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先輩と一対一

法力で強化した肉体で距離を一気に詰めて斬りつけに行く。同級生レベルなら先手を取れるけどアル先輩相手はどうかしら。

「ふっ……!」

上からの斬りつけに先輩は余裕の笑みで受け止める。ぐぐっと体重をかけているのに、先輩は片手で受けきっている。

「くっ……」

そのまま私の勢いが落ちたところでグイっと力を入れられて弾かれる。先輩力強い……!法力で強化してるのに普通に押し負けてしまった。

「ほらほら、まだまだいけるでしょ?」

「はいっ……!」

今度は下から仕掛けに行く。ギリギリまで剣を体で隠してからの一閃。

「いいじゃない……っ!」

しかし彼女は当然のように対応してくる。だが、その反発を利用して一回転。逆からまた斬りつける。今度は少しでも早く次の斬りつけをしにいくのだ。

「たあっ!とおりゃっ!」

一撃はさっきより軽いが少しでも隙を作れれば……。

「筋はいいわね……でもっ!」

その言葉を言い終わると同時にお腹に衝撃が走る。思いっきり蹴られたらしい。

「こればっかり見てちゃダメよ。ほら、もう一回」

「くっ……」

やっぱり強い。距離も離されてしまった。改めて構えなおしてもう一度。この先輩に一撃入れるには速さと重さが両方必要……今の私にさっきの両方を組み合わせた攻撃はできるかわからない。

「でも……妹がせっかく見てくれてるんだから、頑張らないとよね……」

「ん?」

独り言をつぶやいて気合いを入れる。

「行きますっ!」

その言葉を合図に体の隅々にさっきより濃く法力を流して地面を蹴る。すごい加速で近づいていく。

「あら……」

少し目を見開いた先輩のがら空きの左側から斬りつける。もらった……!

「あぶなっ!」

ギリギリで受けられてしまう。だが、ここでは止まらないで次、次の一撃を入れるために法力を使って無理に体を動かして逆から斬りつける。さっきよりも重く早く打てている。

「くっ……!」

しかし、ここまでやっても届かない。

「だったら……!」

さっき先輩にやられたことをそのままやり返す。斬りつけた側と逆に蹴りを混ぜてみた。法力がすんなりと入っていったので先輩の足に当たった瞬間いい音がした。

「痛っ……!」

少しよろけた先輩に追撃を当てに行く。しかし、振り下ろした剣は甲高い金属のような音をあげたかと思えば次の瞬間みしみしっと二つに折れてしまった。

「嘘っ……⁉」

驚いてのけぞった瞬間、先輩の腕がぎゅっと伸びてきて私を抱きしめる。

「おーわりっ」

「ふえっ⁉」

いきなり頭をぎゅっと抱きしめられて驚いてしまった。その影響で法力が体から抜けて思わずそのまま先輩に体をゆだねてしまう。

「お疲れ様、ミアちゃん」

「お、お疲れ様です……」

「まさかこの武器を折っちゃうとは思わなかったわ。ふふっ」

無残にもちぎれたように折れてしまった木刀を指さして微笑むアル先輩。備品だったら怒られちゃうかもしれない……。

「すみません……折れちゃうと思わなくて」

「大丈夫よ。それだけ本気になったって事なんだから」

頭を撫でられながら腕を緩めてくれる。



「さて、ミアちゃん。十分強いのは私もわかったところで、改善点を伝えようかな」

「は、はい!」

少し休憩し終わったところで先輩が講評をしてくれる。

「って言っても、練習中にしっかりとよりよい改善につながってたからいいっちゃいいのだけれどね」

「と言うと……」

「特に、最後の一撃ね。法力の質も量も申し分なかったわ。最初の威力重視、次の速度重視でダメだったから最後のどっちも取る方に賭けたのよね」

「は、はい」

「ミアちゃんの通じないとわかったら新しい方法に変えて戦ってみるって言うのはとてもいいと思う。実際私にも十分届く打撃だったし」

「ありがとうございます」

「ただ、一つだけ……こういう方向でも強くなるって言うのがあるのね?」

「別の方向……」

「ミアちゃんは一度通じないものはすぐに変えて臨機応変に戦ってたと思うけど、世の中には通じなくてもひたすらそれを磨き続けてさらなる高みへ到達する者もいるの」

雨垂れ石を穿つみたいな感じだろうか……?

「三人とも満遍なく戦える感じだからあんまり身近にいないわよね。私もどちらかと言えば満遍なくだし」

「な、なるほど」

「まぁあくまでそう言う方向に成長もできる、って言うだけだから。一つ考えてみるのもいいかも」

「あ、ありがとうございます!」

新しい可能性も見えた気がする。レイとエイリーンに少しでも近づけた気がする。

「レイちゃんはどこか気になったことはあった?」

急に話を振られたレイはびくんと体を跳ねさせる。

「えっと……姉様の法力が大きすぎるせいかもしれませんけど、力を入れたところに法力が集中しているのが分かりやすい気がします」

全然気づかなかった。そんなにわかりやすいのかしら。

「あー。確かに分かりやすいかも。最後のは気づくころには足が当たってたから気にならなかったけど」

「き、気を付けますね」

「それで萎縮しちゃうのもよくないから……そうね、一旦狙いに行きながら失敗が続くようなら意識してみましょ?」

「は、はい!」

「それじゃ次はレイちゃんね。ミアちゃん今度はしっかり見ておいてね」

「よろしくお願いします」

一旦休憩を兼ねて座りながらレイの様子を見ることにする。


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