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戦士ステラ   作者: 安田けいじ
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ネーロ軍大襲来

 数か月後、サウスシティ基地は、若き兵士達によって整備され、活気に溢れていた。それは、国外追放となったステラを、何としても支え抜きたいという、兵士達の強い思いがあったからだ。


「レグルス様、最近、監視衛星が、この上空に配備されましたがよろしいのですか?」


 通信担当の兵士が、司令官のレグルスに訊いた。


「恐らくライト王国のものだろう。ちょうどいいじゃないか、その映像を使わせてもらえば基地周辺の監視も出来る。こちらからもコントロール出来るようにしておいてくれ」


 レグルスは、新司令官としてステラを支えるべく、懸命に指揮を執っていた。


 この基地では、エイリアンの宇宙船を本部棟として使い、コスモタワーと名付けられていたが、依然、機能解明は出来ず、建物としての利用価値しかなかった。


 ステラとユウキの住む丸太小屋は、兵士達が寄ってたかってリフォームし、りっぱな洋館風の家になって、ステラハウスと呼ばれていた。


 ステラは、軍の会議などでライト王国に出向かねばならず、留守が多かった。十剣士がいない今、ステラの警護はユウキが担っていたが、彼は国外追放の身なので、常にステルスモードで警護するしかなかった。


 軍では、議長派の一部の幹部によるステラへの悪口雑言が後を絶たず、我慢の限界に達したユウキが、その幹部をボコボコにして、ステラに叱られた事もあった。ある幹部は、


「ステラ、お前は、もはやこの国の王女でも何でもない、国外追放された犯罪者じゃないか、そんなお前が軍の顧問など、到底認められん。即刻立ち去れ!」


 と罵った。ステラは反論するでもなく、どんな暴言にも涼やかな顔で聞き流していた。


「ステラ、何故、あんな奴らの言いなりになっているんだ。あれじゃあ、軍の団結もあったもんじゃない。軍から離れた方がいいんじゃないのか!?」


 放っておけば、アルデバラン家に殴り込む勢いのユウキに、ステラは噛んで含めるように言った。


「あなた、落ち着いて。議長派の幹部に、この戦争の事を真剣に考えている人間など誰もいないわ、自分の利益の事しか考えていないのよ。そんな彼らに軍を任せたら国が滅んでしまう。今は耐えて、軍で踏ん張るしかないの。それが、お母さまの期待でもあるんだから」


 腹の収まらぬユウキは、師、ロータスを自宅に尋ねた。


 ユウキは、ステラに対する、国や、議長派の仕打ちの理不尽をぶちまけた。静かに聞いていたロータスが、彼を見据えて言った。


「それで、どうしたいんだ。アルデバランを殺して何とかなるなら、今から二人で行こうじゃないか。問題はそんな事じゃないだろう。いかに、この国の民を守るかという事だ。今のお前は、その目的感がずれている。ステラの足を引っ張っているだけじゃないか!」


 ユウキは、自分の誤りを指摘されると一言もなかった。そして、今までの我儘な行動を猛省した。


「この国は今乱れている。人の心が乱れる時は必ず災いが起こる。近々、ネーロ帝国の大きな攻撃が必ずあるだろう。すぐに帰って、対策を立てるんだ。アレク将軍とレグルスにも連絡しておく」


 気持ちがすっきりしたユウキは、ロータスの妻リリーに見送られて、サウスシティへと帰っていった。


 サウスシティでは、ネーロ軍迎撃の対策を練り、臨戦態勢を取った。そして、ライト王国でも、住民のシェルターへの避難準備が進められ、首都は地方へ避難する人々などで騒然となった。


 数日後、ライト王国の首都の海岸線に、ネーロ帝国の潜航艇数百に乗った戦闘服部隊三千名の大軍が、押し寄せたのである。ロータスの予言が的中したのだ。


 軍を率いるのは、ネーロ帝国の重鎮と呼ばれる、将軍ダーク。黒い鎧のようなスーツを纏った巨漢で、大きな槍を自在に操る豪傑である。


 ライト軍は、これを迎え撃ったが、ダークの勢いに防衛網は突破され、首都侵入を許してしまった。一度突破されると、なだれ込んで来るネーロ軍の勢いは止めようがなかった。


「ステラ様を呼ぶんだ! 俺たちでは歯が立たんぞ!」


 ライト軍の兵士達は、必死で反撃しながら、ステラの到着を待った。


 暫くすると、待ち兼ねたステラの部隊が到着し、ダークの側面を突いた。


「逃げないで! 私に続きなさい!」


 剣を振り翳したステラの叫びに、ライト軍が勢いを取り戻し始めると、彼女はダークの前に躍り出た。


「ダーク将軍、私が相手よ!」


「おー、ステラ姫か。いざ!」


 ダークの大槍と、ステラのビームサーベルがぶつかり、衝撃波が走る。鎧を纏ったダークの身体は二メートルを超えていて、ステラとの闘いは大人と子供のようにも見えた。その巨体から繰り出す槍の衝撃は凄まじく、ステラは、そのパワーに押されて徐々に後退していたが、新兵器“羽衣”を起動して応戦した。


 ピンク色の帯が、ステラの身体の周りを、天女の羽衣のように纏わりついて、彼女を護りながらゆっくりと動きだした。


 この羽衣は、触れるもの全てを破壊する防御力と、ピンクの帯が弾丸に刃にと自在に変化して攻撃に転じる、攻守一体の武器である。


 ステラが、羽衣を鞭のようにしならせ連続して打ち込むと、掠めたダークのスーツから煙が上がり、ダークはズズッと後退りした。


「新兵器か? なかなかやるではないか!」


 本気モードとなったダークの大槍と羽衣が激突すると、閃光と衝撃波が二人を包んだ。彼らの凄まじい戦闘に、敵も味方も遠巻きに見守るしかなかった。



 一方ユウキは、攻め込まれた最先端で敵と格闘していた。敵味方入り乱れた現状では音波砲を使う事は出来ず、剣とエネルギー弾で戦うしかなかった。それでも、ユウキの戦闘力は抜きん出ていて、次々と敵を倒していった。


「た、助けて下さい!」


 悲鳴のような声の方を見ると、若い兵士が恐怖からか建物の隅で震えていた。ユウキは、周りのネーロ兵を蹴散らして、その兵士を引き起こした。


「新兵か?」


「はい、……今日が初陣なんです」


 新兵は、震える声で答えた。


「よし、心配するな。俺の後ろについて離れるな!」


 ユウキは、新兵を護りながら戦闘を続けた。新兵は、懸命にユウキの背中を追っていく内、彼の動きが分かるようになって来たのだ。


「後方に回り込んだ敵を撃て!」


 ユウキの指示に、新兵は、無我夢中でエネルギー弾を打ち続けた。


「いいぞ! 出来るじゃないか!」


 二人は二身一体で回りのネーロ軍を撃破していった。



「どうだ、少しは自信が付いたか?」


「ありがとうございます。もう一人で戦えます!」


 臆病を克服した新兵は、礼を言って自分の持ち場へと帰っていった。


 ユウキ達の奮闘で、ネーロ軍を徐々に海岸線へと押し返していくと、そこではステラとダークの戦いが、まだ続いていた。


 互角の戦いを展開していた二人だが、ユウキが剣を抜き加勢に入ると、さしものダークも後退し、ネーロ軍は引き上げていった。



 今回の攻撃で、首都は大きな被害を受けたが、都民のスムーズな避難行動で、犠牲者は殆ど無かった。ロータスの先見のお陰である。


 軍では、ステラ達の活躍が無かったら危なかったと、今更ながらステラ部隊への期待が高まり、ステラへの悪口雑言は影を潜めた。



 その頃、ネーロ帝国の宮殿では、帝王のムミョウをはじめ主だったものが集まり、会議が行われていた。

 独裁者ムミョウは、五十台で小柄ではあるが、その眼光は鋭く周りの者は彼の顔色ばかりを窺っていた。


「三千の兵を投入しても、ライト王国の首都は落とせないのか!」


 ムミョウが、憮然とした口調で言った。


「申し訳ありません! 今回も、あのステラを倒すことが出来ませんでした。それから、もう一人、ステラと同等の力を持つ兵士がいました。あの二人を攻略しないことには、前に進めないかと……」


 ダークが説明すると、ムミョウが唸った。


「うーん、その男のことも調べる必要があるな。世界制覇の夢を掲げて十年余り、悉くステラに妨害され続けて来たと言ってもいい。ステラとそ奴を亡き者にしなければ、この戦いは勝てぬ……」


「最近ステラは、サウスシティに移り住んだようです。そちらを、徹底的に攻撃してはどうでしょう?」


 一人の幹部が進言すると、ムミョウがジロッと睨んだ。


「たわけ! ダークでも勝てないものを、今の状態で何度攻撃しても同じだ。新兵器の開発を急げ、最強の暗殺部隊を作るんだ。手段は選ぶな。今度失敗すればお前たちの首をもらうぞ!」


 機嫌の悪いムミョウは、足早に部屋を出て行った。


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