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懐かしい場所

「あら……?ここって……」

エイリーンのお屋敷を出てしばらく街を進むと、古い記憶がフラッシュバックする。

「そうよ。私とミアとネイが初めて会った場所よ」

どうやら私たちはカーンに来ていたらしい。

「……懐かしいわね」

初めてこの町でエイリーンと会ったんだっけ。あの頃はネイと手をつないでもらって一緒に歩いてたくらい小さいころだった気がする。

「貴女たちそんな昔にここで出会ってたんですの?」

「そうそう、ネイが変な男に絡まれてるところを私が颯爽と助けたのよね」

「そうでしたねぇ……懐かしいです」

颯爽と……まぁ同い年なのにかなり年上の男数人にあの意気のまま声をかけて追い払えるのはかっこいい。

「じゃあ、この町ってミアたちの思い出の街でもあるんだねぇ」

「今日からはみんなの思い出の街、よ」

こうやってみんなの思い出を増やしていきたいところ。引っ張ってくれるのはエイリーンかロベリアだろうけど。

「あの頃水着が流行り始めていたと思ったらあっという間にこんなおしゃれな水着が出るなんてね」

「早いわよねぇ」

思わずしみじみとしてしまう。

「しみじみしてるところ悪いですけど、もう着きましたわよ」

そう言ってロベリアが窓の外を指さすとそこには青い海が広がっていた。見渡す限りの海と砂浜。私たちと同じような水着の海水浴客が大量にいる。久しぶりなのにあまり久しぶり感がないのはなぜだろうか。

「あら、早かったわね」

「着替える順番はどうするんですの?」

「んー……そうねぇ。出口に近い順でいいんじゃないかしら」

最初は私、ノア、エトラ、レイ、ロベリアと続いて最後にエイリーン。まぁこだわりはないしそれでいい気はする。

「じゃあ早めに着替えを済ませちゃいますね」

そう言ってノアとエトラと一緒に水着を受け取って、着替えの馬車の方へと歩いて行く。ちゃんとメイドさんが入り口を見守ってくれているので安心だ。レイがほんの少し悔しそうにしているのが見えた気がするけど。

「ネイ、手伝ってもらってもいいかしら……」

「もちろんです」

「ありがと」

ということでネイの手伝いを受けつつ手早く着ているものを脱いで裸になる。外からの視線はないはずなのになんだか背徳感を感じてしまう。

「……エトラさん?そんなにミアの体見てどうしたの?」

「ぅぉ……おぇっ!?みみみみ見てないですよ⁉」

急にエトラが変な声を上げてのけぞる。そんな変な声出して……私の体に変なモノでもついていたのかしら。

「さては見惚れてたね~?」

「そそそそんなことは……」

「わかるよその気持ち。こんなに綺麗な体……見惚れちゃうもん」

じぃっとみられると思わず手で胸と下を隠してしまう。流石に恥ずかしい。

「珍しいものでもないでしょ……?ノアの体も綺麗だし」

ちょうど彼女も上を全部脱いでいたがすらっとしていて憧れるくらいだ。

「……ミアそれ本気?」

「えっ?」

「はぁ……」

私の返答に対して呆れるようにため息をするノア。

「これはネイさんが心配になる気持ちもわかるかも」

「おわかりいただけますか……」

「えっ?えっ⁉」

「早く着替えちゃいましょ、エトラ~」

「そ、そうですね……」

結局彼女たちがどこでわかり合って私が少数派になったのかはよくわからなかった。ネイが何かの抗議なのかお尻をぺちんと叩いてきて頭に?が浮かんでくる。私ってそんな危なっかしい子なのかしら。


「あら、早かったわね」

結局20分くらいは着替えていた。彼女たちはもう一両の馬車で待っていたようだから暑いことはなかったみたいだ。

「おまたせ」

「うんうん。4人とも似合ってるわ」

「ありがとう」

「今度は私たちが着替えるからそっちで待っててちょうだい」

「ええ。そうするわ」

そう言ってもう一両の馬車に乗り込む。窓が開いていて海を眺められる。人が多いけどこれが海水浴の醍醐味でもある、かもしれない。

「人多いねぇ」

「はぐれないようにしないといけないわね」

昔々に行ったあっちの世界の最盛期の海よりは空いているので迷うことはなさそうだけど。

「エトラはレイと手でもつないでおく?」

「そんな恐れ多い事……無理ですぅ……」

想像して少しにやぁとしたと思ったら急に顔面が蒼白になってしゅんとしてしまう。

「きっとレイは喜んでくれると思うけど」

「レイさんの手を私なんかが握るのは……」

ふと、エトラの手をぎゅっと握ってみる。私より小さい手、とてもあったかい。

「ミアしゃん!?」

「ほら、私たちはキスした仲だし。手くらい握れるでしょ?」

「ききききききす……」

まぁ試合中に殺される一瞬でされたキスだけど。

「私で慣れていけばいつかレイとも手をつなげるんじゃない?」

スモールステップアップってやつ。エトラみたいな子はこういう風に慣れさせていくべきなのかもしれない。

「エトラの手、あったかいわ」

「えへ……えへへ」

すっかり言葉を忘れてしまったようににやぁっとしている彼女と一緒に海をしばらく眺めることにした。


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