ご褒美お茶会
結局私はいつもの緑茶と簡単なスイーツを頼んだ。レイは私と同じものにもうちょっと軽食を追加した感じ。エイリーンはしっかりとお茶会セットのようなものを頼んでいた。
「ふふっ。いっぱい食べていいからね」
「いただきます」
まずはお茶を一口。疲れた体にじんわりと染み渡る。なんか、さっきまでの練習してた体の調子が一気にリラックスした気がする。
「ねえねえ、ミアちゃん」
「はい?」
私の世界ではマカロンと呼ばれていたお菓子にそっくりなものを食べようとしたらメア先輩が声をかけてきた。
「食べさせてあげよっか」
「ほぇ……?」
「いやぁ、飲み物飲むだけであんなに幸せそうにしてるミアちゃん見たらつい食べさせたくなっちゃってさ~」
まさかずっと見られていたなんて……恥ずかしい。
「だから一口も手を付けてないの?」
「いやぁついうっかり見惚れてて」
「おバカねぇメア……」
「バカってなによ~」
「姉様姉様。はい、あーん」
「んぇ?あーん……」
二人の先輩がバカバカ言い合ってる間に妹が私の肩をトントンと叩いて、そっちを向いた私の口にマカロンを食べさせてくれる。
「んっ……」
ほのかなフルーツと甘さが口の中に広がる。それとレイの指の先が唇に少し当たる。
「ふふっ、姉様っておいしいもの食べると雰囲気がふわふわになりますよね」
「えっ……そう?」
ちょっと頬の赤いレイが微笑みながら教えてくれる。
「ほら、ミアちゃーん?あーん」
「あ、あーん」
今度は先輩が私の口元にマカロンをずずいっと近づけてくる。おいしそうでついぱくっと食べてしまう。
「おいしい……」
さっきとは違う甘さでこれはこれでおいしい。
「ほんとだ、ほわほわしてるねぇ」
「奢った甲斐があるわねぇ……ふふっ」
両先輩とも私の事を優しい目つきで見てくる。
「なんかミア、餌付けされてる鳥みたいね」
「鳥……」
脳内に口を開けてぴよぴよ鳴いている雛が思い浮かんだ。
「ほら、あーん」
「ぁ……あーん」
エイリーンまで私にマカロンを食べさせてきた。
「ついやってみたくなっちゃったけど、なかなかアリね」
おいしいからいいのだけど私ってもしかしてペットみたいに見えてるのかしら。いろいろとかわいがってもらえる愛嬌が私にあるとは思えないけど。
「私のも食べてみますか?姉様」
そう言ってレイは一口サイズのサンドウィッチを見せてくる。と言うか私のマカロンをあげないと交換にならないわね。
「せっかくだし、いただこうかしら」
「ふふっ。じゃあ、あーん」
「あ、あーん」
何度目かの餌付け。ふわっとしたパンにしゃきしゃきの具材とちょっとしょっぱい調味料の風味が口に広がる。さっきまでの甘い口がリセットされてイイ感じだ。
「……んっ。じゃあ、レイにもお返しね。はい、あーんっ」
今度はやられてばっかじゃいられない。私のプレートのマカロンを一つつまんでレイの口に近づける。
「えっ、いいんですか姉様……?あ、あーん……」
ちょっと照れながら小さいお口をあーんと開くレイ。ちょっとだけ背徳感。そのままゆっくりと口元に運んであげるともぐもぐと食べてくれた。さっきのお返しか私の指を最後にペロッと舐めて。
「どう?おいしい?」
「は、はいっ……!とってもおいしかったです!」
「良かったぁ~」
「見せつけてくれちゃって~。私にも食べさせて欲しいなぁ~」
ニマニマ笑ってメア先輩が食べさせて欲しそうにしてくる。お礼に一つくらい食べさせてあげないと。
「わ、分かりました」
「正直な後輩は好きだよぉ~あーんっ」
そう言って目を閉じて口を開けるメア先輩。食べさせてあげようとマカロンを手にしたとき、アル先輩がいたずらっぽく笑って紅茶についてきた角砂糖を二つほどつまんで私に持たせてくれる。そのまま入れなさいと目配せされる。
「あ、あーんっ」
ええいままよっ!先輩にそそのかされたから私は悪くない!と思いながら角砂糖をぽいっと放り込む。
「んお⁉なにこれ⁉甘っ!硬っ!?」
びっくりして立ち上がるメア先輩。それを見て笑いをこらえているアル先輩。
「あはははっ……はしたないわよ、メア。ふふふっ」
「アルもしかして!」
「何にもしてないわよ~?」
「嘘つき~!純粋なミアちゃんをたぶらかしていたずらっ子にするなんて……!」
怒っている風にしているけど顔はそんなに怒ってなさそうでよかった。
「やっぱり先輩たち、面白いですね。姉様」
「え、ええ。ほんとに……」
今までにあんまり見たことないはっちゃけた楽しそうな先輩だけど、これはこれで見られたのが嬉しい。
「もっかい!もっかいミアちゃん!」
「え、ええっ……わかりました」
今度はちゃんとマカロンを食べさせてあげて満足気な先輩を見ることができた。そのあとも先輩がはしゃいだりエイリーンに餌付けされたりと賑やかなお茶会が続いた。




