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救出と安堵

久方ぶり、と言うには少ししか経っていないけど妙に感動を覚えるリビングに戻ってきた。ここで食べたシチューパイもオムレツもおいしかったな……。おいしかっただけに悲しい思い出が苦く広がる。

「逃げられましたわね」

「気配がないわねぇ」

二人とも残念そうにしている。とりあえずは敵がいなくなったから一安心ではある。

「そう言えば……地下にもほかの人はいなかった?」

エラさんが言っていた。地下のゴミがどうたらこうたらと。もし私のように誰かが攫われて血を抜かれていたりしたら……。

「誰か、居るんですの?」

「あの魔族をとりあえず追いかけてたから見てないけど……部屋はまだありそうだったわね」

「誰かいる、ようなことを言っていたわ……。人かは分からないけど」

もしかしたら血を集める別の魔族がいたりするかもしれない。あちらも階級があると聞くし。だとしたら彼女たちを危険に向かわせるかもしれない。

「……とりあえず、表に待たせている子達と合流しましょう」

「そうね。皆で行った方が安心だし」

「ミア様、立てますか?」

「ん……ありがと、ネイ」

ネイに片側を支えてもらいながらえっちらおっちら歩いていく。鼻をくすぐるネイのいい香り、家庭の香り。このままお家に帰って彼女のご飯を食べて眠りたい気分。

「あんまりネイさんに甘えてばっかりだと拗ねられますわよ?」

「え?」

歩きながらそんなことを言ってくるロベリア。ゆっくりと歩いても、表まではさして時間はかからない。段々と玄関の門に近づくにつれてそわそわしている数人が見える。

「……落ち着いてくださいませ、ノア様、レイ様」

「そうはいっても……姉様がこんなところで一人だなんて」

「無事だといいけど……」

「ぶ、無事ですよ!姉様は!きっと……」

何やら騒がしい。しかも聞いたことある声だ。

「二人とも、そんな狼狽えなくても大丈夫よ」

エイリーンが少し先を歩いて何やら二人に話しかけている。

「ほら、ちゃんと連れてきたわよ」

そう言って彼女は手で私の方を指し示す。門の影から不安そうな顔で現れた二人と目が合った。妹の方は両目に涙が一瞬で溜まっていったし、もう一人の友達はぱぁっと顔が明るくなった。

「姉様!よかったあぁぁ!」

一瞬でレイは私に近づいて抱き着いてくる。ネイとのサンドイッチになって何とか倒れることは避けた。

「も、もう……レイったら」

「ご無事で会えてよかったです……!姉様に万一のことがあったらと思うと……!」

「大丈夫よ。みんな早く助けに来てくれたから」

「お腹、怪我してるの?ミア」

後ろからゆっくり来てくれたノアは私のお腹を見ながらそう言う。

「あ、うん。ちょっとだけね」

「早めに別荘に戻って手当てしないといけないわね」

「そうなんだけど……」

エイリーンが少し言いにくそうにしている。

「実はまだ中に人がいるらしいんですの」

「できるなら助け出してあげたい……のよね。人が残っているなら」

「私は軽傷だし……大丈夫よ?」

じんじんと痛むけど死にはしない、気がする。皆に行ってもらって、私はその辺で待っているのでも構わない。売り飛ばされる子は一人でも少ない方がいい。

「でも……放置してたら良くないわ」

「でしたら」

私達の前にサッと出てくるメイド服。い、イオナ?

「私たちが責任を持ってマスターを別荘までお連れ致します」

「イオナ……来てくれたのね」

「遅れまして大変申し訳ございません。マスター」

「貴女が運んでくれるなら……私たちはここを調べられるわね」

エイリーン達は行ってくれそうだ。

「レイは……そうね、ミアと一緒に先に戻っておいた方がいいわね」

「わ、私も残れます!姉様の無事も確認しましたし!」

「でも……いいの?」

「姉様の願いはできるだけ叶えたいので。またあとでお会いしましょうね」

「じゃあ、私も残る」

ノアまでそんなことを言い出した。

「人手は一人でも多い方がいいでしょ?」

「でしたら、同行している同胞を残します。お役立てくださいませ」

「ありがとう」

結局十人近く残ることになった。私はイオナとネイに連れられて先に別荘へ戻って手当てを受けることに。

「ごめんねみんな……役に立たなくて」

「気にしないで。生きてればこんな時もあるわよ」

「今度は、貴女が助けてくださいまし」

「では、参ります」

彼女たちに見送られながら急いで別荘への帰り路に着く。とりあえずの鎮痛のために薬をもらって飲んだ。だいぶ楽かも。

「……みんなに迷惑かけてばっかりねぇ、私」

「何かおっしゃいました?ミア様」

「ううん」

ぼそっとつぶやいて心のうちにしまう。

「少し、休むわね……」

「かしこまりました。ってミア様……⁉」

彼女の太ももにぽふっと頭を載せて眠りにつく。馬車が思ったより静かに走ってくれるのですぐに眠りに落ちそうだ。

「……おやすみなさいませ」


次に目を覚ました時には数人にじーっと顔を見られていた。私を囲むかのようにぐるっと皆がいる。

「みんなして……どうしたの?」

一瞬寝たふりをしようとしたけどすぐにばれそうだしあきらめた。


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