進撃—スーパー羽衣①
帝都侵攻のその日は、大荒れの天気となったが、ユウキとアトリアは、スーパー羽衣を起動して、帝都へと足を踏み入れた。
スーパー羽衣は、天女の羽衣に似たエネルギー帯を、直径十メートル程の輪に変形させて、それを見えなくなるまで高速回転させた、球体のシールドである。それは、単なる防御シールドでは無く、触れる物全てを破壊する、凄まじい兵器なのである。
視覚では捉えられないスーパー羽衣は、ネーロ軍の兵士達から見れば、ただ二人が、無防備に歩いているようにしか見えなかった。
前にユウキが立ち、その後にアトリアが続くと、ネーロ軍のアンドロイド部隊が一斉に二人に襲い掛かった。
アンドロイド達は、スーパー羽衣に触れると瞬時に砕け散り、その屍が街道を埋めていった。彼らは、見えないスーパー羽衣の威力に恐れ戦き、遠くからエネルギー弾などで攻撃するしかなかった。
二人は、歩いて様子を見ながら進んでいたが、暫くすると、一メートルほど浮き上がり、スピードを上げた。ネーロ軍の攻撃は相変わらず続いたが、アトリアたちの進撃を阻むことは出来なかった。
その、どさくさに紛れ、十剣士を中心とする核の処理部隊が、ステルスモードで六つの基地へと向かった。
アトリアとユウキは、夜になると進行を止めて、ユウキのシールドの中で眠った。このシールドはステルスモードで外からは見えない。シールドの中には、ルナが即席で作った小さな部屋があって、トイレや小さなベッドまで整っていた。
「貴方の守護ロボットって何でも作れるのね。こんな所で、ゆっくり眠れるとは思わなかったわ」
アトリアは、エイリアンのスーツの不思議な力に、驚きを隠せない様子だった。
ユウキは、あまり話した事も無い義姉アトリアと同じ空間で眠る事に、いささか抵抗があったが、彼女は、特に意識しないのか、自分の事やステラの子供の頃の話を聞かせてくれた。
ネーロ軍を悉く撃破し、不気味に前進する二人の姿に、ネーロ軍の兵士達の恐怖心は日増しに高まっていった。
次の日の早朝、ネーロ軍の戦闘機部隊が、スーパー羽衣にミサイル攻撃を開始した。
「ユウキ、大丈夫なの!?」
アトリアは、凄まじい爆発の連続に、不安そうにユウキを見た。
「大丈夫です。スーパー羽衣は、これ位のミサイルでは破壊出来ません」
ミサイルの爆発で、スーパー羽衣の外は火炎地獄と化していたが、内部は静かなものだった。ただ、爆発の閃光だけが、二人の顔を照らしていた。
アトリアは、街道沿いの民家に被害が及ばないようにと、最寄りの広場に移動すると、ミサイル攻撃に晒されながら、攻撃が止むのを待った。
帝都の王宮では、ムミョウ達が、送られてくる映像に釘付けになっていた。
「あのシールドは破れないのか! この王宮の、目と鼻の先まで迫っているんだぞ!」
ムミョウが、苛立って幹部を怒鳴りつけていて、副官ヤミがそれを宥めていた。
「ムミョウ様、此処は帝都の民にひと働きしてもらいましょう。それから、核の準備もしておくべきかと。王宮近くでの使用は不本意ですが、背に腹は替えられません」
「そうか、任せよう……」
ムミョウは、そう言って黙り込んだ。
数時間後、ユウキ達が進撃する前方に、新たな数千のスーツ軍団が道を塞いだ。
「アトリア様、あれは奴隷化スーツです。中に入っているのは恐らく一般人です、スーパー羽衣を止めましょう」
「都民を盾にするなんて、ムミョウはどこまで卑怯なの!」
アトリアが吐き捨てるように言って、スーパー羽衣を止め、ユウキのシールドに入ると、二人は敵の出方を待った。
都民達からは、恐れ戦き叫ぶ声があちこちから漏れていた。しかし、彼らの意に反し奴隷化スーツは、エネルギー弾などでユウキ達を攻撃し始めたのである。
「ユウキ、あの奴隷化スーツをどうやって止めるの?」
「音波砲を使えば、スーツだけを破壊出来ます。そのあと、念のためシールドで都民を守りますから、スーパー羽衣で上空を前進して下さい」
ユウキが、ひしめき合って進軍してくる都民の前に立ちはだかり、最大級の音波砲を発射すると、都民達から悲鳴が上がった。だが、破壊されたのは奴隷化スーツや武器だけで、彼らに被害は無かった。
次にユウキは、巨大シールドで都民を覆い、アトリアに合図すると、彼女は、スーパー羽衣を起動して、その頭上を通過していった。
シールドを外し、都民たちが逃げ散るのを確認したユウキは、再びアトリアと合流した。
そして、数日進撃し、王宮迄三十キロの所まで来た時、コスモの只ならぬ声が響いた。
『ユウキ! ネーロ軍の基地から、核弾頭を搭載したミサイルが発射されました。着弾迄あと二分です!』
「了解! 位置を認識した。アトリア様、ちょっと行ってきます、そのまま進撃してください!」
アトリアが返事をする間もなく、ユウキは次元移動装置を使ってスーパー羽衣の外へ出ると、一気に空へ舞い上がった。彼は、十秒ほどで核ミサイルに追いつくと、上昇から下降へと転じる直前でミサイルを抱きかかえ、そのまま強引に宇宙空間へと運んで破壊した。
『敵、核ミサイル第二波! 今度は五発一度に発射されました。ライト王国とサウスランドに二発づつ、残りの一発は此処へ来ます!』
「ルナ! フレア! ライト王国とサウスランドのミサイルを頼む。時間が無ければ起爆装置のみを破壊してくれ!」
『ラジャー!』
彼女達は瞬時に現れると、それぞれのミサイルを追っていった。




