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囚われの身

「どうしよう……」

彼女は私を飼うと言っていたしイオナ達が来るまでの間殺されることはないだろうけど、私が地下にいることに気づいてもらえるかしら。

「逃げる……にもこの紐。切れても地上への入口一つしかなさそうだったものね……」

段々お腹に鈍いじんわりとした痛みが感じられる。痛ぁ……。体を動かすだけで痛みが強く感じられる。

「血、止まってるよね……うっ、痛っ……」

今ほど自分の胸が大きくて恨んだことはない。傷口を見て痛みを感じる必要もないから逆にいいのかもしれないけど出血が止まってなかったらと思うと恐ろしい。こんなところで失血死なんて嫌すぎる。

「はぁ、どうしよ……」

ため息をついても何も進まないけどできることもない。さっきから考えないようにするほど嫌なことばかりが頭をめぐっている。



そんなことを考えていたらいつの間にか意識を失っていたみたいで、目を覚ましたころにはお腹の痛みもだいぶ消えていた。

「うそ……あの状況で寝てたの?私」

自分の神経の太さに呆れるというか感謝というか。

「あら、おはよう。目が覚めたのね」

私が声を出したので気づいたのか、手元の本を閉じてこちらをじっと見下ろしてくる。

「エラさん……。いつからそこに……」

「さっきよ。まさかぐっすり寝てるなんて思わなかったけどねぇ」

嘲笑交じりに彼女は言う。

「あと……家畜ごときが私の名前を呼ぶんじゃないわよ!」

バチンという音とともにほっぺに鋭い痛みが走る。

「ぅあ……」

「立場を弁えなさい!このバカ女!」

さらに数発、ひっぱたかれる。

「ふんっ……お前の排泄物の世話なんてしたくないからこれをつけて紐をほどいてあげるわ」

彼女は呼吸を整えた後そう言って私の首に革製の首輪、さらに足にも何かつけられる。

「ほら、体を起こしなさい」

紐を雑に切って私につけられた首輪のリードをグイっと引っ張る。

「うぇっ……」

無理やり起こされる形で体を起こすと足につけられた輪は柱にしっかりと縛り付けられている。どうやら飼う、という発言はそのままの意味だったようだ。

「ほら、お前の水場はそこよ」

彼女の指さす先には洗面台のような所に注がれ続けれる水と、そこからあふれて深めの溝に流れていく、ただそれだけの設備があった。

「体は清潔にすること。私達が触れられるようにね」

「もし入らなかったら……?」

私はその質問をしたことを数秒後に後悔した。

「その時は……こうっ!」

グイッとリードを引っ張られたかと思ったらそのまま髪を掴まれて洗面台いっぱいの水の中に頭を沈められる。

「ごぼぼぼおっ……⁉」

いきなりすぎて驚いて空気がない。苦しい。

「がぼっ……!!ごぼぼっ……!」

頭を上げようにもものすごい力で押さえつけられていてまったく上がらない。死ぬっ……!と思ったその瞬間思いっきり髪を引っ張られる。

「いい?飼ってる動物のしつけは主人の務めよ」

「げほっ……ごほっ……」

死ぬかと思った。しかもめちゃくちゃこの水冷たいし。

「あと排泄をここ以外ですることは許さないわ。きちんとここですること」

「ぇっ……?ごほっごほっげほっ……」

彼女の指さす場所にはちょっと深い水の流れる溝しかない。

「じゃあそう言うことだから、逃げようなんて思うんじゃないわよ」

そう言い残して彼女は部屋を出て行ってしまう。嘘……でしょ?こんなところで過ごせだなんて……。

「へくちっ」

髪どころか服まで濡れてしまって体が冷えたのかくしゃみが出てしまった。風邪ひいたら……本当にどうしようかしら。

部屋を見まわしても他にあるものと言えば鏡、謎の木箱が数個積んであるくらい。この足につながった紐のせいで木箱のところまで届かないし。

「行動範囲が広がったとはいえ……できることはおトイレと水風呂、か……」

体が冷えたからなのかぶるぶるっと身震いがする。そうであってほしいけど。

「いや……でも……うぅ……」

誰も見てないし……覚悟を決めた。



「はぁ……」

あれから数時間経ったころだろうか。人間の尊厳がゴリゴリ削れた気がするけど多少すっきりした。拭くものがなさ過ぎて洗面台から溢れた水で洗った。タオルくらい用意してほしかった。紙の端切れでもいい。スースーしてただただ寒い。

「早く助けに来て欲しいな……ネイのご飯……」

「みすぼらしい姿になったわねぇ」

キィっと音を立てながら扉を開けてエラさんが入ってくる。

「ぅ……」

彼女の名前を呼べばまた叩かれるし、言葉に詰まってしまう。

「返事もできないのね……犬未満」

ため息交じりにそう言われる。蔑みの目が私に突き刺さる。

「ほら、寝なさい」

ベッドに仰向けになるように指を差される。またお腹に刺されるのか。懐からアイスピックのようなものを取り出しているので間違いなさそう。

「ふんっ!」

「おねーちゃーん!お客さん来た~!」

おもいっきり振り下ろしてお腹に刺さるような痛みが発生した瞬間、ミーティちゃんが部屋の入り口に現れる。

「客?」

「なんか女の人三人くらい!」

「ふぅん?」

もしかして……?

「分かったわミーティ。相手してくるからこれ見といてね」

「うんっ!」

そう言ってエラさんが姿を消し、代わりにミーティちゃんがじっと私を監視し始めた。


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