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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
付属編成 二両目

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423/437

#423

おみくじに記されている言葉というのはその下に書かれた文の方が重要なのは言うまでもないだろう。


「どれどれ…」


引いたおみくじにおいて運勢は吉であったスフェーンは、いいのか悪いのかがよくわからないまま下の欄を読んでいく。


「運勢…」

「願事:叶うといいね」

「金運:自惚れるな、待ち人:諦めろ」

「馬鹿じゃないのか?!これで吉ってマ?」


とてもまともなおみくじとは思えない内容に絶句するスフェーン。


「商いなら良し」

「良しじゃないよ!」


スフェーンはおみくじの結果に思わず叫ぶと、サラはおみくじに書かれた内容に苦笑気味に読む。


「あら。仕事、騒ぐと損だって」

「なっ…!?」


サラの読み上げに絶句するスフェーン。その反応に思わずサラは吹き出して笑ってしまった。

なかなかな結果のおみくじを片付けて二人は神社を改めて少し高い拝殿から俯瞰する。


「神職者の誰もいないのね」

「御朱印はあるみたいだけど、人がいないんじゃあね…」


サラはそこで石畳の横に設置された掲示板を見て言った。


『一応、ネット通販でこの神社のお守りなどは販売されているようですよ』

「お守りも通販かいな…」


そこで苦笑しながら視界に映し出されるウェブサイトを見る。確かにこの神社の通販だが、なんというか…いまいちありがたみを感じられないのは気のせいではないと思う。


「どうかしたかしら?」

「ええ、神社のお守りとか御朱印が通販で売ってるって話」

「あぁ…最近は多いわよね。そういう神社」


少し苦笑気味に彼女は見てきたので、おそらく思っていることは同じだろう。よかった、同志がいたようだ。


「正直、やりたいことは理解できるけどね」

「まあ神社も税金支払わなきゃならない時代だからねぇ」


昔から神職関係というものは自然と税金の融通が適用されている場合が多かったりしているが、企業という金の亡者は知ったことかと言わんばかりに神職関係者からも平等に税金を徴収している。


「聖書だと、税金の徴収者って極悪人扱いらしいね」

「まぁ、実際一部の人間からしてみたらそんな感じなんじゃないかしらね?私も嫌いだし」

「みんな嫌いだよ税金は」


スフェーンはそう言って苦笑する。この地域も国ができたことで税金が徴収されることになった。

今までは企業が契約で資金をしに払うことで議席、つまりは発言力を有していたところを今は『国籍』を与えられた『市民』から税金という形で徴収を始めた。


「この前また暴動があったって?」

「そんなのどこでも起こっているわよ」


サラはさらりと返すと、自分知り得る範囲で起こっている話をする。


実家(ベガスシティ)はこの前に議会決議で昔のまんまでやること決まったけど、下手にパシリコ側だった都市は税金払っているのに企業は何もしないって親の仇みたいに殺し合ってるって話」

「うわぁ…治世が下手くそにも程があるでしょ。それ…」


南北戦争で『国』ができて久しい現在。国境線が引かれたとしても、未だ企業支配の強い地域は混迷を極めていた。


「まあ、こっちもこっちで自然主義者たちが革命起こそうとしているからあれなんだけどね」

「何それ。共産主義者(コミュニスト)?」

「実際それに近いし、一部じゃあそう呼んでる」


資本主義の対局にあり、資本家や企業の敵としても認知されている共産主義。共有財産は全て国が一括管理すべきという自然主義の考え方と似通っており、時折両者は結託していることが確認されている。


「なるほど、共産主義者はいつの時代も弾圧の対象だしね」

「ええ、企業の敵は民衆の敵になるもの」


サラはそこで神社の拝殿の横にあった門の前に立つ。


「おぉ〜、この先は本殿なのね」

「年に二回しか行けないそうよ」


奥に見える小島を見ると、スフェーンがその横で立て看を読み上げた。


「ああ、その二回だけ人が来るってことかしら」

「そういう感じのようね」


静かな神社。本殿がこの先にあるので、鳥居もこの橋につながるように設計されていた。


「…隣から海に出られるけど行く?」

「そうね。そろそろ行こうかしらね」


時計を見て時間を確認したスフェーンが聞いたので、サラは頷くと鳥居を出て一礼をすると神社を後にする。


「海のそばだからてっきりこっちが海神だと思ったんだけどなぁ」

「そこは不思議よね」


階段を降りて先にスフェーンが砂浜に立ってサラの手を取ると、地面に降りて海岸沿いを見る。


「まさか橋の底板が抜けてるのは予想外だったわ」

「まあ詳しく調べなかった笑しも悪いけどね」


そこで海の上に架けられた鉄筋コンクリート製の橋を見上げる。海岸沿いには多くのテトラポッドが敷設されていた。


「見て、カニがいる」

「子供じゃないんだから…」


足元を見たスフェーンが指を差すと、サラは呆れた様子でため息をつく。海岸沿いは潮の満ち引きの影響なのか汽水の小川が形成されている。そして海岸沿いには藻か海藻か、素人目では分からないがそういう類のものが砂の上で干からびている。そして砂浜を見ると、先ほどスフェーンが言っていたカニを探そうとしたが、老眼のせいなのか見当たらない。


「…どこにいるの?」

「老眼?」

「とっくの昔にそうだよ!」


サラは老眼鏡を取り出して足元を見ると、そこではっきりと小さなカニが横走をしているのを見つけた。


「あこれね。ちっさ」

「んなイソガニサイズじゃないんだから…」


スフェーンは苦笑しながら、流石によく見えていると思った。


「しかし、これだけ日差しが強いと寝日焼けしそうね」

「ええ、海からも反射するからきついわよ」


スフェーンの言葉にサラは頷くと、徐にスフェーンは手から小型ドローンを取り出す。


「写真、撮ろうか」

「良いわよ」


そこでドローンの小型ローターが回って空に上がると、内蔵されたカメラがこちらを向き、スフェーンの視界にドローンの映像が映り出される。


「…よし」


そして少し思考操作でドローンを良い角度まで移動させると、二人は自撮りを行う。


「3、2、1…」パシャ


そしてちょうど後ろの本殿と橋が映る角度で写真を撮り、その後にドローンは高度をやや上げて広角で写真を撮る。


「よしっ、良い写真」

「レパートリーが少ないわね」

「あら、昨日撮った写真も実はあったりするのよ?」

「嘘でしょ?まともな写真じゃないわよ」

「あら、意外と良い写真だったりするのよ?」


そう言いながら彼女は携帯に収められた写真を見せると、サラは怒鳴った。


「こんなの荒地の魔女じゃないのよ!」


そこでいつの間にか撮影されていた自分の写真に地団駄を踏みそうになるサラ。


「まぁまぁ。まともな写真もあるから」


そう言って彼女は軍警察の装甲車を見つめている写真やうどんを食べている時などの写真も見せると、それに気分を良くした。


「後で送りなさいね?」

「ええ、もちろんですとも」


完全なプライベート写真であるので、これが表に出ることはまずないが、貴重な思い出であるのでサラは少し口角が緩みそうであった。


「さて、そろそろ次に行きますか」

「了解。次はどこに?」

「ちょっと遠いけど、良い場所」


そう言い、再び戻って階段を登り始める二人。そのまま駐車場にとめたバイクに戻ると、そこでは日陰に隠れたバイクの姿があった。


「ふむ、流石に昨日と同じことになならないわね」

「同じミスを連日でやったら流石に無能でしょ」


スフェーンはそう言いながらバイクに跨り、エンジンをかけてエーテル機関の調子を確認する。


「…うん、よし。出せるわよ」

「案内よろしく」


サラもエンジンがしっかりと動いているのを確認すると、慣れた手つきでヘルメットをかぶって後ろに座り込んだ。

そして駐車場を出て道路に出ると、再び線路沿いの道路を走る。


「ちなみに聞くんだけど」

「何かしら?」


その道中でスフェーンはサラに聞いた。


「軽量化でなんの機能を省いたの?」

「ああ、それね」


サラは質問の意味を把握すると、彼女を囲んでいた腕を見る。


「まず腕の電撃機能。あと人工筋肉と循環液の量ね」

「ああ、あの装備ね」


そこでスフェーンは脳裏で電撃を与えるあの腕を思い出す。完全オーダーメイドの一品で、見事に彼女に適応していたことを思い出す。


「まあ、それでだいぶ抑えられるから。今のこの腕はほぼ骨格と人工筋肉だけで通信装備も取り外しちゃったわね」

「なるほどね」


二人はそんな話をしながら段々と海から離れていく。


「海ってことは…この時間ならサンセット?」

「ははは、大当たり」


スフェーンはサラの予想に頷いてバイクを走らせる。現在、時刻はお八つ刻。周りを車や同じバイクが走り去っていき、途中で鉄道とも別れて山間の道を走っていく。


「サンセットか…」

「見たことは?」

「いくらでも。まあそういう良い景色のところって大体、ホテルがあるものだし」

「なるほど」

「カジノの立地でもそういう場所は選ぶわね」

「まあ、見てくれが重要になるものね。そういうレジャー施設は」


スフェーンは理解した様子で頷くと、県道の二車線道路を走る。比較的ローカル(田舎)であるこの地域はこの時間になるとやけに車通りが増えたような気がする。


「この先に有名なビーチがあるんだって」

「なるほどね」


サラは頷くと、二人は途中で休憩をしながら山を越えにかかる。


「しっかし山が多いわねこの地域」

「まあ仕方ない部分もあるんじゃない?」


道を上下に上り下りしている現状にサラが呟いて、スフェーンは隣で苦笑しながらコーヒーを飲む。


「さて、この先に目的地があるわ」

「了解。…何気にこういうまともな観光は初めてかもね?」

「むしろ今までが刺激的すぎたの」


少なくとも治安官の説教案件ばかりしてきた過去を振り返って表情が引き攣るスフェーン。彼女が誘うと碌なことにならないのはこの人生経験で学んだ重要なことである。


「よっしゃ」

「行きましょうか。最後の目的地に」

「了解」


サラは笑みを見せると、スフェーンも少しそれに応えるように微笑んでからバイクのスロットルを回す。


「おぉ。海が見えるわね」


そして山を越えると、そこですぐに海が遠くに見えたので、目的地が近づいていることを確認した。

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