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とまぁ、そんなこんなでたどり着いた訳だが…
「おい!止まれ!」
「用事があるなら、先に要件を述べて貰おう!」
案の定、門番に止められた。
こう、持ってる槍で地面を叩いて警告してくる。
まぁ、正体不明の人物が堂々として近づいてくればそんなもんか。
ただ…二人で槍を交差して、道を塞ぐとかそんな感じじゃないのか…
俺の理想の門番はここには居ないらしい。
「やーやー、我こそは…」
「ギルドから依頼を受けて来た!!」
「ほう、貴様が、か!?」
「…下に名を轟かす逸…」
「セバスさんは居るか?居ないならまた今度来る!」
「いや!いるはずだ!」
門番の一人が顎に手をあて、少し考えるようにしてからそう答える。
それから、二人で目配せをした後…
「願わくば、此処の…」
「だが依頼とあっても、このまま通す訳にはいかぬのだ!」
「我々とて!何処の誰とも分からない者を通す訳にはいかないからな!」
「それもそうか、大変だな!」
「…さすれば、此度の…」
「理解してくれて助かる!」
明らかに敵意が抜けた雰囲気だが、それでも門番は門番か。
しっかりと身分提示を求めてくるとは…
こう…ステレオタイプな感じで職務に忠実だな。
さて、ここでエルフの懐剣を見せようとして…ふと手が止まる。
これでもいい様な気がするが…なんか求められてるのって違くね?
もっと別な物が必要な…?
…あぁ、そうか。
「あの、聞いてるか?ファルマ…?」
「これなら良いか?」
そう言って取り出したのは、土地の権利書だ。
求められているのは、身元が分かるものだからな。
自分がこの土地に住んでいるファルマだという事が分かればそれでいいんだろう。
「あぁ、これなら問題無い」
そして恐らく、これが大抵の人が依頼をキャンセルした理由じゃなかろうか?
多分、拠点を構えながら薬師をしている人はほぼ居ないんじゃないだろうか。
リコリスでさえも薬で稼ぎが出ているはずなのに、露店を使って売ってるみたいだからな。
まして俺くらいしか現状で栽培なんて出来ないし、拠点を構えて売るメリットは…?
精々、固定客を手に入れる程度だろう。
それも毎日同じ場所で露店をやってりゃ代用は可能だ。
その他、採取時間と作成できる量の関係も含めて露店で売れば十分なんだろう。
まぁとにかく、住所不定で自称冒険者兼薬師を名乗る奴だと通る資格が無いって事なんだろう。
「しかしもっと手軽な…住民票は無いのか?」
「ん?住民票?」
な~んて考えていると、ポロっと門番の片方からとんでもない一言。
なんか一気に俺の中のファンタジー要素が死に絶えた。
「役場で申請出来るぞ?」
「町での施設の利用も便利になるから早めに申請しておくと良い。」
現実感が足元からじわじわと染み出すように這い上がってくる。
やめろよ、急に現実っぽくなるの…
しかし、施設の利用に関しては気になるので今度行こうと思う。
「…成る程、今度貰いに行くわ」
「あぁ、次はそっちを提示してくれると助かる」
しかし、それがあればここを通ることが出来るのか…
随分と正解は近いところにあるもんだな。
「では少し待ってくれ、案内をよこそう」
「あ、いや待ってくれもう一つ要件があるんだ」
門番の一人が屋敷へ人を呼びに行くところを呼び止めつつ、エルフの懐剣を取り出す。
事態も一段落と言う事で、ちょっと申し訳ない気持ちがあるがな…
「ん…?これは!?」
「間違いない、エルフの!?」
「エルフ!?なんだそれは!ファルマ!?」
「西の森のエルフ、アルベルトの依頼を受けて来た!」
ちょっとだけ、武器を取り出したと敵対されるかもしれないという考えがあったが、杞憂だったか。
まぁ、さっきのゴルドフみたいな事はそうそう起こらないだろう…
で…装飾された短剣と鞘を見て、驚いているのは良いんだが…
「領主アイン様にお目通りを願いたい、出来るか?」
「そ、それは…我らの立場ではどうにも…」
「とにかく取り次いでくれ、頼む」
「ハッ!」
短くそう答えた一人が、颯爽と屋敷の中へと入っていく。
もう一人の方は少しだけ気まずそうにしながら、ビシッとした態度で周りを警戒している。
まぁ、住所不定冒険者かと思ったら普通に町に住んでて、それでいてエルフの使いだもんな。
俺としてもちょっと気の毒な事をした様な気がするが…
いやぁ~、役得役得。
「ところでゴルドフ?」
「なんだ?こっちの質問にも答えずに…」
「さっき、ず~っと後ろで散々言ってた奴、最初からもっかい言って?」
「散々皆で無視した挙句それかぁ!!」
いや、名乗り口上は格好良く決まっていたとは思うんだぜ?
ただ、俺よりも前に出てやらなかったり、ちょっと声が小さいからさ…
相対的に俺たちの声が大きすぎたせいで話が入ってこなかったんだ。
と言うか入る方法にアテがあるって言ってんのに…なんで堂々と口上を垂れ流してたんだろう?
「所で、そちらの方は?」
「ん、あぁ同行者だ」
「余もこの一件で立ち入らせて貰うぞ!」
「一応、身分は保証するぞ?
なんせこれから毎日、一日一食の昼寝なしでこき使う予定だからな」
「なんだそれは!?聞いてないぞ!」
「今言った事だからな」
どのみち利用される側を望んだのはコイツだしなぁ。
現在進行形で利用させて貰おう。
「あ~…なんと言うか、大変ですね?」
「そうであろう?だが余は幾千の…」
「いえ、貴方では無く…」
コイツ…!?NPCの癖に分かってるじゃないか…!!
とまぁ、そんな感じで暫くゴルドフに構ってあげていると…
「お待たせしました」
「そちらがファルマ様でしょうか?セバス様がお待ちです」
先程駆け出していった門番と一緒に、一人のメイドが付いてきた。
こう、ちょっと気品を感じさせるというか…動作になんか優雅さを感じさせるな。
「中までご案内致します」
「あぁ、頼む」
「あ、おい!余も行くぞ!」
「勿論だろ、さっさとついてこいよ」
そんなこんなで二人の門番に見送られながら、屋敷へと向かうのだった。




