待ちかねた発表
「おはよ、ミア」
「早いわね。エイリーン」
少し早く講堂についてしまったので何をしようかと思っていたらエイリーンが声をかけてくれた。
「ええ。たまたまね」
「私もたまたま。結果発表の日だから気が急いちゃったのかしらね」
「そんなに楽しみだったの?ちょっと意外だわ」
最近少しみんなで一緒に活躍したい気持ちが芽生え始めた。私達ここにあり!って示したい感じというか。言葉にするのが難しいけど、人と競って友達と喜びたいと言えばいいのだろうか。
「思ったより私競うの好きなのかもしれないわ」
「ふふっ。いい傾向ね。優しいミアも素敵だけど一緒に競い合えるミアはもっと素敵よ」
そう言って嬉しそうにするエイリーン。そして私の隣にスッと座るレイ。
「姉様?お二人で何を話してたんですか?」
ちょっと姿が見えないと思っていたらいつの間にか戻ってきてるし。じーっと私を見ながら尋ねてくるのちょっとこわい。
「他愛もないことよ?結果発表楽しみだなぁって」
「私も楽しみです!姉様の応援ができる……!」
ぱぁっと顔が明るくなってあれこれと妄想を広げている。こういうところも含めてかわいいんだから。エイリーンも微笑ましそうに見てるし。きっとわかってくれているはず。
「三人とも早いですわね」
二人と少し話していたらロベリアも講堂に来た。まばらにほかの学生も座り始めている。
「ロベリアおはよっ。って……疲れてる?」
近くに座るロベリアの横顔がなんとなく疲れているように見える。クマとかがあるわけじゃないんだけど、なんとなく気になる。
「あら……気づかれちゃいましたわね。昨日少し面倒なことが……はぁ」
「そうなの?面倒ごとねぇ……」
お嬢様はお嬢様で悩み事が多い、ってことなのかしら。少しは休める時があるといいけれど。
「ええ。昨日一日使いましたから……これでしばらくは会わなくていいんですけれどね。あぁ、考えただけで疲れますわね」
やれやれとした感じを出す彼女。あまり無理はしないで欲しいけれど。
「みんな早いね~」
「お、おはようございます……」
エトラとノアも少し遅れて到着する。これでいつものメンバーがそろった。みんな選考会ではいい成績をそれぞれ出していたし新人戦とか出場できるかも。周りを見ると私たちの周りを少し開けて結構席が埋まっている。なんか私たち避けられてるみたい。
「なんか……避けられてますわね」
「何かした?エイリーン」
「私?ロベリアじゃなくて?」
「何で私なんですの?貴女の方が何かやらかしそうですわ」
「ちょっと!私そんなことしないわよ!」
「二人とも……」
落ち着けようとエイリーンの服をつまみかけたところで教壇にストリーツァ様が立っていた。
「皆さん」
すっと通る綺麗な声。一瞬でざわついていた講堂が静かになる。
「選考会、お疲れさまでした」
軽く一礼。所作の一つ一つが美しい。流石校長。
「皆さん、それぞれが全力を尽くして競い合ってくれたものと思います」
「今回、選手に選ばれた人はこの学院の名を背負って立つようになります。他の学院の方にはもちろん、選考会の時の自らにも負けないでください。貴方たちが今よりさらに成長してくれることを望みます」
「では、レーヴェ先生。お願いします」
そう言って彼女はそのままレーヴェ先生を手で示して壇上から降りる。
「かしこまりました。では、発表します」
先生が手で前面の黒板を示す。するとそこに大きい通神書が展開され、各競技に参加する人間の名前が表示される。上から選抜された生徒の名前が続く。
『マキシノア-ヴァーミリオン・ロベリア
マギアンド-ラスティナ・レイリーン
スペルビア-ノア・セレンディア
マギガント-ラスティナ・ミアリーン
コロウサー-ヴィスカリア・エイリーン
新人戦:
マキシノア-ノア・セレンディア
クルセオ-ヴァーミリオン・ロベリア、ヴィスカリア・エイリーン
フラガエスト-ラスティナ・レイリーン、ラスティナ・ミアリーン、ヴィスカリア・エイリーン』
なんと思ったより私たちの名前が表示されていた。
「あら、みんな代表に選ばれてるじゃない。新人戦だけじゃなくて……」
「わ、私が……?」
「二競技、出られそうですわね」
「ね、姉様!一緒に戦えるんですね!」
皆思い思いに感想をつぶやいている。一名だけ私の腕をホールドして喜んでいるけれど。
「皆さん……すご。やっぱり私はダメだったぁ……」
「え、エトラ……」
ちょっとしょんぼりしているエトラ。彼女、フラガエストしか出ていなかったしチームメンバーと仲たがいをしているからそもそも選抜をされないという話はある。
「な、なーんちゃって……えへ。今年は一つしか出てないですし、来年こそ……」
しょんぼりしていたように見えたのに急に微笑んでそう言う。エトラも最近ちょっとおどけることが増えた。打ち解けてきた、と言うことでいいんだろう。
「私、皆の応援……頑張ります!」
皆の応援、と言いつつ視線はレイに向いているのはご愛敬、だろうか。周りの席でもまた騒がしいざわざわ感が戻ってきた。
「早速本番に向けて仕上げないとですね、姉様」
「そうね……せっかく選ばれたんだし」
「その意気ですよ、皆さん」
後ろからさっき聞いた透き通る声。
「ストリーツァ様⁉」
「ふふっ。久しぶり」
私とレイの頭をぽんぽんと撫でながら優しい声色で続けてくれる。
「入学早々、頑張っているみたいですね。クラナーンも誇りに思っていると思いますよ。もちろん私も」
「あ、ありがとうございます……」
「当日は妹と一緒に見に行きますから。頑張って」
そう言い残してストリーツァ様は講堂を出て行った。一瞬だったけど雰囲気に心を奪われてしまった。あんなかっこいい大人になりたいものだ。
「ストリーツァ様……素敵ですね」
「ほんと、そうね……」
妹としばらくぽやーっと撫でられた後の感触を思い出しながら上の空な会話を続けていた。




