日頃のお礼
「送ってくれてありがとう。二人とも」
お高めのディナーを頂いてお腹も心も満腹になった夜。結局寮まで送ってもらった。何から何までやってもらって少し申し訳なさを感じる。
「いいのよ。また、海に行くとき迎えに来るから!」
「今日のところはおやすみなさい」
「おやすみ~!」
馬車を見送ったところで寮の中に戻る。もうすっかり夜になっていた。
「じゃあ、二人ともおやすみ」
「おやすみミア」
「お、おやすみなさい……!」
一階でさらにノアとセイラを見送る。ちょっとした所作が大人っぽい。ドレスを着ているせいだろうか。こう見ると二人ともいいところのお嬢様の風格がある。
「じゃあ私たちも帰ろっか」
「だね~」
階段を上って部屋の扉をノックする。
「は~い」
「ただいま、ネイ~」
「ミア様……!おかえりなさいませ。三人ともお着換えされたのですね」
そう言って中に入るよう促す。
「ちょっといいところでご飯食べることになってね」
「なるほど。楽しまれたようで何よりです」
さっと持って帰ってきた荷物を預かってドレスを脱がせてくれる。部屋着に着替えてふぅと一息。
お風呂に入ってさっぱりとしたところでネイの淹れてくれたお茶を飲みながら一息。ちょうどいいし今のタイミングで渡そう。
「ねぇ、ネイ。今いい?」
「どうされました?」
ぽんぽんと私の隣を叩いて座るように促す。
「座って座って」
「は、はい」
少し困惑しながら私の隣に座ってくれるネイ。ちょっと困惑してる。普段見ない顔だから新鮮かも。
「今日ね、皆でいろいろと買い物に行ったんだけどね」
「はい」
「そこで皆にちょっとした贈り物を皆に贈ったのよ。だから……その、もしかしたらお仕事の邪魔になっちゃうかもしれないんだけど……これ」
指輪の入ったケースをネイに見せる。少し渡し方に迷ったけどこれが私らしいかも。
「み、ミア様……⁉よろしいのですか……?」
「いつもお世話になってるから。少しでもお礼になればなぁって。つけてもいい?」
「も、もちろんです」
そう言って手を差し伸べてくれる。いつもお掃除とかしてくれているのにすべすべの手。優しい温もりも感じられる。少しその手を優しく撫でたところで小指に指輪をそっと通す。うん、ぴったりだった。
「うん、似合ってると思うわ。どうかしら……?」
「一生の宝物にさせていただきます」
きりっとした顔でそう言うネイ。そこまで言ってくれると嬉しい。
「ネイの事を考えながら色も決めてみたのよ」
「落ち着いた色でとても嬉しいです……ミア様」
少しうっとりしたように小指の指輪を眺めている。今までの恩にほんの少しでも報いることができた気がする。
「ミア様、本当にありがとうございます」
そう言って私の事を抱きしめてくれる。温かさとほんのり香るいい匂いで少し眠くなってくる。安心したのもあるかもしれない
「あ~!ネイさんも指輪つけてる~」
「ふふ……先ほどミア様から頂きました。セイラも頂いたみたいですね」
「えへへっ。色違いで素敵かも~」
私を抱きしめながら二人で話しだしている。まぁ……幸せだしいいか。
「姉様~?ってあらあら……」
「ミアはネイさんの胸の中でぐっすりだよ」
「微笑ましいですね……」
「……起きてはいるんだけど?」
ネイの胸元から声だけで返事をする。このまま寝ようかな……背中トントンされてすごい気分がいい。
「姉様、声がもう眠そうですよ?」
「ふわふわになってるねぇ」
「ミア様?もうおやすみになられますか?」
そう言って優しく背中をさすってトントンと叩いてくれる。しかもセイラかレイが頭を優しく撫でてくれている。本当に眠気が襲ってきた。
「そうね……もう、寝ようかしら……ふぁぁ」
「じゃあ私も寝ます」
「お運びしますね」
そう言ってお姫様抱っこで運んでもらう。久しぶりのこの感覚。そのまま優しくベッドに寝かせてもらった。
「ミアすっごい眠そうでかわいい」
「姉様、おやすみなさい」
「お休みなさいませ」
一緒にベッドに入ったレイにやさしく撫でられながら三人に声をかけられてだんだん意識が闇に沈んでいく。
「姉様、すっかり眠っちゃいましたね」
「寝顔かわいっ」
「あまり騒ぎすぎると起こしてしまいますから……行きましょうセイラ」
「はーいっ。おやすみ、レイ、ミア~」
「おやすみ~」
かすかに覚えているのはこのくらいまでだった。




