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救出

仰向けになった私の上に仁王立ちして見下ろすミーティちゃん。

「つまみ食い、したら怒られちゃうかなぁ」

まるで普通の少女みたいなことを言っている。つまみ食いの詳細は聞きたくないけど。

「おバカだよねぇ、ミアお姉ちゃん」

昨日までと違う侮りの入った『ミアお姉ちゃん』。私って人を見る目がないのかもしれない。彼女は魔族だけど。

「あんな簡単に引っかかってさ」

私の胸のあたりに座ってくる。彼女が軽いとはいえちょっと苦しい。

「見た目で判断するからこうなるんだよ?」

「……そうかもね」

こんなかわいい小さい子が海で迷子になってたら助けないことなんてできないと思うけど。ふいっと顔を背けて彼女を見ないようにする。

「……やっぱ我慢できないかもっ!」

じっと私を見ていると思ったらいきなり私の右腕を掴む。そしてそのまま手首の下をがぶっと一噛み。

「んっ⁉」

思いっきり何かを吸われる感覚と共に彼女が目を見開いてそのまま私の顔の上に倒れてくる。

「痛ぁ……」

また彼女は意識を飛ばしたらしい。彼女のお腹がちょうど目の前にあっていい匂いはするけど、血の匂いが混じっている。

「……んはぁ!」

数分して彼女が起き上がると、乱暴に私の腕を掴んで力を込めてくる。腕がちぎれるんじゃないかってくらい強い。

「痛っ……!」

「あは、青くなってきた」

彼女の言う通り私の手のひらは真っ青。強い力で握られていて血が止まっているんだから当然だけど。

「や、やめっ……」

にまぁっと笑う彼女に弱弱しく抵抗しようとしたところで、上の階から大きな物音がする。壁が崩れたような、ただ物が落ちただけではなさそうな音。

「な、何っ?」

驚いたのか掴む力がふっと弱まって血が巡りだす。ぱらぱらと天井から石のかけらのようなものが落ちてきて額に当たる。

「お姉ちゃん大丈夫かな……」

いつの間にか姉を心配するミーティちゃんの顔に戻っていた。ほぼ同時に、扉の向こうからドタドタと走ってくるような音がしたと思ったら扉が吹き飛ぶんじゃないかと思う勢いで開く。

「ミーティ……!はぁ……はぁ……」

さっきまでとうって変わって息を切らしながら慌てて部屋に入ってくるエラさん。

「逃げるわよ!」

「ど、どうしたのお姉ちゃん……?」

「あの三人とんでもないやつだったわ……!殺される前に逃げましょ!」

「う、うん」

そう言って私の上から降りるミーティちゃん。

「これは……もったいないけど置いていくしかないわね……せっかく都合のいい家畜を見つけたのにっ……」

本気で悔しそうなエラさん。


「あら、どこ行くのよ」


「げっ……!」

扉から聞こえてきた声。あぁ、久しぶりに聞いた。すごく安心した。

「やっぱりここにいましたわね……」

「ご無事ですか!ミア様!」

「やっぱりこの女の仲間だったのね……くっ」

恨めしそうな目でこちらを見るエラさんと、安心したような顔をするエイリーン達。私も安心したせいか力が抜けてうまく立てない。

「さて、ミアも見つかったことだし……そこの二人には説明をしてもらうか……死んでもらおうかしらね」

エイリーンだけはスッと冷静な顔になって魔族の二人を視界に捉える。

「で、できるものなら……ねっ!」

そう言ってエラさんは壁の方へ走っていく。先にはなにもなさそうな壁。と、思ったら腰くらいの高さの部分に思いっきり飛び蹴りをする。

「ふんっ……!」

「逃がさないわよ!」

エイリーンの斬撃が飛ぶのと時をほぼ同じくしてエラさんたちは壁の中に吸い込まれていく。ばきっと音がしたので、おそらく壁の一部に隠し通路か何かがあったのだろう。

「待ちなさいっ!」

「エイリーン!」

勢いのまま斬撃のせいで土煙が広がっている壁の中に突っ込んで行こうとするエイリーンを制止する声が飛ぶ。

「外にもレイたちがいますわ。あの魔族を追うよりミアを保護して戻りますわよ」

「で、でも……」

「でもじゃありませんわ!見ての通りだいぶミアは弱ってますのよ?放っておいたら後で後悔しますわ」

実はそんなに弱ってるわけじゃないけど腰が抜けたのか全然動けない。

「わ……わかったわよ」

一番最初に私の元に近寄ってくれたのはやはりネイだった。そっと私の体を抱き起してくれる。

「ミア様、大丈夫ですか…… ?お気づきですか?」

「う、うん。ありがとう、ネイ……」

心配した顔がとりあえず一安心したようにほっと緩む。少し遅れてロベリアとエイリーンも来てくれる。

「二人とも、来てくれてありがとう……!嬉しかった」

「ちょ、ちょっと!腕とお腹怪我してるじゃないの!」

あ、さっき噛まれた腕とアイスピックのようなものが刺さりっぱなしのお腹であることに今更思い出した。

「今これを抜くとむしろ出血が増えそうですわね……別荘に戻るまで我慢できますの?ミア」

「あ、うん」

改めて認識をしてしまうと少し痛みが出てくるけどさっきよりはだいぶましだ。

「そうだ……ごめんね。もらった水着、どこかに取られちゃって……」

「大丈夫よ。さっき上で見つけておいたから。ほら」

そう言って取られたはずの水着を見せてくれる。良かった……!結構気に入っていたプレゼントだったから、また会えるなんて……。

「……ほんとに、ありがとう」

「いいのよ!」

「それよりもこんな暗いところにいないで早く上に行きますわよ」


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