持ちつ持たれつ
「ほら、冷めないうちに食べちゃいなさいな」
エイリーンを目で追ってしばらくじっと見つめてしまっていた。彼女の言う通りこの料理が冷めてしまうのはもったいない。
「う、うん」
少しぎこちなくリゾットを口に運ぶところを微笑みながら眺めている彼女。心は落ち着かないけどおいしい。
「食べながらでいいから聞いてくれる?」
「ん?うん」
「ありがとう。……貴女が無事に帰ってこれて本当によかったと思ってるわ」
「ん⁉……ん」
すごい優しい声色でいきなりそんなことを言われて咳き込みそうになる。
「こんな目に合わせてしまったのは私の至らないところもあったわ」
「そ、そんなこと……」
「私が招待してるんだから、私がもっと気を配るべきだったのよ。もっと早く探しに行けば痛い思いをさせることもなかったかもしれないし」
「私が勝手に迷子になっただけで……」
そんな思い詰めたようなこと言うのに何でそんなに優しい顔をしてるんだろうエイリーン。
「だからね。これから貴女には一人行動をさせないようにしようと思うの」
そう、私の発言を無視して笑顔で言う。えぇっと……。
「ちなみにこれはロベリア達とも話したことだから。ミアに拒否権はなしよ」
「そんなぁ」
「学院にいるときは私たちの誰かがいるし、部屋に戻ればネイさんとかセイラとかシズクさんがいるでしょう?」
そう考えると私の周りって常に人がいるようになったかも。
「誰かは貴女と一緒に行動するわ。正直、ミアって少し危なっかしいところがあるしちょうどいいでしょ?」
さっきまでの優しい顔から少しにまぁっとイタズラっ子のような顔をのぞかせている。
「ちょ、ちょっと!危なっかしいところだなんてないわよ!」
「だって貴女、困った人が目の前に現われたら助けちゃうでしょ?」
「そりゃあ、助けるわよ」
ちょっとカッコつけたかも。でも小っちゃい子とか女の人だったら駆けよっちゃいそうな気がする。
「でしょ?でも貴女今回、ちっちゃい子についていって騙されたのよね。きっとこのままだと押し売りとか詐欺とかに会いかねないと思うの」
「うっ……」
思い当たる節はある。またあのシチュエーションに会ったら一瞬疑うけどきっと話しかけてしまう気がする。
「だから誰かが一緒にいれば安全じゃない?」
「それはそう……かも」
でも一人の時間も大事だしなぁ。みんなの事は好きなんだけどたまには一人になるときも欲しいな……。
「もちろん貴女が家にいるときとか安全なときは一人でいても大丈夫よ。外に出るときは誰かに声をかけてほしいけど」
「それなら……」
私のためにみんなの時間を使わせるのがすごい申し訳ない……。彼女たちに返せるものなんて持ってないのに。
「……嫌?」
その逡巡を見られていたようで、少ししてそのように問われる。
「そんなことはないわ。ないけど……」
こんなことを言ったら友達に対しても重い女と思われるだろうか。自分で思い直しても重さを感じるのに。
「……ふふっ。みんなあなたの事が心配なだけよ。ついでに一緒に行動してもいいくらいしっかり友達、って思ってるのよ?」
そう言って私のほっぺたに手を伸ばしてくる。
「本当にいいの……?」
「ええ。もちろん」
私のほっぺを軽くなぞって笑顔で答えてくれる。ついでに指についたお米をぱくっと食べる。
「じゃあ、お願いするわね。エイリーン」
「任せなさいっ!」
たくさん寝たのも手伝って彼女といろいろなことを話していたらメイドさんに二人とも寝るようにすすめられたので、改めて部屋に戻ることにした。
「じゃあ、おやすみ。エイリーン」
「ええ。おやすみ」
私の部屋の扉を開けるとまだ部屋は暗かった。
「まだ寝てるのかしら……」
たまにはゆっくり寝させてあげないといけない。
「んぁっ……⁉ミア様……!」
ばっと勢いよく起き上がったネイと目が合った。まずい、起こしてしまった。
「お、おはよ。ネイ」
「申し訳ございませんミア様……!」
私の両手を握って謝るネイ。そんなに謝らないで欲しい。
「謝らないで、ネイ。貴女が見守ってくれたからゆっくり眠れたのよ。それにここは安全な場所だし」
「しかし……」
「ネイが寝不足で倒れたら困るの!だから謝らないで」
ちょっと口調強く言ってしまった。怒らせてないだろうか……。
「わ、分かりましたミア様」
「よかった……。じゃあ、一緒に寝ましょ?もう遅いし」
「よ、良いのですか?」
驚いたように聞いてくるネイ。さっき寝たばっかりじゃあんまり眠くもないだったかも。
「ええ。あんまり眠くないかもだけど……一緒にいろいろ話しながら横になれば眠くなるかなって」
「かしこまりました……!ご一緒させていただきます」
もぞもぞとベッドに入って、少し布団をめくって彼女を手招く。彼女もメイド服を脱いで寝間着に着替えて入ってきてくれる。
「……お邪魔します」
「ネイ、あったかいね」
この夜はあっという間に過ぎていった。




