笑顔
あの日から私はずっと笑顔を作ってる。
ずっと、と言えば嘘になる。
楽しい時、嬉しい時は本当に笑顔になれるから作ったりしなくていい。
あの後、順調に道府県参りの特別稽古を進めていき、いろんな団員さんに出会った。
その中でも年齢が一番近い東雲 犬太という腹方は口が悪いけど、好きなものを好きとしっかり言う性格でとても好き。
この人はごまかしたり、嘘をついたりしないからとてもいい人なんだなって感じだ。
犬太に話しかけると少し嫌な顔をされるけど、なんだかんだ話をしてくれるからきっと元から人が嫌いな人ではないんだろうなって思う。
そう言うところは優璃さんと似ているなと思って、今度3人でご飯食べようねって約束した。
そして私が入って半年近く経った頃、ある男の子が入ってきた。
未世麗さんの弟の華宮 世永さんのお友達らしい。
世永さんとは親子ぐらい離れてる歳の見た目をしてたけど、目の奥が靄がかかっていて笑顔の少ない団員さんと同じような雰囲気だった。
世永さんは人見知りって言ってたけど、優璃さんたちみたいに何か考えがあってあんまり喋らないんだろうなぁと思った。
私はお昼ご飯の予定だったので、待たせていた班の人がいる部屋に向かう。
絢愛「お待たせ!」
「遅ーい。何時間待たせるのー?」
団服をリメイクして肌の露出を多くしたものを着て、つけていない腕時計を指す宇多井 嘉蘭姉さん。
「自分の隣に来い。」
嘉蘭「お兄ちゃんの隣は私なの!」
絢愛「じゃあ丸くなって食べよう!」
隣に誘ってくれた鼻から左耳にかけて大きな傷跡がある宇多井 琥崙兄さん。
「「「いただきまーす!」」」
絢愛「そういえば、さっき新しい団員さんが来てた!」
嘉蘭「イケメン!?」
絢愛「まだ、学生っぽいかなぁ?」
嘉蘭「ざんねーん!」
琥崙「…絢愛はどう思った。」
絢愛「うーん、もっと仲良くならないと分からないなぁ。」
琥崙「仲良くならなくていい。」
絢愛「なんで新人が入るたびにそんな事言うのー?」
嘉蘭「鈍感ちゃんにはわかりませーん。」
嘉蘭姉さんが笑いながら言う。
新人の梵唄 樂はあの日来てから自我穿通を5日間ぶっ通しでやっていて、その集中力を聞いた団員みんな驚いていた。
全く起きないでやっていたから、世永さんは仕事を全部眩さんに任せて樂の世話をしていたみたい。
世永さんの大事な人の1人なんだなぁと改めて感じた。
眩さんは樂の事を集中力おばけとしばらく呼んでからかってたけど、腹方の眩さんさえびっくりする集中力を持った樂は先に入った私より強くなるんだろうなぁと思う。
私も負けないように頑張ろう!と思って、今日も琥崙嘉蘭兄妹に稽古してもらう。
嘉蘭姉さんは露出が多くてたまにお尻と横乳が見える事があるけど、空気で周りの気配を感じ取れるからこうしてないともったいないらしい。
そのコツを嘉蘭姉さんに教わって、この間弾丸を避けられるようになった。
避けるスピードは琥崙さんの身のこなしを真似させてもらった。
音楽をかけながらたまに2人で踊りながら体の動かし方を教わっていると、嘉蘭姉さんに怒られた。
嘉蘭姉さんは琥崙兄さんの事が大好きみたい。
そうやって、今の自分よりも沢山命を助けられるように鍛錬してきた。
でもやっぱりその数は限られていて、どうしても助けられない時がある。
その時は悔しくて悔しくてしょうがなかった。
私が誰にも見つからないように隠れて泣いているのに2人はすぐに見つけてくれて抱きしめてくれる。
私があのノートに書いた、パパとママの最後の記憶。
それを2人が抱きしめてくれるたびに思い出して、大好きな人たちを思い出せるからまた笑顔になれる。
そう、あの時も私を笑顔にさせてくれたのは2人だった。




