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こっそり徘徊

「ん……?」

目を覚ますとすっかり部屋は暗くなっていた。ネイは椅子に座りながらすぅすぅと寝息を立てている。

「どのくらい寝てたのかしら……」

しっかり眠ったおかげで眠気は残っていない。ネイはきっと私が寝た後もずっとここで見守ってくれたんだろうなぁ。

「ありがとう、ネイ……」

私はこんなに尽くしてくれる人に何を返せるのか……ふと怖くなってしまう。無用な心配だとはわかっているけど一人静かになると頭をよぎる。昔は人と付き合うなんてめんどくさいと思っていたけど、今となってはこんなに大好きな人が出来て……。それが失われるのが怖くなってしまった。

「……変わるものね。妹……深耶にあったら驚かれるかもしれないなぁ」

前の世界の妹、一瞬名前が出てこなくて焦った。もうこの世界に来てから長いしだんだん昔の記憶がかすれて行っている気がする。いつかは帰りたいし忘れたくない。

「はぁ……喉乾いた」

くだらない悩み事を頭から追い出して、彼女を起こさないように水でも飲みに行こう。

「風邪ひかないでね、ネイ」

そっとベッドから降りて、近くのブランケットをネイにそっと掛けてあげる。起こさないようにそっと。

「起こさないように……起こさないように……」

たまに脇腹が痛むけど抜き足差し足で扉に近づいて、そーっと開け閉めする。

「ふぅ……」

廊下に出ると少しの明かりがカーペットを照らしてくれていた。おかげで転んだりはしなさそう。

「みんな眠っちゃったかしら」

今の時間が分からないからとりあえずうるさくしないようにしないと。

「えぇっと……台所は」

きょろきょろとそれっぽい場所はないかとうろうろしてみる。そんなに広くないしすぐ見つかると思ったのに案外見つからない。

「一階かしら……」

階段をおりると何やら物音がする。お皿同士が当たる音がするしもしかして台所かも?そんなことを思いながらひょこっと部屋を覗いてみる。

「お嬢様?」

「ひゃいっ⁉」

こっそり覗こうとしたら急に後ろから声をかけられて変な声が出てしまった。

「ど、どうかされましたか……?」

後ろを振り向くと、エイリーンのメイドが困惑した様子で私を見ていた。お盆にちょうど飲み物を持っている。

「の、喉が渇いて……何か飲むものを欲しいのだけれど」

「もちろんございます!何がよろしいでしょうか?」

そう言うとメイドさんは台所の扉を開けて入ってくるように促してくれる。めちゃくちゃいい匂いがする。そのせいでぐきゅるるるとお腹が派手に鳴く。

「あっ……」

「うっ……えっと……お水で」

「か、かしこまりました!」

恥ずかしすぎる。奥の方のメイドさんとか肩震えてるし。仮にもお嬢様なのに……。

「こちらお水になります」

「あ、ありがとう」

すぐに出てきたお水をグイッと飲み干す。乾いたのどに久しぶりの水分がしみわたる。

「おいしい……!」

「よ、よかったです」

コップを返して一息。さっきお腹が空いてるのを自覚してしまったせいか何か食べたくなってきた。でもここでご飯食べたいって言ったら食いしん坊だしお嬢様感が吹き飛んでしまう。

「あの、ミアリーンお嬢様ですよね……?」

「え、ええ」

コップを片付けてきたメイドさんが恐る恐る私に尋ねてくる。

「お食事の用意をエイリーン様から仰せつかっておりますがお召し上がりになりますか?」

なんと渡りに船の話。エイリーンお嬢様はそこまで考えていてくれたのか……。

「ちょうどおなかが空いていたのでいただきます」

「では、少々お待ちを……!お部屋にお持ちいたしますので」

「あ、私の部屋は今はちょっとダメね。代わりの部屋でいただけないかしら……。」

私のご飯ごときでネイの安眠を妨げたくはない。

「かしこまりました。では隣のお部屋にお持ちいたしますので少々お待ちいただけますか?」

「ありがとう」

「お部屋にご案内いたしますね」

別のメイドさんが手を拭いてそのまま私を隣の部屋に案内してくれる。ちょうど使っていない部屋の様で、ソファーに座らせてくれた後メイドさんは一礼の後、台所へ戻っていった。

「カーテンが開いてる……夜空を落ち着いて見るの久しぶりだなぁ」

明かりはつけてくれたので少し見づらいが明るい星はいくつかここからでも見える。

「お待たせいたしました、お嬢様。お食事をお持ちしました」

しばらく待っているとさっきのメイドさんがご飯を持ってきてくれる。どうやらリゾット風の料理らしい。

「エイリーン様から体にやさしいものを作ってあげて、とのことでしたのでこちらをご用意いたしました」

「とってもおいしそう……!ありがとう」

そう言うとメイドさんは部屋からスッと退出していった。久しぶりの一人ご飯。この匂いを嗅いでいると我慢できなくなってきたのでエイリーンのやさしさと一緒にリゾットを一口。お、おいしい……!いつもと違って一人で食べているから共有する相手がいないのがもったいないくらい。

「あぁ……幸せかも」

「幸せそうで何より、ね」

「ほぁ⁉」

いきなり声が後ろからしたと思ったら、お風呂上りの寝間着姿エイリーンがふふっと笑いながら私の前のソファーに座った。

「え、エイリーン!?」

「驚きすぎよ?ミア」

びっくりしてスプーンを落としてしまうところだった。


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