追放—新たな天地②
「ユウキ、これはエイリアンの指揮官を認証する装置のようですね。我々サファイヤ星人では動かないのではないですか?」
科学技術に詳しいレグルスが興味深そうに言った。
「そうかも知れませんが、やるだけやってみましょう」
ユウキが自分の手をパネルの手形に合わせると、一瞬手形の部分が光ったが、その後何の変化も無かった。
「だめか……、エイリアンのスーツの情報が身体に入っているから、もしやと思ったんだが、一体化を途中で止めてしまったから情報が足りないのかも知れないな」
「エイリアンのスーツ? 何ですそれは?」
レグルスが、不審げにユウキを見つめた。
「実は、最初に此処に来た時に、この宇宙船の中で、エイリアンのスーツを見つけたのです。博士の研究室で調べる内、僕が試しにスーツを装着してみると、身体全体に痛みが走って苦しくなって来たのです。直ぐに、博士がスーツを解除してくれたので軽い火傷で済みましたが、その時から、僕の脳細胞と身体能力が活性化されたのです。エイリアンのスーツから僕の身体に何かが入ったのだと思います。
博士の話では、スーツと完全に一体化したら、人間ではいられないかもしれないとのことでした。今は博士の研究所に保管されています」
「そうでしたか。恐らくそれは、サイボーグスーツでしょう。人間でいられないなら使う訳にはいきませんが、惜しいですねえ、きっと凄い力を秘めていると思いますよ」
「全くです。この戦争を終わらせる力になるかも知れないと思っていたのですが、残念です」
ユウキとレグルスが話している内にも、ステラやサルガスも認証を試みたが、結局何も起こらなかった。
「残念だが仕方がない。レグルス様、この宇宙船は雨風は防げるので、寝泊まりは此処を使ってはどうでしょう?」
「そうですね。当面は、此処を使わせてもらうとしても、基地としての整備や、建物も作らなければなりませんね」
ユウキの提案に頷きながら、レグルスはステラに視線を向けた。
「そうね。レグルス、悪いけど簡単なものでいいから私達の家も作ってほしいわ」
「分かりました。早速作りましょう」
レグルスが十剣士に指示すると、彼らは、森へと出掛けていき、大きな木を数十本切り出して来て、半日余りで立派な木造の丸太小屋を建ててしまった。
「凄いね、こんな短時間で家を建ててしまうなんて」
ユウキが、感心しながらその建物を見上げた。中へ入ると、炊事場、居間、寝室、会議室迄作られていて、ステラも気に入ったようだった。
夜になって、丸太小屋で簡単な食事をとり、お茶を飲みながらの会議が始まった。
「今日はご苦労様。では、これからの事を検討しましょう。最初に、今回の国外追放の件で不審に思っている人もいると思うから、私から言っておきたい事があります。
実は今回の事は、私とお母さまのお芝居だったんです。デネブが軍を追放になって、アルデバラン議長一派が何を仕出かすか分からない状態だったでしょ。内乱でも起これば、ネーロ帝国に攻め込む隙を与えてしまうから、私を廃する事で議長派の怒りを納めたの。皆には黙っていてごめんなさい」
ステラの話に一同は驚いたが、確かにその通りだと頷いた。
「さて、これからの話だけど。最強とはいえ、たった十人では出来ることも限られてしまうわね」
「その事ですが、先ほど二百名の兵士が軍を止めたそうです。こちらに来る可能性が高いですね」
レグルスが笑みを浮かべて言った。
「それは願ってもない援軍ね。受け入れ態勢を急いでとらないといけないわね」
「明日、早朝から兵士達を受け入れる準備をしよう」
レグルスが言って、その日は終わった。
次の日の昼前、二百名の兵士がやって来た。ステラ達が迎え出ると、兵士たちが駆け寄り、口々にステラの名を呼んで、共に戦わせてくださいと懇願するのだった。
「貴方達、軍から逃げてきたんじゃないでしょうね?」
「全員退役してきました。ここで働かせてください!」
「レグルス、彼らを雇ってもいい?」
ステラが、笑顔で聞いた。
「しばらく給料は払えませんが、それでも良かったら働いてもらいましょう」
二百人の兵士が加わり、基地としての機能を発揮できる陣容となった。
ロータスに、在宅での軍の最高顧問をお願いし、司令官にレグルスが就いて、サルガスが補佐となった。そして、他の十剣士は、情報収集の為、世界へと散っていったのである。




