ステラ傷を負う②
「ムミョウの独裁から解放されただけでは、国は良くならない。貴方は市民からの人望も厚いと聞いている。是非、この国の民を率いてもらいたいのです!」
ユウキの言葉が、ベガの心を揺さぶった。
「私にそんな力などありません、買い被りすぎです」
「今すぐ返事をくれとは言いません、考えておいて下さい」
ユウキは、看護の者に声をかけ、部屋から屋外に出ると、リハビリで散歩しているステラに出会った。
まだ、歩くと傷が痛むのか、時々その顔が曇った。ユウキが傍に行くと、ステラが腕を組んで来て、二人は寄り添って歩いた。
「まだ痛みがあるんだろう。気持ちは分かるが、無理をしちゃだめだよ」
「大丈夫よ、無理はしていないから。それで、ベガの調子はどうなの?」
「順調に回復している。……勝手にベガを助けた事を怒っているんだろうね」
「あなたに考えがあっての事でしょ、信じるわ」
ステラは、笑顔のままユウキを見ていた。
「ありがとう。それにしても、修羅化ってすごいね。あれで、この国を護って来たんだね」
「そうね、スーツは心の強さでパワーが増幅するでしょ、怒りは、途轍もない力を引き出してしまうの。私の場合、スーツの安全装置を解除してしまうから、肉体に負担がかかりすぎるのが難点だけど。……でも、修羅化した顔を、あなたに見られたくなかったな」
ステラがそう言って、目を伏せた。
「どんな姿でも、僕はステラが大好きさ。でも少し怖かったかな」
ユウキが笑いながら言うと、
「まあ、ひどい!」
ステラがユウキの頭を、ポンと手で打った。二人は、木陰に腰を下ろすと、互いの顔を見ながら、久しぶりの会話を楽しんだ。
数日後、ザールラントの前線基地で、帝都進攻の会議が行われた。これには、ライト王国から、ロータス、ストレンジ博士、そして、ステラの姉アトリアが出席していた。
姉のアトリアは、十九歳でアレク将軍と結婚して、三人の子供がいる。ステラより八つ年上の、気品溢れる美人である。負傷したステラを心配しての来訪であった。
冒頭、ロータスが挨拶した。
「諸君の、身命を賭しての侵攻作戦で、ネーロ侵攻作戦は、いよいよ帝都攻略を残すのみとなりました。女王陛下から、全兵士にくれぐれもよろしくとの御伝言を頂きましたので、兵士達にお伝え下さい。
今後は、負傷したレグルスに変わり、私が指揮をとらせて頂きます。また、この会議には、本人の意思で、ネーロ帝国のベガ大佐にも同席してもらっております。今日は、帝都進攻の日程と作戦を決めておきたいので、諸君の忌憚のない意見を聞かせてもらいたい」
サルガスが進行を任され、帝都の守りについての情報を十剣士の一人が伝えた。
「帝都は、中央に王宮があり、その周りに六つの基地が点在しています。問題は、その基地は民家の中にあるという事です。現在、我々の攻撃に備えて、帝都南部に兵士が集結しています」
「このまま戦えば、多くの都民が犠牲となってしまうな……」
サルガスが、腕組みをしながら言うと、両腕を失い、車椅子に乗ったベガが、静に口を開いた。
「わが帝国では、民衆は奴隷のようなものです。帝都は、その民衆を盾にしているのです。基地を攻撃すれば、多くの都民が犠牲になります。何とか犠牲者の少ない方法を考えて頂ければと思います。
もう一つ、ユウキ殿と守護ロボットの脅威は、ムミョウが一番心配していることです。彼はその対策として、核ミサイルを六つの基地に配備しています。ユウキ殿が、一気に王宮を攻撃すれば、どんな暴挙に出るか分かりません」
「力には力という事ですか。これでは、手も足も出せないですね」
サルガスがお手上げのポーズで言った。
その後、何人かの意見が出されたが、これといった良案は無かった。暫くして、ロータスが沈黙を破って口を開いた。
「まずは、特殊チームを六つの基地に送り込み、核の起爆装置を破壊するしかないでしょう。それも、同時刻に一斉に処理する必要があります。
敵の真っ只中での活動は至難の業ですが、やるしかありません。そして、核の処理をスムーズに進める為には、敵の目を引き付けるものが必要です」
ロータスは一呼吸おいて続けた。
「それは、ステラのスーパー羽衣で地上を進撃する事です。軍も従えず、一切攻撃もしないで王宮へと進撃すれば、群がる敵は、無敵のスーパー羽衣の餌食となり、大きな脅威となって、注目せざるを得ないでしょう。被害を最小限に留める為には、最良の策だと思うがどうだろう。核が無効化された時点でユウキに王宮を襲撃してもらえば決着が着くでしょう。
ストレンジ博士、スーパー羽衣の継続時間はどれくらいですか?」
「そうじゃな。スーパー羽衣はエネルギーの消費が激しい、持って五時間だろう。じゃが、ユウキのスーツのパワーは無限のはずだ」
「その通りです。私とステラで行けばこの作戦は可能ですが……」
ユウキがステラの事を言おうとした時、アトリアが良く通る声で発言した。
「ステラは、まだ回復しきれていませんから、私がステラの代わりを務めます」
アトリアの提案に、一同は驚いた。ステラは、姉に申し訳なく思ったが「私がやります」と言えるだけの体力が、まだ戻っていなかった。
アトリアは、王女として戦士の訓練も受けていて、ステラの代役には適任かも知れなかった。
意を決したようにロータスが立った。
「では、ステラが回復するまで帝都侵攻は、アトリア様にお願いしましょう。スーツの手配と訓練をお願いします。
各基地の核の処理は、サルガスと十剣士にお願いする。帝都侵攻は一週間後とします。以上!」
ネーロ帝国との最終決戦をまじかに控えて、戦えないステラの心中は穏やかではなかった。




