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戦士ステラ   作者: 安田けいじ
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御前試合

いよいよ、スーパースーツ登場

 月日が経ち、御前試合のその日がやって来た。


 御前試合では、ビームサーベルやエネルギー弾等の武器を、ダメージの少ないように調整されたノーマルスーツを使う為、負けても死に至る事は無い。女王派、議長派の各十名がトーナメントで戦い、最後に残った者が、特別試合としてステラと闘う事が許されるのである。


 若き戦士達は、勝てば、憧れのステラと手合わせしてもらえるというので、予選試合は大いに盛り上がった。予選を勝ち抜いたメンバーを見ると、女王派は若手中心で、議長派は中堅の実力者が名前を連ねていた。


 女王アンドロメダが入場して貴賓席に座ると、御前試合の幕が開いた。


 第一試合に出場したユウキは、勢い込んで試合に臨んだのだが、支給された戦闘スーツは、エネルギー弾の照準がずれており、俊敏に動こうとするとエンストを起こす、ポンコツだった。


「くそっ、何なんだ!?」


 ユウキは一瞬心を乱したが、動きの悪いスーツで空中戦をするよりは、地上で相手の攻撃を防ぎながら、チャンスを待とうと、地上に降り立った。


 彼は、空からのエネルギー弾攻撃を、走り回って避けながら、こちらもエネルギー弾で応戦した。エネルギー弾発射装置のズレた照準を、感覚で修正してゆくと、辛うじて相手を捉えることが出来た。


 互いに決め手に欠ける戦いが暫く続いたが、痺れを切らした対戦相手が、ビームサーベルを翳してユウキ目掛けて突進して来た。


 上空から猛スピードで突っ込んで来る相手が眼前に迫った瞬間、ユウキは、何を思ったのか戦闘スーツを脱ぎ捨て、素手でサーベルを握り直した。


 考えられないユウキの行動に、相手の剣が泳いだ一瞬の隙に、彼は、相手のサーベルを飛び上がり様に跳ね上げ、返す剣で渾身の一撃を相手の後頭部に加えたのである。相手は、そのまま地上に激突して動かなかった。


 それは、一瞬の出来事だった。軍服姿で、素手にサーベルを持ったユウキの姿を見て、観客はどよめいた。威力を弱めた武器とはいえ、スーツが無ければ命の補償は無かったからだ。


「勝者、ユウキ少佐!」 


 アナウンスが流れると、歓声が上がった。



 ユウキは、試合が終わると審判を務めるレグルスの所へ行き、訳を話してスーツを調査するよう頼んだ。


「やはりそうでしたか。私も不審に思ったので、既に女王派の使用したスーツを調査しているところです。すぐにも判明するでしょう。

 それにしても、ユウキ殿の身体能力は凄いですねえ、人間の動きとは思えません。次の試合は新しいスーツと交換しますから頑張ってください」


「ありがとうございます」 



 女王派のメンバーの纏うスーツは一様に動きが鈍く、一回戦を終わってみると、女王派で残ったのは、ユウキ一人となってしまっていた。


 一方、デネブは、二回戦から、ユウキのスーツが普通に動いているのを不思議そうに見ていた。それは、女王派のスーツに工作したのは、他ならぬデネブの指示によるものだったからだ。


 戦いは進んで、ユウキとデネブが順当に勝ち上がり、決勝戦は二人の対決となった。


 決勝戦の前の待機時間に、ユウキの元にサルガスがやって来て、耳打ちした。


「女王派のスーツからウイルスが検出された。恐らく、デネブの仕業だろうが、まだ確証は出ていない。負けるなよ」



 デネブと対峙したユウキは、こいつがステラをいじめた奴かと、彼を睨みつけた。デネブは、スーツを無力化する作戦が失敗したにも拘らず、ユウキの前で不敵な笑みを浮かべていた。


「大佐、色々汚い事をしているみたいですが、そんなに、自信が無いんですか?」


 ユウキが、皮肉たっぷりに言うと、


「黙れ! 勝ってからほざけ!」


 激昂したデネブの鉄拳がユウキのマスクに炸裂し、彼は数メートルも飛ばされた。

重くて速いデネブのパンチ力に驚く間もなく、倒れたユウキに、尋常でないパワーのエネルギー弾が容赦なく打ち込まれた。


 デネブは、ルールを破ってスーツの性能を勝手に上げていたのだ。


 スーツの性能が違いすぎて、まともに戦っても勝ち目はなく、ユウキはデネブの執拗な攻撃から逃げるしか無かった。


 彼は戦いながら、どうすればノーマルスーツで最高の力を出せるかを考えている内、全速力の飛行から体当たりすれば、相手にダメージを与えられるのではないかと思い至った。

 既にユウキのスーツは、デネブのエネルギー弾を受け過ぎて、限界を越えようとしていた。彼は、この一撃に勝負を賭けるしかないと、気合を入れた。


「貴様如きに負けてたまるか!!」


 加速したユウキは、デネブの攻撃を必死にかわしながら、間合いを取り、威嚇弾を放つと、身体をスクリューのように回転させてデネブ目掛けて突進した。


 「何!?」と、デネブがエネルギー弾で応戦して、限界を越えたユウキのスーツは悲鳴を上げたが、構わず突っ込んだ。


 「ウグッ!」ユウキの体当たりを真面に受けて、デネブは呻き声をあげてバランスを崩した。

 その機を逃さず、ユウキが彼の顔面に至近距離からエネルギー弾を炸裂させると、デネブは仰け反って動きを止めた。更に、ビームサーベルを抜いて、デネブの顔面に止めの一撃を見舞うと、本来壊れるはずもないデネブのマスクにピシッとヒビが入り、彼は落下していったのである。


 ユウキが地上に下り立ち、倒れたデネブのマスクをしたたか蹴りつけると、マスクが壊れ、恐れ戦いたデネブの顔が現れた。


 女王派の兵士達から歓声が上がり、ユウキは拳を突き上げてそれに応えた。



 最後に、特別試合として、ステラとユウキが相対した。


「ステラ様、私が勝てば、私の妻になってくれるんでしょうか?」


 ユウキの言葉に場内がどよめいた。確かに、ステラに勝ったら、妻になるという約束は、デネブとの間で交わされていたが、その事は一部の人しか知らない話である。


「あら、私に勝てると思っているの? ……そうね、私に勝ったら、貴方の妻になってもいいわ」


 観衆は、ステラが何を言いだすのかと、唖然として聞いていた。二人は、自分たちの関係を発表するのに、今が最適のタイミングであると考えたのだ。


「では、最高レベルのスーツでお相手します。力は無制限で!」


 ユウキが、孔雀のコバルトブルーのスーツを纏うと、


「望むところよ!」


 ステラも、新型の孔雀のサファイヤブルーのスーツを纏って、ユウキに突進した。


 二人の動きは速くて細かな動きは見えない。激しくぶつかり合うビームサーベルが閃光を走らせ、その衝撃音が時間差で聞こえ、無数のエネルギー弾の炎が二人を包んだ。観衆は、その凄まじさに、腰を抜かす者さえあった。


「あの二人、楽しそうに戦ってるような気がしますねえ」


 レグルスが、微笑ましそうに隣のサルガスに言った。


「そうですかね、私にはよく分かりませんが。しかしこんな戦いめったに見れるものじゃないですよ。どっちが勝つんでしょうね」


 サルガスも、目を輝かした。


 ステラは、サーベルを打ち合いながら、ユウキがまた一段強くなったと感じていた。


「このままじゃ、なかなか決着つきそうにないわね。次の一撃に全てをかけるわよ。いい?」


「望むところだ!」


 二人は、距離を取って空中に静止し、ビームサーベルを振りかざすと、高速で激突した。キーンという音と共に、光が二人を包んだ。


 その刹那、ステラのサーベルが弾き飛ばされ、体勢を崩した彼女をユウキが抱きとめると、期せずして大歓声が湧き起こった。



 地上に下りた二人は、互いの健闘を称え、固く握手をして観衆に手を振って応えた後、女王陛下に向かって敬礼して下がった。


 勝負はどちらが勝ったのかは、誰も口にしなかった。それを超えた感動を、二人の戦いはもたらしていたのである。


 後日、デネブは、不正を働いた事が明らかになり、役職を剥奪され軍を追放された。


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