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親切な姉妹

今年も『よわねえ』をよろしくお願いいたします。

「あら。化け物って私の事かしら?」

聞いたことのない、けれど透き通ったような少し棘のあるような声が聞こえる。

「くそっ……なんなんだこの女……!」

悪態をついたと思ったら私の髪の毛を引っ張る。

「痛ぁっ……!離して……っ!」

「黙ってろ!おい!お前!こいつがどうなってもいいのか?」

剣の持ち手の部分で頭をガツンと殴られて一瞬意識が飛びかける。しかも刃物を首筋に当てて彼女の事を脅している。髪は引っ張られて痛いし息がしにくい。

「あら、私を脅すの?」

「こいつを助けに来たんだろ?だったら人質にとるに決まってるじゃねえか」

ちょっと待ってくれ。この子と面識ないし、そこはかとなくミーティちゃんの面影を感じるってことはあの子を助けに来たんじゃ……。私、見捨てられる?

「あ、お姉ちゃん!あのお姉ちゃんが助けてくれたの!」

「あら、やっぱりそうなの」

なんとミーティちゃんがひょこっと扉から顔を出す。やはり彼女の妹だったらしい。

「ごちゃごちゃうるせえ!こいつが死んでもいいのか!」

ぐぐっと頭を引っ張られる。や、やばい……苦しい。

「あら、どうやって殺すのかしら」

その声と共にふっと体が楽になる。

「なにっ……!?」

男の驚く声と顔にかかる液体。鉄の匂い。

「きゃっ……!」

「ぐああぁっ!」

ミーティちゃんの姉に抱き寄せるように支えられて助け出される。ほんのりひんやりしていて気持ちいいかも。

「大丈夫?ええと……」

「あ。ミアリーンと申します……」

「ミアリーンさんね。怪我とかしてない?」

「は、はい。助かりました……」

「ならよかった」

そう言って背中をぽんぽんと叩いてくる。

「くそっ……痛ぇ……!」

さっき私を殺そうとした男は片腕を吹き飛ばされてしゃがみこんでいるみたいだ。

「殺さなかっただけ感謝して欲しいわ。私の妹に手を出したんだからほんとは死んで償うべきなんだけど……」

「お姉ちゃん早く帰ろ……!こんなところ居たくない!お姉ちゃんも助けられたし!」

「って言うわけだから帰らせてもらうわね」


「ミアリーンさん。歩ける?」

「は、はいっ」

やっと抱き寄せた姿勢から離してくれた。目の前で見るとめちゃくちゃ綺麗だなこの人。ミーティちゃんと同じ濃い赤色の目に金色のサラサラの髪。身長は私と同じくらいだけどよりお嬢様感が漂ってくる。

「じゃあ一旦私たちの家に行きましょっか。あまり遠い場所じゃないし、もう夜になっちゃったし」

「わ、私もいいんですか?」

「え?当たり前じゃない。こんな夜中の森の中に水着の女の子一人放置するわけないでしょ」

少し呆れたように言われてしまった。世の中親切な人はいるものだ。

「ありがとうございます……!」

「やったぁ~!お姉ちゃんが二人だ~」

ミーティちゃんを真ん中に三人で血まみれの階段を下りて玄関を抜ける。いくつもの死体が転がっているけど見ないように見ないように……。

「暗っ……」

外に出るとあたりは夜の森の中だったようで何も見えない。

「そう言えば自己紹介を忘れていたわね。ミーティの姉、エラよ。よろしく」

「エラさん……よろしくお願いします」

とりあえず握手を交わす。

「あ、そこ足元気を付けてね。手が転がってるから」

「え?」

言われた瞬間ぐにっとした感触が足に伝わってくる。手……?聞かなかったことにしよう。

「二人とも慣れてるんですね」

「少し夜目が効くのよ」

二人が結構迷いなく歩いていくので私は何とかついていくだけで精一杯。

「あわわっ……」

「お姉ちゃん転ばないように気を付けてね~」

うぅ……小さい子に注意されるとは。夜目が効かないので仕方ないんだけど……頼れるお姉ちゃん感が減ってしまった。

「もう少しで着くから辛抱してちょうだいね」

「は、はい」


しばらく歩いて行くと鬱蒼とした森の中にぼんやりと明かりが見える。家だろうか。

「光……こんなところに?」

「こんなところでごめんなさいね」

「あっ、そんなつもりは……」

「ふふっ。冗談よ」

いたずらっぽく微笑むエラさん。そんなかわいい一面もあるのか……。

「さて、これが私たちの家よ」

森の中にポツンとある小さな洋館。二階建てのちょっとしたお屋敷だ。

「素敵ですね……お二人でここに?」

「ええ。そうよ」

二人でポツンと一軒家でスローライフ……。ちょっと憧れる。掃除とか大変そうだけど。キイっと入口の扉を開いて中に入る。

「すごい……」

ちょっとした庭が設置されていて、庭木もある程度整備されている。二人でやっているのかなぁ。

「疲れたしお腹空いたでしょう。とりあえずご飯にする?」

「ご飯~!お姉ちゃんの手作りご飯食べる!」

「お、お願いします……」

くぎゅるるるとお腹の音もなってしまった。

「わかったわ。ミーティが案内してくれるから、私は晩ご飯作っちゃうわね、ふふっ」

自分の顔が赤くなっていくのを感じる。これで何回目の恥だろうか。

「じゃあミーティが連れてってあげるね!」

「ありがと……」


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