眠気と静かな出発
「天気、晴れてよかったですね」
「そうね。素敵な海水浴日和かも」
少しいつもより早い朝。早起きして窓の外を見るとうっすらと明るくなっていて少し冷たい空気が体を冷やしてくる。
「ミア様~?ご準備整いましたよ~」
「二人で朝から黄昏れてどうしたの~?」
後ろからセイラが私たちにぎゅっと抱きついてくる。彼女のいい匂いと体温を直接感じられる。これも一つの幸せかも。
「なんてことないわよ?今日の天気を見てただけ」
「なるほどねぇ」
段々と日が昇ってくると街が起きてくるのを感じる。結構寮から見る街の景色っていいかもしれない。
「三人とも、そろそろお着換えした方がいいですよ」
ネイにそう言われて彼女たちが迎えに来る時間が近づいているのを思い出す。着替えまで動き出すのが一番ハードルが高い。
「そうね。着替えましょっか」
「私も手伝うね~」
「オーバ、お願い~」
「かしこまりました」
手伝ってもらったおかげであっという間に清楚すっきりワンピーススタイルに変身。海辺に映えそうなお洋服だ。
「ネイ達はメイド服で行くの?」
「もちろん。従者ですから」
「でもみんなで私服って言うのも乙よねぇ」
「そうよねぇ。ネイ達の私服も見てみたいわ」
「……そうですか?あと、いつの間にいらしてたのですかエイリーン様」
「エイリーン!?」
いつの間にか隣にうんうん頷きながら立っているエイリーンとロベリア。
「私の従者も私服にしてますし皆で私服にしませんこと?」
「そこまでおっしゃるのでしたら……」
久しぶりの二人の私服、楽しみかも。少しエイリーンたちと話している間にさっと彼女たちの着替えは終わっていた。
「お待たせいたしました」
ネイはすっきりパンツスタイル。オーバはロングスカートにヒールブーツ。夏らしいさわやかさを持っていてとてもいい。
「……ネイ足綺麗ね」
すらっとしていてとても美しいネイの足を思わず見てしまう。思わず独り言にまで出てしまうくらい。
「……?どうされました?ミア様」
「あ、ううん。何でもないわよ。よく似合っているわ」
「ありがとうございます」
「それじゃあそろそろ行きましょっか」
ネイとオーバが私たちの荷物を持ってきてくれる。今回はお泊まりだし少し荷物が多くて申し訳ないわね。
「あ、そうね」
ということでエイリーンとロベリアの先導を受けながら寮の階段を下りる。この時間帯だとまだ他の人は外には出ていない。
「おはようございます~」
「お、おはようございます……」
一階に降りたところでノアとエトラが現れる。二人とも可愛らしい服を着ていて素敵だ。
「おはよ、二人とも」
「おはよ~」
泊まりの分の荷物をエイリーンの従者に預けて私たちは馬車に乗り込む。相も変わらず内装の豪華さ……。ふかふかのソファーに身を沈める。
「ふぅ~……」
「今日はちょっと遠くまで行くから飲み物食べ物も用意しておいたわ」
「あら、気が利きますわね」
「どこまで行くの?」
「秘密よ。着いてからのお楽しみね」
質問したら指で唇を押さえられてしまう。まぁ、いいか。
「そう言えばミアたちは朝ごはん食べたの?」
「ううん。まだよ」
「じゃあせっかくだし食べましょうよ」
「そうね。頂くわ。ありがと」
そう言って目の前の机に簡単なサンドウィッチが置かれる。促されるまま一つを口に。……おいしい。シンプルなものではあるけど素材がとても新鮮でおいしい。
「これ、すごいおいしいわね」
「でしょう?」
流石、このくらいの軽食にも手を抜かないところは尊敬に値する。いくつかのサンドウィッチを食べたところで軽い眠気が襲ってくる。早起きしたから頭が起き切ってないのかもしれない。
「ミア様、もしかして眠いですか?」
「あ、ばれてた……?」
「ふふっ。ミア様の事は見ておりますから。後は……あちらのように」
彼女の指さした先にはレイの肩に頭を乗せてすやすやと眠っているエトラ。寄りかかられているレイも目を閉じて既に眠っているらしい。
「あら……思ったより寝てる子多いわね」
ノアもセイラも夢の中に旅立っているらしいし、エイリーンとロベリアくらいが起きている状況か。
「ミア様も無理せず」
そう言ってネイは太ももをぽんぽんと叩いている。
「膝枕は少し恥ずかしいかも……寝顔もあんまり見られたくないし」
「快眠をお約束いたしますよ?」
ぐっ……まぁみんなより先に起きればいいだけだ。そう自分を納得させてネイの太ももにゆっくりと頭を乗せる。柔らかく、それでいて必要な反発力のある枕だった。あったかいし。これが幸せの形かもしれない。
「お休みなさいませ。ミア様」
頭を撫でられながら目を閉じるとあっという間に思考が闇に溶けていった。




