妹を見て学ぶ
「すご……っ」
私と明らかにレベルが違う気がする。レイとアル先輩の闘い。レイも法力で身体能力を強化して先輩へ向かっている。確かに彼女の法力の使い方は相手に悟られにくいように体の各部分で満遍なく均質になっている気がする。
「やっぱりセンスが違うのかしらねぇ……」
先輩も妹も微笑みを崩さないで早い剣戟を続けている。もう数分は続いているのに勢いが止まらない。と言うか疲れないの……二人とも。
「まだ速度は上がるかしら、っ!」
「もちろんっ……!」
二人の剣戟の速度が上がっていくと、少し離れている私にも感じられるくらい風が当たる。と言うか木刀使ってるはずなのに音が金属みたいに高い音になってるし。
「ふっ……!」
ひと際大きい音が鳴ったと思ったら一度距離を取る二人。数メートル離れているが、いつでも打ち合いを再開できそう。とはいえ、レイは少し肩で呼吸をしている。先輩はまだ余裕そうだ。
「ほら、まだいけるでしょ?もっと全力見たいわ」
「はいっ……!」
返事をしたレイは手を先輩の方にかざして氷柱のようなものをいくつか飛ばす。
「速いわねっ」
そう言いながらも一つ避け、一つ砕き、一つは至近距離の魔法で相殺している。剣だけじゃなくて魔法も強すぎる、この先輩……。息を吐くように魔法が使えてしまうのね。
「まだまだっ!」
氷柱を放った直後に近づいて下から斬り上げる。どうやら先輩の木刀を持つ手を狙っているみたいだ。
「ふふっ」
ばしっと言う音と共に先輩の木刀が天高く跳ねる。しかし、先輩はまったく怪我どころか妹の攻撃を受けていない。代わりに後ろにのけ反りながら放たれた蹴りが妹の顎を狙う。
「くっ……」
間一髪で避けるが姿勢が崩れてしまったレイ。そこを見逃さず懐に入る先輩が木刀を叩き落とす。
「これでおあいこっ!」
このままレイが負ける、と思ったところで彼女の粘りが見えた。先輩の蹴りやパンチを避けつつ反撃を少しずつ挟んでいく。
「嘘っ……二人とも素手でも強いの?」
私はほとんど徒手空拳はできないので剣や魔銃が生命線だけど、二人ともまだまだ引き出しがあってすごいわね。そんなことを思っている間に二人の戦いに決着がつきかけていた。
「きゃっ……!」
タイミングをずらされた蹴りで吹き飛ばされてしまうレイ。
「あっ」
「はい、ここまで」
先輩がレイに手を差し伸べて立たせてあげながらそう言う。
「ごめんなさいね。ちょっと手加減できなかったかも……痛くない?」
「あ、大丈夫です。ありがとうございます、先輩」
少し経ったところで椅子に二人並んで座らされる。先輩特性の飲み物を頂いて、飲みながらフィードバックを受けるみたい。
「ん……おいしい」
「体に沁みますね、姉様……」
「でしょう?妾特性の飲み物だからね」
ほんのり甘くてスッと飲める。スポーツドリンクに近い感じがする。
「さて、いったん二人とも戦ってみたけど……レイちゃんは文句ないくらい強いわ」
「あ、ありがとうございます」
「近接戦闘のための身体強化も適切な量の法力でできてたし、私に撃ってきた魔法も狙いはいいし威力もいいし速さも良かったわ」
少し照れくさそうにするレイ。
「そのあとの接近戦も私に何とか追いついてたし……後は体力がいっぱいあればもっとよりよくなるかしらね」
「やっぱり体力が足りないですか……」
「もちろん大会に出るには十分すぎるわよ?もっと将来的な話、ね」
レイくらい動けても体力が足りない相手がいるなんて……私はもっと鍛えなきゃな。
「ミアちゃんは何か気になるところはあった?」
「いやぁ……特になかったかもです」
正直目で追うのがやっとで違和感を感じる時間もなかった。あと自分の姉としてのふがいなさも少し感じてしまって。
「んー。そうね……少しミアちゃんの真似するのもアリかもね」
「姉様の?」
私の?
「そうそう。少し綺麗に戦おうとするところも見えたからミアちみたいに勝つための執念を持つのはいいと思うの」
「勝つための執念……」
「ええ。斬り合ってるときにも積極的に蹴りとか挟んでみたり、レイちゃんなら魔法を入れてみたり」
「な、なるほど……」
勝つための執念、がむしゃらにやってたらそんな風に見えていたのか。
「二人とも妾に追いつく可能性は十分あると思うから、どんどん頑張ってみましょ?」
「は、はいっ!」
「それじゃミアちゃんから、もう一回やるわよ!時間まだあるしね!」
「お、お願いしますっ!」
少し疲れてそうなレイを休ませて、先輩とさらに練習を重ねることにする。
先輩に新しい木刀を貰ってから、彼女の正面に立つ。
「さ、おいで」
「行きますっ!」




