新人
あれから半年が経ってカレンダーでは夏が終わろうとしている。
眩さんが死んですぐに、樂が東京の腹方になったと聞いて少しモヤっとした気持ちになった。
元々樂は腹方を目指していたのは知っていたけど、眩さんを超えるといつも言っていたから多分納得いってないと思う。
少数の団員さんが樂の事を悪く言っているけど、そういう事じゃないんだよ。
コネでもなんでも樂自身がその場所に立って何を見て感じるかに意味があると私は思うんだ。
だから口出ししていい人間なんかいない。
そっと見守ってあげよう、助けを求めていなくても大変そうに見えたら手を伸ばしてあげるんだよ。
人はそのために思いを伝える手段があるんだから、意地悪に使っちゃダメ。
でも樂はその事を知ってか知らずかバキバキ力をつけている。私より後に入ったのにこんなに成長出来るなら将来必ず腹方になれたんだよ。
ちょこっと早く役割が来ただけ。
それを分かってあげようよ。
私は世永さんの屋敷で嘉蘭姉さんを探していると、団員の新見 咲さんとばったり廊下で出会った。
絢愛「おはようございます!」
咲「おはよう。」
咲さんはいつも真顔で効率重視で凶妖を殺していく。
何度も殺さないでくださいとお願いしてるけど、話しを聞いていくれない。
絢愛「これからお仕事ですか?」
咲さんは団服のボタンを締めながら歩いていた。
咲「ええ。で、何?」
少し怖い目つきで私を睨んだ。
絢愛「今日は凶妖を封印してください!お願いします!」
凶妖の中にある魂のためにも凶妖を殺してるみんなに出会ったらお願いしている。
咲「気分が良かったらね。」
と言って、そのまま行ってしまう咲さん。
いつも不服そうな顔をしてる咲さんだからまた今日も殺しをして帰ってくるんだろう。
咲さんと同じ班の信大 凌太さんと高治 天音さんも殺しをしている。
凌太さんは私が話しかけようとするとスルルーっとどこかに行ってしまう。
10年以上この慰撫団で凶妖と戦ってきてる人。
元々慰撫団は凶妖を殺して鎮めて来たから、殺しをする人が一定数いるのは頭も認めてる。
けど、出来ることならどんな魂も救ってあげたいって言ってたんだ。
天音さんは私と会うと笑顔で接してくれる。
天音さんは凶妖殺しに少し罪悪感を感じているけど、同じ班の2人がしてるからしょうがないっていつも言ってる。
あの2人はとっても強くて尊敬してるから、背中でも足跡でも何でも追っていきたんだって言ってた。
強いのは慰撫団団員みんな知ってるけど、あの2人のオーラはとても特殊できっとそのオーラに天音さんたちは惹かれているんだと思う。
私は…、あんまり良いとは思わないかな。
そのまま嘉蘭姉さんを探していると琥崙兄さんと遭遇した。
琥崙「どうした。」
絢愛「嘉蘭姉さんと稽古したいから探してる!」
琥崙「自分はだめなのか?」
琥崙兄さんは自身の顔を指す。
絢愛「肌感をもっと研ぎ澄ませたい!」
琥崙「…じゃあ目隠ししながらダンスしよう。」
絢愛「え!面白そう!」
私はそのまま琥崙兄さんに連れられて稽古場に行き、目隠しダンスをしていると嘉蘭姉さんの怒ってる声が聞こえて目隠しを外す。
嘉蘭「お兄ちゃん!何で嘉蘭も誘ってくれないの!?」
琥崙「…いなかったから。」
嘉蘭「私もお兄ちゃんとダンスする!」
絢愛「じゃあ3人でやろう!」
3人でダンスをしていると、廊下の方で団員さんたちが話している声が聴こえる。
「新人の子、1日で自我穿通したって。」
「わぁ…、さすが腹方の友達だねー。」
え?樂の友達が新しく入ったの?
絢愛「新人の子入ったの?」
私はダンスを止めて目隠しを外す。
嘉蘭「あれー?言ってなかったけ?」
琥崙「…いない。新人なんかいない。」
嘉蘭「樂と高校と住みが同じって世永さん言ってたよー。この間、凶妖にお腹噛まれちゃったらしくて地下室で2、3日訓練したらしいよ。」
絢愛「だから会わなかったのかー!今いるかな?」
嘉蘭「今日はお家に帰ってるって。明日には会えるんじゃない?」
絢愛「うわぁ!楽しみ!」
琥崙「…会わなくていい。」
絢愛「そんな事言わないで!仲間が増えたんだねー!どんな人か楽しみ!」
その夜、3人でご飯を食べていると招集の鐘が鳴った。
新人の子と一緒に住んでいる子の1人が拐われたらしく、それが凶妖の仕業だったらしい。
たくさんの子どもの魂を取り入れて何かしようとしていた凶妖は世永さんが封印したらしく、私たちはその場に連れ去られた子どもたちを家に連れて帰ってあげる役目として集められた。
その現場にいくと古めの空き家に50人近くの子どもが眠ったままだった。
焦げ臭い匂いと血の匂いが混じっていて、だいぶ苦労したんだなって感じた。
「では、世永さんに頂いたこれを子どもの手に擦り入れてください。」
団員の1人が私たちに赤いBB弾の様なものを渡した。
言われた通り子どもの手に擦り付けるとそのBB弾は溶けて馴染んで行き皮膚に浸透すると、その子の手に住所が現れる。
「住所は出ましたでしょうか?その住所はその子が“自分の家”と認識している場所になります。では皆さんよろしくお願いします。」
「「「はい。」」」
私はまず3人の子を抱え、それぞれの家に連れて行く。
みんな家の周りにはおまわりさんがいっぱいいて、お家まで届けてあげられないので近くの分かりやすい場所に寝かせて見つけてもらえるよう促した。
みんなお父さんお母さんの元に戻れた瞬間、目を覚ましてとても嬉しそうな笑顔をしていてホッとした。
私があの空き家に戻ると双子の子が最後まで残されていたのでその子たちのお家に行くことにした。
手に擦り付けると、ここからだいぶ遠い場所。
しかも何でか住所が違う。
ここに集められた子はここら辺の地域の子だったのにこの子達だけはなぜか2つ街を飛んだ向こうだった。
嘉蘭「あー、双子可愛い♡」
絢愛「嘉蘭姉さん!手伝ってもらっていいかな?ちょっと遠いんだよね!」
嘉蘭「いいよー。」
嘉蘭姉さんが1人の子を抱きかかえる。
するといつのまにか横から琥崙兄さんがもう1人の子を抱えていた。
絢愛「わ!いつ来たの?」
琥崙「今だ。この2人で最後だな。…遠いし場所がずれてる。」
絢愛「ね!何でだろう?」
琥崙「凶妖の考えてる事なんか分からない。」
嘉蘭「そうだね。ぱぱっと行って早く寝よー。」
絢愛「うん!」
帰ってきた団員さんに伝えるために置き手紙を置いて双子を3人で連れて行くことにした。




