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へろへろ姉妹

しばらく練習をして、すっかりへとへとになってしまった。あれから数刻、ひたすらアル先輩と剣を打ち合わせて法力の制御を少しでも体に叩きこんでいた。

「そろそろミアちゃんもレイちゃんも疲れちゃったかしら」

完全に肩で息をしている私たちの前で、先輩はまだ余裕そうにこちらを見て微笑んでいる。

「れ、レイ……まだ、いける?」

「姉様が……行けるなら、っ」

私と言えばもう握力も怪しくなってきていてぽろっと木刀を落としてしまう。

「あっ」

「ふふっ」

慌てて取ろうとした私より先に先輩がサッと取ってしまう。びっくりして先輩の顔を見ると微笑んだまま私の頭に手を伸ばしてわしゃわしゃっと撫でてくれた。きっと汗臭いから先輩に触らせるの申し訳ない……。

「あ、アル先輩……?」

「ほらほらレイちゃんのももらっちゃうわね」

妹もあっけなく回収されて二人まとめて頭を撫でられる。

「二人ともよく頑張ったわね。今日だけでも今までより見違えるくらいに成長したと思うわ」

ほんとに強くて尊敬できる先輩に褒められると思わず顔がほころんでしまう。頑張ったって言葉が心に沁みる。思わず涙が出てしまいそうになる。

「ミアちゃんは特に法力の出し方がうまくなってきたと思う。最初に戦った時より流れが読みづらくなったし、一様に体の周りに纏わせつつ必要な時に一気に解放できてるようになってる」

「レイちゃんは最初に戦った時より魔法を撃つ時のタイミングと威力が良くなってきてるわ。あと熱心なお姉ちゃんに感化されたのか、勝ちへの執念って言うのかしらね?そう言うものが見えた気がする」

「えへへ……姉様に近づけた!」

「二人一度にかかってきてもらったけど、流石姉妹ね。連携は完璧だったわ。私が何本か取られちゃうくらいには強かったわね」

最後の方には二人がかりでアル先輩を倒しに行ったけど何度もかわされては当てに行く、と言う感じで結果的に何本かは取ることができたけど勝率的には3割切ってた気がする。先輩の壁は厚いのをひしひしと感じた。

「今回の大会では十分成績を残せると思うわね」

「姉様の事、しっかりエスコートしますね」

「もう……一緒に戦うわよ!」

妹に守られてばっかりじゃ姉としての威厳が。

「それじゃ、一通り助言も終わったしあっちの様子見に行きましょうか」

そう言った先輩は両手で私達を引っ張って立ち上がらせてくれた。集中してて周りの事あんまり見てなかったけどエイリーンもあっちで頑張ってるのよね。


少し歩いてメア先輩とエイリーンが練習しているところに着くと、ちょうどトスッと木刀が地面に刺さる音がした。

「……参りました」

「んふふ。エイリーンちゃん強いねぇ」

ちょっと悔しそうに、それでも満足気に両手を上げてひらひらと手を振っているエイリーン。正面には手を口元に当てて少しうれしそうにするメア先輩。

どうやら二人の方も決着がついたらしい。

「エイリーンお疲れ様」

「あら、二人の方も終わってたのね……。カッコ悪い所見せちゃったかしら」

そう言えばエイリーンが明確に負けているのを見たのは初めてな気がする。別にカッコ悪いなんてことはないんだけれど。

「カッコ悪くなんてないわ。エイリーンの強さは私がしっかり知ってるから」

「そ、そう?」

とはいえ、彼女と戦って息が一つも上がっていないメア先輩……とんでもなく強いのかしら。いつものらりくらりとした態度で私達をかわいがってくれるし、雰囲気も柔らかくてあんまり強さを感じるタイプではなかったけど。

「安心していいよん、エイリーンちゃん。私みたいな戦い方してくる相手はそうそういないから。いつかの予習ってことで、自信失くさないでねん」

「もちろん。いつか先輩にも勝ちますから」

「その意気その意気~いい子だねぇ~」

そう言って彼女の頭をぽんぽんと撫でる先輩。普段頭を撫でられることがめったにないであろうエイリーンはびっくりしたように目を開けた後細めて気持ちよさそうにしている。

「今日の練習はこれくらいにして、帰る前に一息つく?」

「さんせ~い」

「じゃあ、カフェの席取ってきて頂戴、メア」

「うげ、私が~?」

「文句言わないで行ってくる。妾はこの三人連れて行くから」

「しょうがないなぁ」

そう言ってふらふら~っと競技場を出て言ったメア先輩。

「それじゃゆっくり妾達も行きましょ」

「は、はいっ」

メア先輩に対する態度と全然違う、やわらかな態度に変わるアル先輩。優しい先輩も好きだし、友達に対する遠慮のなさも素敵に見える。私はと言えば二人に両手をつながれながら彼女の後をついていく。ある意味両手に花、と言うやつかしら。



少し歩いてカフェに着いたところ、既にテラスの席を取っていたメア先輩が椅子に座ってこちらに手を振っている。

「もう頼んでるの?」

「思ったより空いてたからねぇ」

彼女の前にはハーブティーのセットのようなものが置いてある。

「皆も早く頼んじゃいな~?このお姉さんが払ってくれるらしいし!」

そう言ってアル先輩の方を笑いながら指さすメア先輩。

「……メアの分以外は奢ってあげるわ」

「ケチ!何でさぁ!」

「ほら、三人とも。好きなもの頼んでいいから、ね」

そう言ってぶーぶー文句を言っているメア先輩を引っぺがしつつメニューを渡してくれる。せっかくだしお菓子も頼んじゃおうかな?

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