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正体

しっかりと深い眠りに落ちていたみたいで、意識がぼんやりとしている。そうでなかったらこんなに体が動かしづらいわけないし……。ぼんやりと私の周りで動いている誰かがいる。

「……んぁ?」

あれ、うまくしゃべれない。

「あら、もう起きたのね」

「間に合ってよかったねぇ~」

私を覗き込むようにしてくる二人。あぁ、エラさんとミーティちゃんか。

「二人とも、何を……?」

何とか言葉を紡いでみる。

「体動かないし……」

「あ、うん。もちろん。暴れないように紐でベッドに繋いでるもん」

「へ……?」

暴れないように?ベッドに繋いでいる?

「こんなにいやらしい法力の匂いをさせてる人間はそう居ないから、チョロくて助かったわぁ」

「えっ……えっ?」

段々と意識がクリアになってくる。エラさんがさっきとちょっと違う笑みを浮かべている。

「ほんとにバカな女。少し助けてあげただけですっかり私たちの事信頼して……」

手と足を動かしてみてもしっかりとした紐でベッドのフレームに繋がれているみたいでびくともしない。

「もう動けないわよ。しっかり繋いだもの」

そう言ってお腹をスーッと指でなぞってくる。

「エラさん、いったい何を……?」

「まだ気づいてないの?自分がただのご飯だってことに」

「ご、飯……?」

「そ、お前はただの食料よ」

「お姉ちゃん早く~」

ミーティちゃんの声も聞こえるけど、どうやらこっち側ではないみたい。食料……?私ここで殺される?

「美術品みたいに白いわねぇ。じゃあ一口」

そう言ってエラさんはアイスピックみたいなものを私のお腹に突き立てる。

「えっ……⁉」

異物感。痛みが遅れてくる。

「すごい……こんなに濃い法力の匂い」

私の血を指で拭ってうっとりしたように眺めている。ミーティちゃんまで。

「いただきま~す……んっ⁉」

二人して私の血をペロリと舐めた瞬間に驚いた顔をしたと思ったら、意識を失ってその場に倒れてしまった。

「いったい何が……痛っ……」

痛みが残り続けている。まぁアイスピックくらい太いものでおなかを貫かれたのだから当たり前なんだけど。いまだに状況が理解できない。


十分ほどしてハッと起き上がったエラさんが驚いたように私を見つめる。

「まさかここまでの濃さだなんて……!力があふれてくるわね。気を付けないと意識を飛ばされちゃうけど……。ほら、ミーティ起きて」

「……はっ⁉」

「取り扱いには気を付けないとだけど……コレがあれば地下のゴミはいらないわね」

「いい物見つけた?」

「ええ。ミーティの鼻はよく効くわね。よくやったわ」

「えへへ……」

目の前では姉妹の仲良しと私の血液を小さい容器に取っている異様な光景が両立している。

「なんで……?私の血なんか」

「まだ気づいてないの?私たちの正体」

そう言った瞬間彼女の背中に黒い翼が生えてくる。一瞬綺麗と思ってしまった。

「私たちが魔族だってことに気付かないなんてねぇ」

「ま、魔族……」

アル先輩と同じ魔族……。先輩は優しかったのに。

「お前、歩いてるだけでいやらしい法力の匂いをぷんぷん漂わせてるわよ。魔族に食べてくださいと言ってるようなものね」

「えっ……」

「安心して。私たちはお前を殺したりしないから。その代わりに一生私たちのご飯として生かさず殺さず管理してあげる」

「今までだったら適当に海で攫ってきた人間を地下に監禁してたんだけどね……。飼うのもお金かかるし、数は必要だし。でもお前のおかげで地下の奴らを売ることができるわ」

「売る……いったい何人を攫って……」

「さぁ。いちいち数えてないけどそこそこいるんじゃないかしら」

当り前かのようにそう言う。

「お姉ちゃん。小瓶に採れた!」

「ありがと、ミーティ」

「わ、私をどうするつもりなんですか……!」

「言ったでしょ?生かさず殺さずって。私達の法力補給のための家畜として飼ってあげるわ」

「そんな……」

くすくすと笑いながらそんなことを言ってくる。昨日まであんなに優しかったエラさんが……。

「晩ご飯に薬を混ぜたのにも気づかないし、お前って本当に鈍いのねぇ」

「ぐっ……」

彼女は私を見下ろすように立って頭をぐりぐりと踏みつけてくる。何とかイオナを頼ってここから脱出しなきゃ……。エイリーンたちを心配させてるだろうし。


「それじゃせいぜい私たちのご飯として生きるのよ」

「じゃあね~」

そう言って私を放置したままこの部屋を出ていく二人。私の血が入ったいくつかの小瓶を持って行った。


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