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不断のジャカ  作者: 吉良 善
臆病者の剣
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新たなる一歩

『青い力の持ち主』の捕縛、または抹殺を命じた人物の正体が

ウィルスター王国特命大臣オルスラウ・ハーディスであるという

ガラテアの推測は、レゼルクは驚きよりも妙に納得して

「なるほど、そうかもしれない」と感想を抱いた。

自分が軍に入る時もハーディスが

なぜわざわざ目を付けてきたのか不思議だったし、

右手が持つ青い力について一方ならぬ関心を示していたような気も、

今となってはする。

「奴というのがハーディスであるという想定で話をする。

 例の命令の遂行に関しては三、六、七部隊といった

 複数の隊が動いているようだが、

 ハーディスにそんな力があるのか?

 国王からの信頼を得ているようだし私兵も持ってはいるが、

 十隊の隊長までも動かすほどの権力はないように思える」

レゼルクが問うと、ガラテアは座った姿勢のまま両膝に両肘を置いて

ぎらついた視線を宙に向けた。

「国王の信頼、私兵、そんなもので従えられるような奴は

 十隊長の中には一人としていねえ。

 何かあるんだよ。

 動いている隊の頭の全員とは言わねえが、

 協力を取り付けられる要因になるほどの何かが」

「…同調、供与、あるいは脅迫…

 どういう形かわからないが、隊長のいずれか一人でも味方に付けていれば

 ハーディス打倒はさらに難しくなるな…」

今挙げた隊で言えば、長はヴァントレイ・ジェスパー、

ギエン・カーン、マステマ・マステリオンである。

いずれもたやすく御せるような顔触れではないし、

特にジェスパーは何があってもこういった企みなどに

与しそうな人物ではない。

もしハーディスが黒幕なのだとすれば、

一体どのようにして彼らを動かしているのか。

「一部隊の隊長が不在というのも、

 彼にとっては都合が良かったのかもしれないな」

ウィルスター軍の総大将たる第一部隊の隊長は、

しばらく前から不在である。

その理由は皆の知るところで、世界樹の守り手となっているのだ。

ある島にそびえ立つ世界樹には様々な力と秘密があり、

かつてミラストラ大陸では大規模な争奪戦が繰り広げられた。

やがて戦争が膠着し疲弊したミラストラ各国は話し合いの場を持ち、

とにかく争いを終わらせるべきと意見が収斂され

世界樹はどこの国の物ともせず、また何者も手を出せないよう

各々守備隊を派遣することとなった。

ウィルスターからは第一部隊から第五部隊までが交代で行っており、

今は各国の軍のトップを送ると定められた時期なので

第一部隊の隊長が隊の一部を率い任務に当たっている。

現地には太古より世界樹と共にあったとされる

デュプラルと呼ばれる妖精族もいるらしく、

ごくわずかながらミラストラ各地にも存在するそうだが、

レゼルクは目にしたことはない。

デュプラルという呼び名には古代の言語で『二重耳の者』という意味があり、

実際にこの妖精族は長い耳を左右に二つずつ持つ。

が、その呼び方は一方的なもので、

当の妖精族は自分たちのことをデュプラルとは決して言わず、

エクティナーと名乗っている。

「軍の中にいた方が色々と情報も得られると思っていたが、

 マステマに切り捨てられた以上そうもいかないか…

 君が伝言を受けた時の感触ではどうだった」

ガラテアと共にジャカらを押さえるよう指示したのはマステマだが、

伝言を受けて持って来たのはガラテアだった。

その彼が標的共々殺されかけ、

そうなることをマステマが知らなかったとは思えないので

自分たちは彼にとってもはや不要ということだろう。

「あくまでオレの印象だが、

 遊び終えた玩具について話しているようだったな」

「…だそうだが、クラトー殿、あなたの考えは?」

口元を歪めるように笑んだガラテアの返答を受けて、

レゼルクはクラトーに目を移した。

軍人としてはかなりの窮地のはずだが、

クラトーの様子に焦燥感はない。

「前々から思っていたのだが、

 マステマ隊長はいまいちわかっておられないのだな、

 この私の価値が!

 だが、案ずることはない。

 このトゥリート・クラトー、どこへ行っても引く手数多の

 人生を歩んできた!

 軍ならば他の隊、軍の外でも貴人や賢人、か弱き民衆たちが

 今や遅しと待ち望んでいる、この私の来訪を!

 レゼルク殿、この私に勝るとも劣らぬ武勇を持つ貴公も

 さぞ歓迎されることだろう。

 若き魂には因循しているいとまなどない。

 迷うなかれ、颯爽と新たなる一歩を踏み出そう!

 この私と共に」

右手を胸に当て、左手を空へと向けて朗々と言った。

今となっては相棒とも言える彼がこういう性格で良かったと、

レゼルクは小さく笑った。

「では、そうするか。

 差し当たり、ロズウェルと合流するかな…」

「あの大声のお嬢ちゃんか?

 わざわざ合流しなくても、向こうは向こうでやるだろ」

肩をすくめて、ガラテアが言う。

ジャカらと行動しているはずのロズウェルがどこにいるのかは、

見当もつかない。

いずれ再会できると信じてしばらくは別行動するという道も

確かにある。

「…それはそうなんだが、後でうるさそうなんだよな…

 そう思わないか?

 クラトー殿」

「なかなか合流できなければ、いざ再会した時には

 延々と文句を言うだろうな、ロズウェル嬢は!

 一応形ばかりでも探すか、二度と会わないかのどちらかがいいと思う、

 この私としては」

クラトーの意見は参考にならなかった。

この後、レゼルクはガーラントを脱出するためにも

街の下の方に降りて状況を探るべきと述べ、

クラトーとガラテアも同意し偵察の機会を窺った。

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