66
大変長らくお待たせしました
投稿が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
応接室まで案内されるまでの道のりだが…
やはり、お屋敷というだけはある。
こう色々と並んでいると、さながら美術館の様な雰囲気が醸し出されるしな。
あと…なんとなく、何処かで見たような絵画な気がしないでもない。
この…集団で魔物の素材を拾っている絵とかは特に。
これが落ちている穂だったらと思うと、な?
まぁ、さっぱり芸術には興味のない俺だ。
どれだけ見ても、通路をただ歩くだけの空間にしない工夫なんだなぁくらいにしか思わないが…
「ほぅ…」
「これは…!?」
などと時々、美術品に目移りさせては感嘆の声を漏らすゴルドフには何か分かるのだろうか?
今までの行動から、特に意味なくやっている様な気もするが…
「何か分かるのか?」
「いやなに、この色彩に画材の質…」
そこまで何か考え込むような仕草をして一拍置いてから…
「何の変哲もない絵だな、と思っただけだ」
散々考えて、これかよ…と、そう思わなくもない。
と言うか結局何も考えてなかったのかよ。
しかもそれを聞いた、先導しているメイドの雰囲気というか…動きが変わったんだけどさ…
こう…ただでさえ隙が無い動作から、いつでも動き出せる様に警戒してる動作っていうの…?
「なぁ?もう少しユーモアのあるボケをしてくれない?」
「なんかさっきから辛辣じゃないか?」
「自分の行いを省みてはいかがでしょうか?」
「何を!?では売れば良い値が付くとでもいえば良かったのか?」
「…そういうとこだぞ」
なぜ次点で他人の家の物を売る発言を考えているのだろうか?
とにかく空気が悪い。
面倒だからやめてくれないかな…
俺は険悪なムードとシリアスが嫌いなんだ。
加えて…この位置関係だ。
先導するメイドに俺、ゴルドフと並ぶ順…
喧嘩は間に俺を挟まない位置関係でやってくれ。
「というか、どんな事を言えば満足するのだ?」
「…『この絵は触れると吸い込まれそうだな!』とか『額縁の装飾が導越の神殿の彫刻と同じものではないか?』とかあるじゃん?」
ちなみに後者はマジで適当である。
一度二度見た程度で装飾なんて覚えてねぇし。
「吸い込まれる…トンベイの仮想世界画の事ですか?」
「…なんだそれ?」
何となく逆から読めば分かりそうな名前だが一応聞いておく。
「トンベイという画家の描いた絵には、空想の世界に引き込まれるだけの魅力があるという話ですよ」
「へぇ~…」
アップデートで近々お披露目されるイベントという事だろうか?
期間限定イベントで別マップに行ける的な感じの奴。
「気になるのであれば…その一枚が近々、北の街の展覧会に出るそうですよ?」
「なるほど、それは気になるな」
展覧会の形にすれば入場料で制限を掛けられるか?
それに展覧会を開催する為のクエストもあれば前夜祭として盛り上がるだろう。
展覧会を開催する為の展示品を作るクエストとかだったら嫌だが…
「是非一度見てみたいもんだ」
「…なぁ?ファルマ?」
「どうした?ゴルドフ」
「余は、余が分からない話など面白くないのだが…」
「じゃあ暫く黙ってろ」
「色々と納得がいかん…」
しかしゴルドフも中々、一癖ある奴だな。
めげないガッツといい、周りの空気に流れていかない自由さといい…
とにかく、俺はこれがゴルドフへの正当な扱いだという事にしておこう。
現に、俺の心情を知らずにこの後もギャーギャーと騒いでいた訳で…
当然、ほどほどに相手をしつつ先に進める。
「さて、こちらでございます」
「案内感謝する」
まぁ、そんな事があったが特に大事になる事もなく応接室まで着いた。
先導して貰ったメイドの優雅な動作で扉が開かれ、俺たちは中に入っていく。
「おぉ、お待ちしておりました」
「貴方がセバスさんか?」
「えぇ、そうです。あなたが依頼を受けて下さった…?」
「そうだ、ファルマだ。本日はお目にかかれて光栄だ」
そう言ってお互いに握手を交わす。
…一見して細身な壮年の男性だけど、その腕には確かな力が篭っている。
本気を出されたらこのまま握りつぶされるまでありそうだ。
俺もまだまだレベル…というかSTR不足だって事だな。
「いえいえ、私はしがない執事です」
「本当にしがない執事が領主の館で仕事なんぞ出来ないだろうに」
「これはこれは…確かにそうですな」
洗練されたというか、隙のない所作で着席を促されたので座る。
間髪入れずにティーカップ、良い香りを巡らせるお茶が差し出される。
「さて、貴方は門前払いされに来る方とは、何か違うとは聞いておりますが…」
「あぁ、住所不定の自称自由業の連中とは一緒にしないでくれ」
ゴルドフが何か凄む様な目付きでこちらを見ているが気にしない。
貴様はこの場では借りてきた猫のように大人しくしておれば良いのだ。
「ではどのように違うか教えていただけますかな?」
「あぁそうだな、まずは…」
さて、取りあえずは農家兼ハーブ栽培家兼新入り薬師として…
依頼内容となる特別な薬品の確認と行きますか。
GW前にも一話上げる予定です。




