主従逆転疑似姉妹
「……ア様。ミア様?起きてください」
体を揺すられながら優しい声が聞こえる。いつもより近い声。
「ネイ……?」
「ミア様。もう朝ですよ?起きましょう」
そう言ってそっと私の背中を支えながら手を握って起こしてくれる。ググっと引っ張られると視界に寝間着姿のネイが入ってくる。
「おはよ……今日は私服なのね。似合ってる……かわいい」
「ミア様……!ありがとうございます」
軽く抱きしめて撫でてくれる。やばいあったかくていい匂いして眠くなってきた。
「あらあら。主従仲良くていいわね」
「エ、エイリーン様⁉」
一瞬つむりかけた眼を何とか開いて声のした方を見るとエイリーンが立っていた。彼女もナイトドレス風のパジャマを着ていてかわいい。
「ちょうど朝食ができたみたいだから呼びに来たの」
「ありがと……」
ネイに手を握ってもらいながらベッドから降りて立ち上がる。
「ネイも一緒に食べて頂戴ね。今日は貴女は従者としてじゃなく、ミアの姉としてゆっくり過ごしてほしいわ」
「あ、姉!?」
「ネイお姉ちゃん……アリね」
私の姉といえば私にあまり興味のない人だったしネイみたいな姉は欲しかった。
「たまには従者としてじゃなく庇護者として、ずっと一緒にいた姉代わりとして一日を過ごすのもいいんじゃない?」
私と二人で冒険しているときも姉というよりは従者として支えてくれていたし……思い切って妹になって甘えるのもアリ?
「私、いつも甘えてるからあんまり変わらない気もするわね」
「普段と違う甘え方してみたら?ふふっ」
「普段と違うか……ぁ」
ネイは固まって何か考えているみたい。
「まぁ、朝ごはんを食べてから考えなさいな。私達今日は別でゆっくりしてるから」
「そうね」
朝ごはんを食べて部屋に戻ってから一息つくと、いつものようにネイが着替えを持ってきてくれる。
「あ……!ダメよ!今日はネイお姉ちゃんなんだから、一人で着替えるわ!」
いつもだったら着せてもらっているところだけれど、今日は一人で着る。別に白ワンピだから着せてもらうほどでもないけど。
「ミア様……」
「今日は様付けも禁止ね。ミア、って呼ぶこと」
「かしこまりました……」
「それもダメ!お姉ちゃんみたいに話すこと!」
困ったように頷いて言葉をひねり出す彼女。
「わ、わかった……ミア」
「よくできました。ネイお姉ちゃん」
ちょっと困った顔のネイすごいかわいいかも。
玄関でエイリーンに見送ってもらって別荘を出る。明日は帰る日だしゆっくり楽しむこと!と改めて言われてしまった。
「とりあえずどこ行こうかしらね。行きたいところってある?お姉ちゃん」
「海でも見に行きましょうか?」
敬語を使われたのでむむっとネイの顔を見つめる。
「海でも、見にいこっか……ミ、ミア」
「うん!お姉ちゃん!」
満足。少し先に海の香りのする方へ歩いていく。
「待って待って、先行くと危ないわ」
そう言って手を握って一緒に歩いてくれる。おそろいのワンピースにアクセサリーで姉妹感あふれていると思う。
「人、多いわねぇ」
「砂浜に降りると足汚れるよ、ミア」
「洗えばいいでしょ~お姉ちゃん!」
手を引いて少し砂浜に降りてみる。前と違って足が熱くない。
「ほらほらお姉ちゃんいい景色だよ」
「はしゃぎすぎると転ぶわよ~」
潮風を感じながら歩くの気持ちいい。風も程よく吹いていてだいぶ過ごしやすいし。
「わわっ……⁉」
「ミア!」
足元の穴に躓いて顔面から砂浜に突っ込みかけたところでネイが腕をぎゅっとつかんで引っ張ってくれた。
「ご、ごめんお姉ちゃん……」
「ケガはない?」
「う、うん……」
私の足とか体に怪我がないかを確認したところでふぅと一息つく。
「危ないから、座ってゆっくりできるとこ行きましょう?海も見えて落ち着ける場所を教えてもらったの」
「う、うん……」
はしゃぎすぎたかも……。反省。足の砂を落としてから海岸沿いを少し歩いていく。あんまり意識してなかったけどロフトがあるお店が結構多い。
「すいません。予約してたネイです」
「いらっしゃいませ。二階にお席をご用意しております」
その中の一つのお店に入ってテキパキと予約を確認して二階へ連れて行ってくれる。結構石造り中心で高級感のある建物だ。
「ごゆっくりどうぞ」
なんと一フロア貸し切りらしい。そよ風が部屋を通り抜けるおかげですごい涼しい。海の眺めも近くから遠くまで見えて満点。
「いいところ見つけたのね……お姉ちゃん」
「エイリーンさんが教えてくれたのよ」
ウェルカムドリンクのさっぱりフルーツジュースをちゅーと吸いながら二人で並んで海を眺める。南国風のソファーのおかげでお尻と背中が蒸れないで過ごしやすい。
「ほっとするわね。あんなことがあった後だけど」




