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戦士ステラ   作者: 安田けいじ
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ムミョウの影

 ステラとユウキは、サウスランドの発展に手を尽くしながら新婚生活を楽しんでいたが、彼女のお腹が順調に大きくなり臨月を迎えると、彼は落ち着かない日々を送っていた。


「お産の間は、お母さんの所へ帰って、ゆっくりした方がいいんじゃないか?」


 ユウキが、ライト王国での出産を提案したが、彼女には拘りがあった。


「ありがとう、でも、この国で産みたいの。此処は私達が作った国よ。この子の故郷は此処しかないわ」


 ステラは、大きくなったお腹を優しく撫でながら、


「ねえ、あなたもそう思うでしょう」


 と、お腹の子に話しかけた。



 戦争が終わった事で、ステラの警護は、ステラ部隊の百名が宮殿警護も兼ねて行っていて、十剣士達は、それぞれの任務に就いて解散状態となっていた。


 ネーロの残党が、時々事件を起こしていたが、脅威というほどではなく、サウスランド司令官のレグルスも、現体制で充分と判断していた。


 予定日が近くなって来たステラは、公務からは退いていたが、宮殿の一室で、時々入ってくる国の諸問題に、ホログラム電話で相談を受けたりしていた。


 その日は、ユウキも公務で外出し、ステラの身の回りの世話は、最近入ったアンカという秘書が担当していた。彼女は、二十歳くらいの頭の良さそうな娘で、仕事はテキパキと熟し、愛想もよかった。


「アンカ、仕事が一段落したから、お庭を散歩したいわ。一緒に来て頂戴!」


 ステラが呼ぶと、アンカがスッと現れて支度を始めた。


 九月に入って、秋の気配が感じられるようになったが、日差しはまだ厳しい。ステラはアンカが差しかける日傘に護られて、ゆっくりと庭園を歩き、木々の緑や美しい花々を楽しんだ。


 この庭園は、地球の日本庭園を模してユウキが作らせたもので、この星には無い味わいがあると、評判がよかった。



 ステラとアンカが、日陰にあるベンチに座って歓談していた時である。異次元の空間から、彼女たちを窺う影があった。


 その影は、ステラを観察しながら徐々に近付くと、青く光るビームサーベルを抜き放ち、一気にステラ目掛けて剣を突き出した。


「ステラ様危ない!」


 アンカは、瞬時にステラを庇って、異次元空間から突き出された剣を素手で払いのけると、彼女をシールドで覆って防御した。


 相手の姿は見えず、剣だけが空間を裂いて飛び出してくる。その剣をアンカは素手で打ち返していた。


「アンカ、あなた手は大丈夫なの!?」


 ステラが、シールドの中から、戦士のような彼女の動きに目を見張った。


「大丈夫です。ステラ様は動かないで下さい!」


 アンカがステラを気遣いながら紅のスーツを纏うと、謎の刺客が姿を現した。


「ムミョウ!?」


 その姿を見て、ステラは思わず息を呑んだ。黒と赤のニシキヘビを思わせる不気味なスーツは、先の戦いで死んだネーロの帝王ムミョウのものだったからだ。


 ムミョウに挑みかかり、剣を交えていたアンカだったが、このままでは戦いの衝撃で宮殿が壊れてしまうと判断すると、ムミョウに組み付き、共に異世界へと消えていった。



 そこへ、アンカの通報を受けて、ユウキが帰って来た。彼は、状況を把握しながら、ステラのシールドを解除して抱き寄せた。


「大丈夫? アンカは何処へ行ったんだい?」


「宮殿を守るために、ムミョウと次元を越えて行ったわ」


「ムミョウ? ネーロ帝国のムミョウのことかい?」


「そうよ、影武者かも知れないけど、同じ型のスーツを着ていたわ」


「そうか。少し様子を見てくるよ、君は宮殿に戻って休んでいてくれ」


 ユウキが行こうとすると、ステラがその腕を取った。


「私も連れて行って。アンカも心配だし、ムミョウの正体も気になるの」


「無茶を言うなよ。そんな身体で……」


「お願い。あなたの力なら、何とかなるでしょう」 


「……向こうで産気づいても知らないぞ!」


 ユウキは、渋々ステラを抱き上げた。


「なんて重いんだ!」


 ユウキが、いかにも重いといった仕草をすると、


「まあひどい、覚えてらっしゃい!」


 ステラが睨んで彼の頬を抓った。


「痛い、痛い」


 ユウキが大袈裟に言うのを、ステラが笑いながらそのほっぺにキスをした。



 ユウキが、シールドで球体を作り、その中に椅子を置いてステラを座らせると、球体は次元飛行へと入っていった。


 多次元の中から、アンカの光跡を辿って位置を着き止めたユウキは、その世界に入っていくと、そこは太古の恐竜時代のような所だった。


 火山が噴煙を上げ、原始植物が繁茂し、巨大生物が闊歩する中で、アンカとムミョウが砂塵を舞い上げ、激しい戦闘を繰り広げていた。


 ユウキ達は距離を置いて、上空よりその戦いを見守った。


「彼女は何者なの? あなたが連れて来たんでしょう」


 ステラは、アンカの高速の動きに驚きを隠せずにいた。


「もうすぐ分かるよ。それにしても、あのムミョウもアンカの動きに負けていないぞ」


「そうね。いつの間に、あんな高性能のスーツを作ったのかしら。あれでは私でも勝てるかどうか……」


 ステラの戦士としての血が騒ぎ、唇を噛んだ。


 アンカとムミョウの激闘は続き、殆ど互角の戦いかと思われたが、次の瞬間、ムミョウの剣が、アンカの身体を頭から真半分に切り裂いていた。






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