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感謝

私が目を覚ますと、そこは世永さんの屋敷の一室だった。


両隣に涙を流しながら眠っている琥崙兄さんと嘉蘭姉さんがいた。


私は静かに体を起こし、2人を起こさないように部屋を出て北塔島被害を世永さんに聞きに行くため部屋に向かった。


世永さんの部屋に向かう途中で、沢山の団員さんが涙を流して目を腫らしていた。

ごめんなさい。私が助けてあげられなかった。

あの場にいたのに、助けを求める人がそばにいたのに、私の弱さが人を殺してしまった。


私は泣くのを我慢しながら、向かっているとある部屋の外で樂が膝を抱えて突っ伏していた。


絢愛「どうしたの?」


樂「…。」


相変わらず無口であまり話してくれない。


樂「…死んだ。」


樂が突っ伏したまま話す。


絢愛「…何人?」


樂「眩が死んだ。」


私の求めていた回答とは違う回答で、言葉を発せなかった。


樂「この部屋にいる。」


と、教えてくれる。


絢愛「…ありがとう。」


私は樂が教えてくれた部屋に入る。


その部屋には世永さんが正座して静かに座って、目の前の大きい布団の膨らみの一点を見ていた。


世永「あやちゃん。体調大丈夫?」


世永さんが声を震わせながら、私の体調を気にかけてくれる。


絢愛「…私はいつでも元気です。」


世永「そっか。…良かった。」


世永さんが優しく微笑んでくれた。

その無理をした笑顔が私の心臓を締めつけた。


私は眩さんに挨拶をして、沢山の感謝の言葉を渡した。

けど、その言葉は全て眩さんには届かずに空気に吸われ消えていく。


いつもどんな時でも、元気いっぱいで裸で駆け回る子供みたいな大人だったのに、死んでしまったらただの静かな大人で笑顔も見せてくれない。

眩さんの抜け殻になってしまった体は、冷たくて硬くて鼓動も打ってくれない。

それがあの日握ったパパとママの手と一緒で本当に死んでしまったんだと確信する。


私がしばらく眩さんの手を握っていると、廊下からバタバタと数人か走ってくる音がして、樂が居る所とは真逆の襖が開く。


大一「世永…。」


世永「ごめんなさい。大事な…大切な家族を死なせてしまってごめんなさい。」


世永さんが大一さんたちが入ってくるなり、頭を下げて謝る。

大一さんは無理矢理世永さんを起こし座らせる。

世永さんは大粒の涙を流して声を上げて泣き始めた。


大一「俺の息子を助けてくれてありがとう。最後に顔を見れるだけでも俺は嬉しい。ちゃんとここに帰ってきてくれた。それだけで俺は嬉しい。」


大一さんが声を震わせて、世永さんの肩を強く掴む。


嵐「ありがとう。世永は出来る事を頑張ったんだ。あのまま何もしなかったらあの島は全て流されて、あの島ごと無くなっていた。」


世永さんに感謝しながら嵐さんは涙を流している。


豪「…これで俺ら2人か。」


と、福岡の臓方で眩さんの弟の嘉田苛かたいら ごうさんが瞬きを一切しないままポツリと呟く。


世永「…樂が、眩を助けたんだ。だからお礼は樂に言ってあげて。」


分かったと眩さんの家族が樂がいる障子の向こう側に行き、樂に話しかけるが全く反応してくれないらしい。

ずっと「眩が死んだ。」「この部屋にいる。」というだけだった。

きっと私と話した事も、樂は聞いてなかったんだろう。

それくらい、樂は1人の世界で眩さんの死を悔やんでいた。


みんな樂の頭を撫でたり、励ましたりするけれどずっと同じ言葉を繰り返していた。

それが見るにいたたまれなくなった世永さんが眩さん家族を樂からそっと引き離した。


樂は自分のせいで家族も友達も大切な人全て失ったの考えてるそうで、そのトラウマからまだ抜け出せてなかった。


だから、もうそっとしておいてと世永さんが眩さん家族を部屋に戻した。


眩さんのお葬式は大一さんがやる事になった。

嵐さんがこれで4回目なんだ、と帰る前に教えてくれた。

嵐さんたち姉弟は6人いて、すでに3人も凶妖との戦いで死んでしまったらしい。

その中で1人まだ帰って帰ってこれていない人がいて、大一さんは臓方を引退してからもずっと探しているそう。

もう5年以上も経っていて見つからないらしいけど、ちゃんと嘉田苛家の生みの母親と一緒に墓に入って欲しいからという願いでずっと探していると教えてくれた。


魂だけでもこれだけ辛いのに、肉体も帰って来ないと知った時の辛さは私にはまだ分からない。

でも大一さんたちが最後に会えて嬉しいという気持ちは分かる。

私も最後にパパママ、結美に挨拶出来たから。

その言葉が聞こえないとしても、私の中で生きている大好きな人たちはしっかり聞いててくれるはずだから温かい気持ちになる。


私の知らない、眩さんたち姉弟にも大一さんたち家族の思いが届きますようにと願った。

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