追放—新たな天地①
ユウキとステラは、御前試合から数日経ったある日、婚姻届けを提出した。誰一人として祝福されなかった二人だが、晴れてこの世界で夫婦となることが出来たのである。
だが、結婚したと言ってもそれは書類上の話であって、二人は一緒に住むでもなく、その生活に何の変化もなかった。
そんなある日、二人に議会への招集通知が届いたのである。
議事堂には、女王始め、各議員、軍の幹部などの錚々たるメンバーが集っていて、ステラたちが姿を現すと、冷たい視線と、あちこちでひそひそ話が起こった。それを打ち消すように、女王アンドロメダが口を開いた。
「ステラ、先日貴方達の婚姻届けが出されたようだけれど、これはどういう事なの?」
「陛下、勝手な事をして申し訳ありません。でも、これは戦士としての約束です。反古には出来ません!」
ステラが、毅然として言った。
「貴女はこの国の王女なのよ。あなたが一民間人と結婚するという事は、皇位継承権を失うという事なのよ、分かっているの!?」
アンドロメダの、良く通る声が場内に響いた。
「お母さま、何と言われても私の意思は変わりません。この上は王女としての権利を放棄し、民間人として、この人と暮らしたいと思います」
言いだしたら聞かない、わが子の性格を知悉しているアンドロメダの顔に、一瞬諦めの色が見え、そして厳しい表情が作られた。
「そう、では、貴女の王女としての全ての権利を剥奪し、二人の国外追放を命じます。但し、軍特別顧問としての立場はそのままとし、引き続きネーロ帝国との戦争の支援は、軍と連携を取って行う事、従って十剣士の同行を許します。これは命令です。いいですね!?」
「陛下、謹んでご命令に従います。親不孝をお許しください」
ステラは何故か、この厳しい処分を予想していたかのように冷静だった。ユウキが、いたたまれなくなって口を挟んだ。
「陛下。私の事はいざ知らず、ステラへの罰は重すぎます。ご再考ください!」
「ユウキ、いいのよ。これは私が決めた事だから……」
ステラは、興奮するユウキを宥め、席に着かせた。
議員の中からも、厳しすぎるのではないかという意見が多く出たが、アンドロメダは、頑として受け付けず、二人の処分は決定した。
次の朝、十剣士を伴い、ステラ達は人知れず南の大陸へと旅立った。
ユウキは、ステラが何故こんな事を受け入れたのか分からなかったが、今一番悲しいのは彼女自身かも知れないと思い、深くは聞かなかった。
ステラ達の、国外追放のニュースは、その日の内に王国内に流れ、国内からは、ステラ復権への大規模なデモが起こり、国に激震が走った。ステラを慕う国民は多く、軍でも派閥を問わず抗議が相次ぎ、議会でも王女復権への動きが出始めた。
その事に心を痛めたステラは、全国民に向けて映像のメッセージを送った。
「この度は、私の我儘で国民の皆様にご心配をおかけして申し訳ありません。実は、夫、ユウキとは、異世界で出会ったのです。国は、この世界で無名の彼を、私の夫として認めないでしょう。ですから、今回、我儘を言わせてもらいました。私にとって彼は、それほど大きな存在なのです。
国を出て、今、南の大陸に居ます。核戦争の忌まわしきこの地は、既に放射能は消えて楽園となっています。此処に、ネーロ帝国に対抗する一大拠点を築き、今まで以上にライト王国の為に戦うつもりです。
必ず、この戦争を終わらせ、ライト王国に帰ります。暫く留守にしますが、私を信じて待っていて下さい。
今、国が乱れれば、ネーロ帝国の思う壺です。私の事で、これ以上の講義は控えて下さい。
心を一つにして、ネーロ帝国打倒に向け戦ってまいりましょう。大好きな国民の皆様、私は今、幸せです」
このメッセージが、その日の内にライト王国全域に流れると、一切の苦情、デモはピタリと止んだ。
ステラ達は、南の大陸のサウスシティに下り立って、ユウキが見つけておいたエイリアンの宇宙船の前までやって来た。崩れた山肌から顔を出している部分だけでも高さは五〇メートルはあった。
「これは、何万年も前にやって来たエイリアンの宇宙船だと思います。何か使える物があるかも知れませんので、この宇宙船の内部を皆で捜索しようと思います」
ユウキが先頭に立って、宇宙船の中へ入っていった。一同は、見慣れぬエイリアンの宇宙船の内部を興味深そうに見ながら、彼の後を追った。
彼らが、エレベーターに乗って最上階の部屋に入ると、そこは操縦室のようで、正面に大スクリーンがあり、中央部には椅子と一体になった扇形の操作デスク盤が置かれてあった。壁側にも見た事もないような機器が並んでいたが、どれも電源は入っていなかった。
「ユウキ、メインコンピューターにアクセス出来れば全てが分かるんじゃないか?」
サルガスが操作盤をいじりながら言った。
「うん、照明もエレベーターも動いているから、メインコンピューターは今も僕達を認識しているはずだ。ともかく、このシステムを起動する方法を探そう」
ユウキが後方を振り返ると、操縦室全体を見渡せる一段高い所にも操作デスク盤がある事に気付いた。彼がその上に上がってみると、指揮官用らしきデスクがあって、そこには、手の平を模ったタッチパネルがあった。
「あった! きっとこれだ!」
ユウキの声に、一同が指揮官デスクに集まって来た。




