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戦士ステラ   作者: 安田けいじ
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ステラ暗殺計画①

 ステラとその部隊は、首都の復興が一段落した時点で、一旦サウスシティに帰って来ていた。


 サウスシティ基地の司令官レグルスの許には、世界に散らばった十剣士からの情報が、毎日のように送られて来ていて、その中には、ステラに関するものもあった。


 帰って来たステラに、レグルスが困惑した顔で言った。


「ステラ様、ネーロ帝国に潜入している者からの連絡では、貴女の暗殺計画が進められているようです」


「今に始まった事ではないけど、気を付けるわ」


 意に介さないステラの態度に、レグルスが語気を強めた。


「十剣士を呼び戻して、警護体制を固めるべきです! ユウキ殿一人では護り切れないのではないですか?」


「私一人の為に、人数を割くことは出来ないわ。ユウキに頑張ってもらうから」


 ステラは、警護の強化を頑なに拒んだが、レグルスも譲らなかった。


「いや、貴女に何かあれば、亡きシリウス王との約束を破ることになります。それだけは出来ません!  十剣士は戻します。これは、司令官としての判断です。いいですね!」


「レグルス……」

 

 師、レグルスの彼女を思う真剣な目に、ステラはそれ以上何も言えなかった。


 ステラの戦闘の師匠でもあるレグルスは、ステラ親衛隊ともいうべき十剣士を育て、今日まで、命を賭して彼女を護り抜いて来た守護者である。それは、シリウス王の遺言でもあった。



 十五年前のある日、レグルスはシリウス王に呼ばれた。


「おう、レグルス来てくれたか。実は、ステラの事なんだが、そろそろ戦闘訓練を受けさせたいと思っているんだ。少し早いかもしれないが、ネーロ帝国の動きも気になるんでな。

 男児がいない王家では、ステラに国を率いる戦士になってもらわねばならんのだ。面倒を見てやってくれまいか?」


「承知しました。早速、博士にお願いして戦闘スーツを作ってもらいましょう」


 まだ十歳になったばかりのステラは、その小さな身体に特注の赤い戦闘スーツを纏い、レグルスとの戦闘訓練が始まった。


「ステラ様、何故、戦士になりたいのですか?」


 レグルスが聞くと、


「お父様のお役に立ちたいの。それから、愛する人を護りたい」


 ステラは、少しはにかんで答えた。


「ほー、愛する人が出来たんですか?」


「今はいないけど、大きくなれば恋人が出来るでしょ。その人を護るの」


「分かりました。訓練はきついですよ、覚悟してください」


 訓練が始まると、レグルスの指導は厳しく、ステラが泣きだしても容赦しなかった。周りから、王女なんだからそこまでしなくてもと批判が起きたが、彼は聞かなかった。


 戦士になるという事は、常に死と隣り合わせになるという事だ。レグルスは、彼女に絶対的な力をつけてほしくて、敢えて厳しくしたのである。


 ステラも彼の心を感じたのか、決して弱音を吐かなくなった。レグルスは、懸命に食い下がってくるステラの健気さに、心の中で泣いていた。


 そのステラの心を支えたのは、厳しくも暖かい師レグルスの言葉であり、父や母、姉たちの心からの励ましだった。家族もまた、心で泣いてステラを送り出していたのである。


 そして五年の月日が流れた――。


 ステラは戦士としての訓練を終えて、剣も格闘も、レグルスを相手に互角の戦いが出来るまでに成長していて、身体も大人へと変化しつつあった。


「よく頑張りましたね。今日で訓練は終わりますが、これからは、ご自分で更に修練を積んで下さい」


「レグルス様、ありがとうございました」


「私はあなたの家来ですから、様はいらないですよ。今までのご無礼をお許し下さい」


 ステラは、厳しくも楽しかった五年間を振り返り、レグルスへの感謝の念が込み上げ、跪くレグルスに抱きついた。




 ステラを戦士にとの、シリウスの英断が無ければ、ライト王国は滅んでいたかも知れなかった。


 レグルスは、即座に十剣士を呼び戻して、ステラの警護体制を強化し、暗殺計画への対策を立てていった。


 一方、ユウキは、ステラの警護から外れ、部隊の指揮を任されていた。二百名あまりの小さな部隊だが、一騎当千の兵士に育てるべく、スーツの強化やコンビネーション攻守の開発などに全力を注いだ。


 彼は、ステラの暗殺計画が気になっていたが、焦ってどうなるものでもなかった。今は、現実の課題を、一つ一つ熟していくしかなかった。


 ステラは多忙を極めていた上に、十剣士の警護プログラムに入っている為、ステラハウスでは、ユウキ一人の日が続いていた。ある夜、久しぶりにステラが顔を見せた。


「寂しくない?」


「少しはね。でも、そんな我儘言ってる場合じゃないからね。今日はゆっくりできるの?」


「ごめんなさい。実はね、ネーロ軍の大部隊が、動き出したようなの。早ければ、明日にも来るかも知れないわ。ネーロ軍が、新型のスーツを開発したという情報もあるから、厳しい戦いになると思うわ。あなたも気をつけて頂戴」


「まさか、新型のアンドロイドじゃないだろうな。博士が言ってたけど、今より高性能のアンドロイド兵士が現れたら、歯が立たないそうだ」


「どんな強敵が現れても、負けるわけにはいかないわ。でも、無駄死にはしないで。約束よ。じゃあね」


 ステラは、ユウキの手を取ってぎゅっと握りしめた。


「もう帰っちゃうの。抱きしめていいか?」


「……十剣士が見ているわ」


「いいさ、夫婦なんだから」


 ユウキは、ステラの手を引き寄せ、熱い口付けを交わした。お互い明日はどうなるか分からなかった。互いの愛を確認して、二人は別れた。





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