ヶ月前か」

「ユーク、あなたが動き出したくらいかしら?」

「たぶんその辺りだけど、さすがにその時点で漆黒の魔物と遭遇しているわけじゃないし、俺が魔物を倒したからどうとか、そういうわけじゃなさそうだ」

「だとすると、元々何か行動するつもりだったと?」

「かもしれない」


 三人は揃って沈黙する。敵が何をするつもりでいるのか――目的がわからない以上、いくらでも可能性は浮かぶが、


「……とりあえず、現時点でわかっていることをまとめよう」


 ユークは一度仕切り直した言わんばかりに口を開いた。


「組織……大規模な魔物の生成実験をしている以上、複数の人間――しかも相当優秀な人間や勇者が組織だった行動をしているのは間違いない。彼らは密かに魔物を作り、何か目的のために行動を起こそうとしている……そしてログエン王国で騒動があり、俺が漆黒の魔物を発見した」

「ログエン王国の騒動だけを見れば組織が動き出したと考えてもいいけれど……勇者オルトの行動を見る限り、ディリウス王国ではまだまだ準備段階といった様子ね。なんだかチグハグな気もするけど……」


 ユークの発言を受けて、シアラは口元に手を当て何事か考え始める。


「疑問ばかりではあるけれど……もしログエン王国の事件が組織と関わりがあるのなら、この上ない手がかりであるのは事実」

「なら、詳しく調べてみるか?」

「とはいえ、私が率先して動いても国は情報をくれないでしょうね」

「そっか……」

「でも、今はとにかく情報収集が必要なのも事実」


 シアラはユーク達へ視線を向けつつ、話す。


「他国の人間であるユーク達にできることではないから、可能な限り調べてみるわ。それと組織はログエン王国内でも実験をやっている可能性が高い。それについても調べつつ、かつ怪しい人物がいないかとか、そういった調査も進める」

「ずいぶん大変だな……でもまあ、ここは任せるしかないし、頼む」

「ええ、頑張るわ」


 返事を聞くとユークはシアラに対し、


「シアラ、俺達は魔物を倒して回っている状況であるため、狙われる危険性もある……ここには来たけど、町に被害が出る可能性を考慮するなら追い返してもいいぞ」

「準備はしているから心配はないわ」

「……準備?」

「大森林で遭遇した純白の魔物、あれは相当な強さだったでしょう? この町は森に近い以上、いつ何時ああいった魔物が町に来てもおかしくないから」

「なるほど……防衛するために何かしているのか」

「もちろん、二人の活動内容からリスクがあることは認識しているわ。でも、それを踏まえても二人を迎えた方がいいと判断した……何より、この町にとってこれ以上にない戦力だし」

「いざとなったら馬車馬のごとく働かせるってわけか」

「そういうこと……あとわかっていると思うけれど、ここに来てもらった以上は、あなた達のことを多少なりとも利用させてもらうから」

「ま、それは当然だな」

「……あの」


 と、ここでアンジェが手を上げユークへ問い掛けた。


「利用、というのは?」

「簡単に言えば、ディリウス王国の勇者と手を組み騒動解決に尽力し、功績を得たいというわけだ。それがログエン王国内おける地位向上に繋がる……だよな?」

「そうね。ただ一つ言っておきたいのは、功績を得るのはこの町と領地を守るためよ。勇者とはいえ若き領主は、色々と大変なの」

「今もシアラの領地を狙っている人間がいるってことか」

「ええ」


 ――政争、というものだとユークは認識する。


「アンジェ、シャンナさんも警告していただろ? 思惑があるだろうとね……俺はどうするかは考えると返答したけど、とりあえず功績については利用してもらって構わない、というのが見解かな」

「あっさり受け入れるのね」

「一連の事件は思った以上に根が深く、厄介だ。シアラと手を組んだ方がメリットが大きいし、何より君の思惑に乗ったって俺達に影響があるわけでもないし」

「利用されているわけだから、不快な気分になってもおかしくないけれど……地位や名誉にはあまり興味なさそうね」

「それがただひたすら修練を重ね、教育を受けてきたディリウス王国の勇者だ」


 ……シアラは無言となった。勇者制度そのものについては、彼女も思うところがあるようだが、


「あなたが納得しているなら別に良いわ……けど後になってやっぱりやめて、とか言われても聞かないわよ?」

「そこは俺が心変わりしないことを祈っていてくれ……アンジェ、疑問の回答としてはこれでいいか?」

「はい、ありがとうございます」


 礼を述べるアンジェ。そこでユークは話を進めることにした。


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