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二人でゆったりタイム

「エイリーンさんの心遣いかもしれませ……ないね。せっかくの旅行を嫌な思い出として残さないための」

一瞬口調が戻ったかと思ったけどすぐに軌道修正して話している。流石の彼女もやっぱりまだ慣れないみたい。

「かもねぇ……優しいわよね。彼女」

「ほんとに……ここまで心を砕いていただけるとは思わなかった。上に立つ者の器、ってやつなのでしょうかね」

「かもねぇ」

海の向こうを見つめてはふぅと一息吐くネイ。その横顔をじーっと見つめていると美しさを感じるとともに少し嫉妬心が芽生えてきた。私の心が狭いだけなのだけど二人しかいないときに違う人のことを想って心が奪われてるのは少しジェラシーかも。そっと彼女の手に手を重ねてみる。

「ミ、ミア?」

「お姉ちゃん……」

「ど、どうしたの?」

「……気づいてないの?」

私の問いに対して少し困ったようにきょろきょろする彼女。初めて鈍感な彼氏に大して不機嫌になる女子の気持ちがわかった気がする。

「いま、私とお姉ちゃんしかいないんだよ?」

「……あ!もちろんミアのことが一番よ?」

そう言うことじゃない……けど私が一番って言ってるしいいか。

「ん。それならいいの」



こっそり店の中を窺おうとする三人組がある。もちろん不審者ではない。

「ミアとネイ、ちゃんと話せてるかしら……」

「きっと大丈夫ですよ」

こそこそっと二人の事をつけてきたけど近すぎるとバレるから少し離れたところから見ていたので声までは聞こえなかった。気になる……。

「珍しいですわね。貴女がそこまで気にするなんて」

「だって海に誘ったの私だし。少しはいい思い出を作って欲しいじゃない」

「…………ね」

「え?何て?」

「聞こえてないならいいですわよ」

ロベリアが最後に小声でつぶやいた言葉は流石に聞こえなかった。二人の様子が気になるけど邪魔もしたくないもどかしい気持ち。

「少しだけなら見てもばれないんじゃ……」

「いいから。そんなことしてないで二人が安全に過ごせるようにしますわよ」

「はーい」

「くっ……そうね」

彼女の一言でそそくさと店の近くの建物に隠れて二人に邪な視線を向けるものや怪しい人間がいないかを見張る。



「たまにはこうやってネイお姉ちゃんと二人で話すのもいいわね」

「私の精神さえ保てれば……」

「……嫌だった?」

「いえ、そのようなことは!ただ……普段従者としてお仕えしているとミア……を呼び捨てするのも緊張して」

「その緩急がいいんじゃない?」

段々と普段の口調が混じり始めている。このくらいが限界かしらね。

「ミアがそう言うなら……姉として頑張るわ」

「ありがと、お姉ちゃん!」

飲み終わったドリンクをテーブルに置いてネイにぎゅっと抱きつく。勢いをつけすぎないように彼女にまたがってから抱きしめてみた。腰ほっそ……。

「み、みみみミア⁉」

「少ししかない姉妹の時間なんだからふれあいって大事でしょ?」

彼女の胸に顎をもふっと載せてじーっと顔を見つめる。びっくりしたようにこちらを見つめ返してくるネイ。段々顔が赤くなっててかわいい。

「最近みんなと過ごすようになってからネイとこうやって熱を感じるふれあいってしてなかったし、たまにはね?」

「ミ、ミア様……!」

遂に口調は戻っちゃったけど彼女も私のことをぎゅっと抱きしめてくれる。少し苦しいくらいに。このリクライニングソファーくらい傾いてる椅子のおかげで足も絡めることが出来ちゃう。この時間をもうちょっと楽しみたいから絶対に離さない。

「ずっと私の従者……ううん。家族でいてね?ネイ」

「も、もちろんですミア様!」

あぁ……彼女の匂いを鼻で感じて温かさを皮膚で感じて彼女の抱きしめを体で感じる今この時間が幸せってやつなんだろうなぁ。

「……目を細めて、かわいいですミア様」

「んぇ?」

急に褒められて変な声が出てしまった。確かに今全身でネイを感じていたから視界を0にしていた気がするけど。

「ミア様の重みを感じるとちゃんとここに居るんだなって感じられますね」

「私、重い?」

「もうっ!そうじゃないですよ」

「ごめんごめん」

ネイがいいこと言ったのにふざけてたら鼻先をツンっとされた。

「えへへ……」

何でか嬉しくなって笑みがこぼれてしまう。背中をさすってくれるしここが天国か……。

「もう少しこのままでもいい?」

「もちろんです。私ももう少しこのままがいいです」

さっきまでそよ風が吹いていて涼しかったけど今はほんのり汗ばむくらいの暖かさ。この温かさが心地いい。

カランと氷の溶ける音がした。



「だいぶ満足したかも」

少し目を閉じて堪能してたら少し時間が経っていたみたい。日がさっきより高くなっている気がする。もうお昼まわったみたい。

「私も、だいぶ楽しめました」

「んしょ……」

彼女に馬乗りになるようになってからソファーから降りる。あ、体の表側がそよ風でさっきより涼しい。

「お腹空いてきたわね」

「ではお昼にしましょうか。すいませーん」

あ、ここでご飯も食べられちゃうんだ。便利。彼女が何かを話しかけると店員が裏に戻っていく。

「おすすめされていた食事があったのでせっかくなので」

「楽しみね」


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