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TS若返り傭兵は旅をする  作者: Aa_おにぎり
十一両

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241/432

#241

『ーー本日、政府より全国に対し戒厳令が発令されました。期間は……の二週間となり、その間は許可のない外出は拘束の対象となります。また外出申請は……』


政府は赤柳やその国で連鎖的に起こっている戦時難民救済法に関するデモ活動、並びに急増する暴行事件に対し戒厳令を発令。国軍と軍警察の投入を決定し、全土にて警戒態勢が敷かれた。

戒厳令の発令期間は今行われている緊急国会が閉会するまでの二週間。それまで国民や外国人に対し昼夜を問わない外出規制を宣告。

外出を行う際は事前に指定されたサイトにて個人情報の入力をした上で申請を行う必要があった。


「あーあー、大変なことになって…」

『むしろこれは想定された事態では?』


車内でスフェーンは言うと、ルシエルがそう返した。

先日、運輸ギルドが増加する負傷者を前に窓口の閉鎖を敢行。それによる経済的損失や、増加した運送業者や運び屋達の負傷を前に政府に一報を入れた瞬間に戒厳令である。


『予め準備がされていたとしか思えないような速度でした』

「まぁ、あんな暴動があったから準備していたのかね?」


そんなことを思いながらスフェーンは貨物ターミナルの一角で煙草を咥えて吸っていた。今日は指名依頼が入り、近くの街までコンテナ運送を行う予定だ。


昨日の負傷者達は、近場の診療所や駆けつけた病院列車に収容されて昨日の内に捌ききっていた。そのため今も留置線には運輸ギルドからの要請を受けて駆けつけた軍警察の病院列車が待機していた。

最終的に二編成が駆けつける大騒ぎとなっており、一本五〇両編成の車両に大量の患者を内包していた。


『さぁ、私にはなんとも…』


ルシエルはそこまで調べる必要がないと判断して戒厳令が出た瞬間に外出申請を取っていた。


「さて、取り敢えず仕事をしますかね」


そこでスフェーンは遠くからクレーンによって運ばれてきたコンテナを見て吸っていた煙草を地面に放り捨てると列車の運転台に乗り込んだ。






赤柳は戦前も戦中も大きな戦火に巻き込まれることはなかった。

この国は建国後も南北戦争には厳正な中立を選んだ事で軍警察の庇護下の元に強力な国軍整備に喘いでいた。


『敵視認しました』

「んじゃ、一発かましますかね…」


上空を飛ぶドローンの偵察の元、スフェーンは運転席に深く腰掛けて目を閉じる。

指名依頼や運輸ギルドで張って獲物を探している野盗の仲間たち、この業界では「ウグイス」と言うあだ名で言われる彼らから通報があったのだろう。この前、怪しいと思った人物を軍警に通報したばかりだと言うのに…。


『支援攻撃を行います』

「うん、頼んだ」


そこでルシエルに返すと、そこで彼女の視界は全てが情報化された電子の世界に切り替わる。


『えーっと、近くのエーテルは〜?』


レッドサンと言う嘗ての強者の意識をインプットし、肉体に合わせて作り変えられたこの精神はエーテルと繋がっている。

あの海で何があったのかはまるで定かではないが、自分がなぜここに生まれたのかは永遠の疑問だ。

いずれ目下の諸問題が解決したあとにエーテル病のものと並行して研究に努めようと思っている。


『…見つけた』


そこですべてのエーテルと接続した今の自分が認知しているこの空間で目的のエーテルを見つけた。しかもお誂え向きに一人乗りが基本のオートマトンがある。



ーー乗っ取りやすい。



『失礼』

「がっ…!?!?!?」


喉元を燃料タンクも兼ねた座席の背中から一突き、次に心臓にもう一突き。そして最後に脳天に一突き。

三本のエーテル結晶のつららがオートマトン乗りの体を貫いてその野盗は死亡する。


『アンドロイドが操縦をしていたのか…』


意外なオートマトン乗りがいたものだと思いながら、貫いたつららが変形をしてアンドロイドの体を包み込むように広がる。


「ふぅ…」


そしてその包まれたエーテルが徐々に繊細な肉体に形作られると、そこから顔から服まで完璧に再現された若き長身姿のスフェーンの姿があった。違うのは頭上の角の有無と群青色の双眸だった。


「わぁ、やっぱり見た目はそのままね」


彼女は今までで一度も使ってこなかったモード・アザエルを使用していた。

群青色の双眸では、虚空やエーテルからエーテルの天敵とも言える水を生み出し、それを使って自分の似姿を作り出すことが出来た。


『えぇ、その体は貴方の人形。記憶を平行させて情報を収集する事も可能です』

「んじゃあ、今日はそれの実験日と行きますか!!」


そこで彼女は敵から奪ったいまだ自動運転のオートマトンの操縦を手動に切り替える。


『ん?何か言ったか?』


すると無線が一瞬だけ開いていたのだろう、こちらに話しかけてくる野盗の一人がいたのでスフェーンは武器の引き金を引く赤いカバーを指で弾いて躊躇なくボタンを押した。


『はぁ…っ?!』


その攻撃に驚愕した瞬間、


ッーーー!


荒野に一本の光線が走った。戦術用エーテル・カノンだ。

その光線は野盗の数台の戦闘車両を蒸発させ、序でに余波熱で近くを走る装甲戦闘車に熱によるダメージを与える。


すでにはるか上空からエーテルが常に降り注いでいる今現在では全く意味のない話であるが、かつてこの空が永遠の蒼穹に覆われていた頃、エーテル・カノンは発射をするごとに空間がエーテルによって汚染される最終兵器のような扱いを受けていたらしい。


「背中がお留守ですよ!」

『なっ!誰だ貴様は!!』


するとそこで横を走っていた多脚戦車から驚愕した様子で驚いた無線が入ると、そこでスフェーンは作った分身で少し実験を行う。


「ふむ…」


少し意識したスフェーンはそこで多脚戦車の砲撃をジャンプで避けながら言う。

現在、彼女が内包している特殊能力。全て自分が名付けたサマエル・アザゼル・アザエル・マハザエルの四つの技能。それらを使った時の目の色に合わせてスフェーンがそれぞれ命名したその技能は、実戦での使い方をまだ模索していた。


「モードの併用は不可能か…」

『ジャンプした?!』

『馬鹿なっ!脚に負担がかかるぞ!』


驚く野党達の声は今の彼女には響かない。

野党達からしてみればつい先ほどまでオートマトンに乗り込む姿を見ていた仲間が、突然背後から奇襲し、尚且つ乗っている人は当の本人ではないという訳が分からない状況になっていた。


彼らに取って不幸だったのは、スフェーンと言う存在を前に喧嘩をふっかけたと言う事実だろう。これにより(彼女の中では)抵抗してその中で死亡事故が(強制的に)起こっても業務上過失致死で終わってしまうのだ。

長年の傭兵としての感覚として刷り込まれた一種の線引きであった。


『そうですね。現時点で武器格納庫が稼働した雰囲気はありません』

「了解…あんまり表でできない実験だから、こう言う時にうってつけだよね〜…」

『そもそも私としては列車強盗を実験台にしている時点で貴方の倫理観を疑いたくなります』

「そう?荷物を狙う奴らはどんな裏事情があろうと、敵は敵よ?」


スフェーンは淡白に今自分たちを襲ってきている野盗団を敵として認識しており、そこに躊躇はなかった。

これは傭兵としての根底にある意識の問題なのだろうが、彼女の場合は『守る対象』を中心に敵味方の判別を行なっており、野盗の襲撃に対して生殺与奪の権利は、確実に自分の手にあると踏んでいた。


『くそっ!どう言う事だよ!?』

『分かるわけねえだろう!!』


無線越しで怒鳴りあう野盗達。そんな怒号を前に容赦なく列車からも攻撃が通る。


『ぎゃあっ!?』


ある装甲車は列車防護用の対空ミサイルが命中して破壊。


『うわっ?!』


あるオートマトンは列車に搭載されたCIWSの30mmガトリング砲の餌食になって機体を銃弾が貫通する。

この武器、作ったのは遥か昔にここではない星である国に住んでいた医者だと言う。医者がこんなものを作ったのかと思うと苦笑せざるを得ないものだ。


『くそっ!!』


荒野の一角、襲撃を早々に諦めた野盗団は突如背後から襲った目の前のオートマトンに対し躊躇なく銃口を向けた。

元より野盗と呼ばれるものの大半は利益の為に集った荒くれ者の集団に過ぎない。最近は傭兵ギルドと呼ばれる組織が立ち上がり、傭兵に対する定義が固まった事で、傭兵と野盗には明確な区別が付けられるようになっていた。


『っ!』


ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!


持っていた30mm自動小銃の引き金を弾き、銃弾が発射される。

30mmの弾薬ともなると多様な種類の弾頭が用意されているものだが、彼等は最も安い銅でコーティングされた弾頭を使用していた。


「おっと」


その銃撃を滑るように避けながら持っていた自動小銃で反撃を行う。


ッッッ!ーーー

「ありゃっ!」


すると数発撃っただけで銃が沈黙。弾倉分の銃弾を使い切っていた。そこを逃すことはなく野盗は攻勢に出た。


『死ねぇっ!!』


そんな事を言いながら突っ込んでくる野盗達。いつも思うのだが、奴らはNPCのように同じことしか言わないのは何故だ?


「よっと」

『があっ!?』


そこでスフェーンは弾倉が空になった銃をそのまま持ち替えて突っ込んできた野盗のオートマトンに投げつけ、そのまま一瞬のうちに接近して鉄の拳を叩き込んだ。


壊れる双方の腕、元々オートマトンはこう言う使い方を想定しているわけではないので打撃攻撃には滅法弱かった。


『ぎゃぁぁぁあああっ!!!』


悲鳴を上げ、コックピットに金属片の雨が降り注いであらゆる場所が切り裂かれる。


『クソガァァァアッ!!』


するとそのスフェーンの機体の背中から別の多脚戦車が発砲。

発射されたキャニスター弾は背中のエーテル機関もろとも破壊すると、そこでスフェーンも致命傷の怪我を負うと、その肉体は溶けるように崩れてしまった。


ーー目的であった列車はすでに遠い場所まで逃げていた。






「ーーふむ、少し反応速度に問題があるわね」

『まだ慣れていないと言うこともあるのでは?』

「なるほど…じゃあ暫くは何度か練習する必要がありそうだ」


今の観測データを前にスフェーンは考えると、そこでルシエルもスフェーンの体に現れたこの四つの未知の特殊技能を前にデータの観測を繊細に行っていた。

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