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不断のジャカ  作者: 吉良 善
大都市ガーラント
41/92

接触

レゼルクたちは、ガーラントの東方面へと駆けていた。

ガラテアがターゲットとしている者たちと対するべく

街を進んでいる時にロズウェルが遠くの笛の音に気づき、

それを受けてガラテアがその方向へ行くと決めたからである。

彼らは、GBの隊を帯同していた。

揃いの橙色のローブに身を包んだ一団は、

やはり異様で悪目立ちする。

隠密行動をするわけでもないからいいが、

できることならあまり同道したくないと皆思っていた。

「先を越されたか、と言っていたが…」

先頭を行くガラテアに追いつき、レゼルクが声をかけた。

「一体、誰にだ?」

「さあな。

 だがオレらと同じ側の隊のはずだ、

 情報源が何ヶ所かに話を持って行ったらしい。

 今ばかりは味方の不手際を願っちまうな、

 敵を仕留めるかどうかで実入りが違う」

「実入りはともかく、私は知りたいことがいくつかある。

 そのためにも標的がやられる前に接触したいが…

 少人数で追手を振りきろうとするなら路地を使うだろう。

 方向から考えて相手が目指しているのは東門の方だ、

 それを踏まえて見当を付けて回り込もう」

「不本意なのかと思いきや、意外と乗り気だな?」

「乗り気というわけではないが、

 相手は興味のある存在だからな」

答えた後、レゼルクはロズウェルの方を見る。

「以前君が会った光の剣の男がいるかもしれない。

 悪い人間ではなさそうだと言っていたが、

 戦うことになっても大丈夫か?」

「気は進まないけど…」

とは言いながらも、ロズウェルの様子はあっけらかんとしている。

あまり深く悩む方ではない。

良くも悪くも、切り替えは早かった。

「あれだけの力を持った人たちが、

 ロスティージャみたいな奴とはいえ

 一応軍に属する人間と事を構えていたんだから、

 全く納得いかないわけじゃないよ。

 でも、何でそうなったのは気になるなあ。

 何で追っかけられているんだろって」

「懇切丁寧に教える必要はないということなのだろうな、

 この私たちのような下っ端には!

 彼らが追われる本当の理由も、

 彼らが持つ力の正体についても」

横から、クラトーが口を挟んだ。

彼の言うとおり、ほとんど教えられていない。

レゼルクも抱いていた想いである。

なぜ青い力の持ち主が狙われるのか、

そもそも指示をしているのは何者なのか。

もし知った時には、自分はどうするだろうか。

今と同じように行動するのか。

「いるようだな。

 そこの路地の奥だ」

大通りを走りながら、ガラテアは脇にある路地の入口の一つに目をやった。

確かに、そちらの方から騒々しい音が聞こえる。

戦闘が起こっているのだろう。

「そんじゃ、先回りだ。

 焦って他の隊といざこざを起こさないようにな…

 ブレイス、そっちの隊もOKか?」

「GB隊、いつでも攻撃できる」

「手はずどおりオレたちが仕掛けたら後方から援護、

 よろしく頼むぜ。

 レゼルク、さっき言ったとおり

 不殺の天使がいたら手を借りるかもしれねえが」

「わかっている。

 尋常に勝負というわけにはいかない相手だということもな」

このまま大通りを駆け、東門近くの路地の出口となる場所を目指す。

別の隊が足止めしていてくれれば、十分に前に出られるはずだ。





前に立ちはだかるポンペスの私兵とウィルスター軍の兵を、

アンジェの剣が次々と地に沈める。

途中、左右の道からも姿を現すことがあったが

左側の敵をオータが、右側の敵をジャカのルルメクが打ち払った。

ジャカが倒した兵に後続がいた時には、

「気をつけろ!

 そのガキ、意外と腕が立つぞ!」

という声が飛んだ。

それを聞いたジャカは青ざめた顔を引きつらせながら、

体力がもたなくなってきたのか重くなってきたような気がする

ルルメクを振るった。

「この剣のせいで、僕すごい剣士だと思われてる!?」

「実際、やるじゃないか!

 俺の感想も奴らと同じだよ。

 言っちゃ悪いが、意外とってところもな」

また一人を倒したオータが、大きく息を吐いて言う。

褒められたジャカは、ぶんぶんと首を振った。

「違うんです!

 勝手に動くんです、この剣!

 そういう剣、妖剣なんですよ!」

「勝手に動く…?

 おい、それってもしや…

 ルルメクか?」

「知ってるんですか?」

「知ってるよ、前にこの街で犠牲者が出たって話をな」

「犠牲者…

 これを持った人に斬られたってことですか?」

「犠牲になったのは持ち主だ。

 ルルメクは妖剣どころじゃない。

 邪剣だよ。

 持ち主が意志の弱い者、自分で戦う気のない者なら

 見下して勝手に戦うって話だ。

 それだけじゃなくて、いつかいきなり手を抜いて動かなくなり

 ルルメクに頼りきっていた持ち主は戦いの中で突然放り出されることになる…

 撃ち合っている時にそうなったらと考えてみろ。

 いずれその剣に殺されるってわけさ」

「高かったんですよ、この剣ッッ!

 僕が払ったんじゃないけどッ!」

大枚をはたいて買った名剣のはずが、

ほぼ呪いのアイテムだったとはやりきれない。

そしてオータの言葉を聞いて、はっ、となった。

ルルメクが重くなってきたように感じたのは、

自分の疲労のせいではなくルルメクの動きが鈍っているからでは…?

まさにこの剣に頼りきっているジャカは、

もしルルメクが動かなくなったら間違いなく瞬く間にやられる。

「(…剣に殺されてたまるか…!

 自分で戦えるようにならないと…!

 ルルメクに任せるだけじゃなく…!)」

「追いつきましたよ!

 良かった、アンジェさんの近くの方が安全ですからね。

 正直、離れると不安のあまり動悸・息切れで胸が苦しいです!」

後ろから近づいて来るジルドラが言った。

さらにその後ろにはキーン、アイスレア、ライドの姿もあるようだった。

敵を倒しながら進むジャカたちの方が速度が遅かったとはいえ

もう追いついて来たということは、アンジェがラサを倒して程なく、

彼らもソロムを倒すことができたのだろうか。

「倒したんですか、キーンさん!」

ジャカが尋ねると、キーンは小さく首を振る。

「いや、倒してはいない。

 アイスの魔法で足止めしてもらっただけだ」

「とはいえ、至近距離で氷の魔法をぶつけましたからね。

 治療を受けなければしばらくは動けないと思いますよ」

と、アイスレアが付け加えた。

一時的でも、あの凶暴な男を止めることができたのは大手柄と言っていい。

今この付近に現れている敵部隊の中では、

おそらくラサとソロムが最も手強い相手であろう。

その両方を退けることができたのならば、

残る兵たちを跳ね除けての東門への到達が見えてくる。

それを表すように、路地の出口が近づいて来た。

「あそこから路地を抜ければ、東門は目と鼻の先だ!」

オータが叫ぶ。

ポンペスとソロムの部下ももはや出て来ない。

暗い道の先に光明を見出しながら駆けるジャカたちは、

ようやく路地を抜けた。

が、東門へと続く大通りを彼らがしばらく進んだところで、

何者かが建物の陰から飛び出して来た。

かなりの人数であった。

そしてその中には、ジャカが見覚えのある人物がいたのである。

「…ガラテア…!?」

絞り出した、その名を持つ緑の髪の男。

それは、ソロムに続いて出くわした仇。

ウォルケンらの命を奪った憎き相手を目を見開いて見据えていたジャカは、

その傍らに立つ少年の姿にさらに驚くこととなった。

「…君は…レゼルクか!?

 なぜ…

 なぜ、ガラテアと一緒にいるんだ…!?」

愕然として言うジャカ。

驚愕と不可解の視線を向けられたレゼルクは、

眉をひそめて己の名を呼んだ少年の顔を見返していた。

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