第107話 開戦
皇銃夜は城の中で優雅にミルクティーを飲んでいた。
しかし、そんな日常は一瞬にして壊れるのであった。
銃夜が次にミルクティーを口にした時、禍々しいオーラや殺気、気迫を感じ取った。
そして、真隣にいた金髪の少女、ジナピーの通信魔法から『ガサガサ』と雑音が聞こえてくる。
その雑音に耳を傾けると、拾番隊隊長、イグニス・ランバートによるものだった。
「どうした?」
銃夜はイグニスに尋ねる。
『攻めてきたぜジューヤ。俺の第六感か感じとった』
「ああ、そうか、俺もそんな気がした」
そして、銃夜はジナピーの通信魔法で全部隊に通信をかける。
その通信魔法は全隊員の脳内に直接届くように設定してある。
「魔王軍が来やがった!!お前ら!心してかかれ!!俺が全て指揮を取る!しかし、これだけは言っておく!やばくなったら逃げろ!以上!開戦だ!!お前らー持ち場につけぇー!!」
『おー!』
全部隊が一斉に湧き上がる。
彼らの闘志は燃えたぎっているようだ。
「イグニス、魔王軍の到着は後どれくらいだ?」
『約1時間後だ』
「1時間後か……結構早いな」
その後、銃夜の指令で全ての部隊が配置についた。
壱番隊は本部(城)で待機。
弐番隊はヘリルスの門の前。
参番隊は弐番隊の前方。
死番隊は裏取り
伍番隊〜玖番隊は参番隊の前方に並ばせる。
拾番隊はヘリルス門付近で情報収集。
そして、伍番隊〜玖番隊のさらに前方に空間魔法が使える壱番隊隊員アンディ・ボグリアを一人配置。
さぁ、とうとう魔王軍のお出ましだ。
奥の方から徐々にその姿を現した。
幹部一人一人が多くの魔物達を従え、列を作ってこちらに向かってきている。
―――戦争の開始か。
全てをかけた全面戦争に開始の合図などいらない。
全ては勝つことのみに神経を注ぐ。
先手必勝か―――
「アンディ!!」
銃夜がその名を通信魔法を通して叫ぶ。
アンディ―――真っ白い綺麗な短髪の少女。
彼女が得意とする魔法は『空間魔法』。
どうやら銃夜が用意していた最初の作戦が実行に移されたようだ。
「了解ですっ!!」
瞬間、魔王軍と壱番隊、弐番隊、死番隊、拾番隊以外の部隊の足下に無数の白い魔法陣が出現した。
「こちらアンディ、これより転送を開始します!!」
そして、アンディの空間魔法によってみんなどこかへ飛んでいってしまった。
「ふぅ~」
アンディはその場で倒れる。
どうやら、魔力を全て出しきってしまったようだ。
刹那、死番隊のアサシンが目にも止まらぬ猛スピードでアンディを救出し、壱番隊が控えている城に運んでいった。
銃夜はそのボロボロのアンディを抱きかかえた。
「よく頑張った」
しかし、アンディは深刻そうな表情をした。
「い、いえ、」
アンディは魔力を全て出し切ってしまったため、若干息が荒く、言葉がどもってしまっている。
「まだ、です。敵の何部隊か、とりにがし、まし、た……」
「ああ、想定内だ。だから、弐番隊がある!」
銃夜はすぐさま、フリューゲルに通信魔法で交信する。
「フリューゲル、そっちの状況は?」
『ジューヤか。報告する、カーナ軍、ダース軍が残った』
(ちっ…一番ダルいやつらじゃねぇか……)
銃夜は親指の爪を噛みながらそんな事を考えた。
「フリューゲル……お前の部隊で殺れそうか?」
ここで、少し間が空いた気がした。
『ああ、問題ない』
「頼むぞ」
銃夜は他の部隊にもどんどん報告を聞き出していった。
【参番隊】……ユキヒメの部隊だ。
空間転移した場所は雪山だ。
ちなみにユキヒメの指定である。
なので参番隊は全員、氷耐性、寒さ軽減の装備を付けている。
敵は、ヴァンパイアのパンドラだ。
【伍番隊】……ゲミュートの部隊だ。
転送された先は、一面花畑な場所で、まさに楽園と表現す他ない。
これもゲミュートからの指定の場所。
敵は、サキュバスのマリシャス。
頭に角を付けていて露出している腹には淫紋が書かれてあった。
【陸番隊】……フリーデンの部隊だ。
転移先は、勇者候補選抜の時に使われたストリートダンジョンだ。
フリーデン曰く、戦いやすいそうだ。
同じく転送された敵は、ミノタウロスのギオラ。
頭は牛で体が人間、片手には金箔の槍を装備している。
【漆番隊】……シエルの部隊だ。
転送先は、以前銃夜が戦ったプリズンダンジョンだ。
ちなみにシエルが選んだ理由はなんとなくだそう。
こここそ、未来予知使えよ。
一緒に転送された敵は、ガーゴイルのギルファー。
ギルファーは赤黒い肌に鳥のような翼が背中から生えている。
爪や牙は鋭く尖っている。
【捌番隊】……リンジーの部隊だ。
転送場所は、シティダンジョンだ。
東京のような高層ビルがいくつもあるダンジョン。
敵は、メデューサのアッシュ。
真っ赤な目をしていて、下半身は蛇のように長く伸びている。
こちらにシュルシュルと舌を出して警戒しているようだ。
【玖番隊】……ガイストの部隊だ。
転送先は、ヘリルス内部にある闘技場だ。
かつて、ルーナとフランメンが戦った場所だ。
闘技場の周りは当然市民を避難させているし、鉄の柵でがっしりと仕切りも施している。
敵は、ゴーレムのステルベン。
巨大な体をもつ土でできた巨人だ。かなりゴツい見た目をしていて恐ろしい。
しかし、魔王本人は中々姿を現さない。
こちらの壱番隊と同じようにシーラ内部でその戦争を眺めているのかもしれない。
どっちにしろ目の前の敵をぶっ倒すだけ。
そうすれば、いずれ魔王が見えてくる。
―――戦争、開始。




