町の成り立ち
「……状況整理と、俺達のことについて再確認はできた」
ユークはここで話題を変える。
「それじゃあ今後のことを話し合おう。相手の出方を窺うのと情報収集……やるのはいいとして、具体的にどう行動していく?」
「まずログエン王国の騒動については可能な限り調べるわ。ただ時間は掛かるかもしれないけど」
「犯人捜査の進捗を調べてもらうのがよさそうかな」
「わかったわ。そして同時に他に似たような魔物がいないかを調べていくことになるわね」
「……現段階で見つかったのは三体。いや、ログエン王国の事件で出現した人型は紅だとすると、四体になるのか?」
「そうね。他に特徴を兼ね備えた魔物がいないとも限らないし、現在見つかった個体に関して他の場所で実験しているかもしれない」
シアラがそう発言すると、ユークは腕を組みながらさらに言及。
「紅の魔物については特性が不明であるためわからないけど、他の三体は生み出される過程に特徴がある。漆黒が大地の力を利用し、純白が魔物を喰らうことで出現する」
「そして青が大気中の魔力を……しかも魔物を生み出しているとなら、噂の一つや二つあってもおかしくないわね」
「魔物の特徴よりも、魔物が生み出される過程に重点を置いて調べるべきだな。例えば大地の魔力に干渉している場所があるとか、魔物が激減している地域があるとか」
「そうね。直接的な目撃情報よりも、魔物が生み出されたことで発生する出来事がないかを調べる方がよさそう」
シアラはユークの言葉に承諾し、魔物探しの方向性は決まった。
「あとは俺達だな……情報収集に協力してもいいけど……国外の人間だから難しいか? 戦士ギルドとかで調べるのもアリだけど」
「とりあえずいくらか仕事を頼んでいいかしら?」
「仕事?」
「そう深刻なものではないから安心して。この町は大森林から程近い場所であるため、常に森の様子を窺っている。魔物が森を出てくることは滅多にないけれど……純白の魔物のこともあるし、調査に協力して欲しい」
「ああ、なるほどな。構わないよ。アンジェもいいよな?」
「はい」
同意するアンジェ。それでシアラは「ありがとう」と礼を述べ、
「配下の者達には事情を説明しておくわ。情報収集については私がやるから、ユーク達はまず屋敷に滞在してもらい、仕事をこなすと共にこの環境に慣れて欲しい――」
翌日以降、ユークとアンジェは本格的に活動を開始。まずは何より、町の周辺の地理について調べるところから。
「町が攻撃される……という可能性は避けたいところだけど、万が一に備えて調べておく必要がある」
「はい、避難経路の確保や退路を見定めておくことは重要です」
アンジェは同調。戦いに関することなので、彼女の態度も非常にキビキビとしている。デートをした時とは大違いだ。
ユーク達は屋敷を出て町中を歩く――二人とも旅装姿のままであるため、目立つようなことにはなっていない。
「町は大通りを中心に据えている形だな。脇道はそれほど太くない……仮に攻撃を受け町の人を避難させる場合、その経路についてはシアラを始め彼女の配下は把握していると思うけど……」
「正直、ここで戦うという事態は避けたいですね」
アンジェがそう語るのは理由がある。というのも――名をシラムスというこの町は、領主がいるためか規模はそれなりに大きいが、外界からの侵攻を防ぐ手立てというのが非常に少ない。城壁は存在しているが、王都のような堅牢なものではなく、大人の上背を少し超える程度のものなので、防衛という観点から見ればあまり意味を成していない。
「町を囲う城壁は、外と内を隔てる境界線みたいな感じだな……ただの柵よりはマシだけど、防衛には適さない」
「そもそも、どこからか攻撃を受けるという想定をしていないのでしょうか?」
「そうだな……昨日の段階で城壁を見て軽く調べてみたんだが、ここには元々屋敷――というか、別荘地だったらしい」
「別荘地、ですか?」
「ああ。大森林近くの避暑地という扱いだったみたいだな。国境線は森の中だし、そもそもログエン王国とディリウス王国は関係そのものも長い間良好だし、軍事侵攻的なことは考慮していなかったんだろ。で、シアラの何代も前の領主が色々あって政治的に負け、都の屋敷を引き払ってここに移り住んだ」
「結果、人々が集まって町ができてしまったと」
「そういう話らしい。脇道が細いのも、人々が住み始めた際にどうにか区画などを決めた、というのがその要因みたいだな」
「結果として町になったため、道については歪になってしまっていると……そして大森林から出てくる魔物については――」
「シアラも言っていたけど、森から魔物が出てくることは滅多にない。この町にはシアラを主とする騎士団はいるけど、その役目は主に森への警戒や調査員という意味合いが強い」
「だからシアラさんが自ら魔物討伐を?」
「そういう感じみたいだな……最近ディリウス王国周辺で戦争もないし、騎士を増やすという予定もないはず。やはり防衛は厳しい……けど」
ユークはふいに、地面に目を落とした。




