第96話 レンタルシステム
ポーション乞食の件から3週間ほど経ったが、あれから実に平和だ。
〝商人の間〟からポーション乞食をするような奴はほとんどいなくなった。
さすがに0にはならなかったが、そいつらも言葉が話せる配下を差し向けて、〝拘誓紙〟が手に入ったらまたオーディションをやると言ったら帰っていくし。
それでも帰らずにポーションをタダで寄こせとかいう恥知らずはお仕置きタイムになるわけだが。うぷぷ。
アバターの状態で1回殺す分には国も黙認してくれるし、万が一ガチで殺ってしまっても、映像さえ残っていなければ行方不明扱いにすればいいと国の役人が暗に言っていたからな。
まあチョウカンみたいなガチの迷惑野郎ですら殺さなかったので、よっぽどなヤツでない限りはそんな事にならないだろうが。
「じゃあまた[ガチャ]でも回すか」
「急に物思いにふけ始めたと思ったら、やっぱりそれですか」
マルティアが呆れた目で見てくるが、俺達ができることなんて[ガチャ]を回してダンジョン創っていくしかないんだから仕方ないだろ。
そろそろ人類が4階層まで来れるようにダンジョンも改造していきたいしな。
「最近武器の貸し出しサービスを始めたから、負の感情の回収効率が上がってポイントが増えてるから問題ないだろ」
1階層にある〝酒場〟の通路を挟んだ反対側に新しく部屋を設けた。
その部屋は、前に武器のレンタルができると嬉しいとか言ってるやつがいたので、その要望をこっちの利益にもなるよう叶えてやった、武器貸し出し部屋だ。
そこにはいくつもの個室があり、その中にはSRの〝エコーネット・ゴーレム〟を配置している。
個室に入ってこのゴーレムの前で自身の過去のトラウマなどを語ると指定した武器が貸し出される仕組みである。
もちろん負の感情を感知したら武器を貸し出すようゴーレムに指示しているので、適当なことを言っても武器は出ない。
そして武器の返却は、この部屋の入口近くにも設置しているゴーレムの前の大きな箱に返せばいいのだが――
『へへっ、武器さえ出れば後はこっそり持ち逃げしちまえば……』
なんて考えて武器を返さない者も当然出た。
しかしその場合、武器を返却していない者が次回この個室に入った時、ゴーレムが感知して個室に閉じ込められ、警備役の魔物に報告されることになっている。
ただのゴーレムであれば、武器を返却していない者かどうかの判別が難しいだろうが、それが可能なのが〝エコーネット・ゴーレム〟だ。
〝エコーネット・ゴーレム〟は複数のゴーレムで1つの存在である特殊な魔物だ。
子供ほどの大きさで戦闘力はなく、言わばお手伝いロボットのようなものだが、その特徴として互いの記録を常時共有できるという性質をもっている。
その性質を利用して武器を貸し出した人物を記録し、返却がされた人物かも判断できるというわけだ。
〝エコーネット・ゴーレム〟がいなければ借りパクされ放題だったろうから、このシステムは成り立たなかっただろうな。
ちなみに武器が壊れた場合、その一部でもいいから返却すれば次も借りられることになっている。
万が一ダンジョン内で紛失した場合でも、報告すれば次も借りられるが、虚偽の報告であった場合は次回……。
みたいな感じで武器のレンタルシステムが確立し、利用する人達は手ぶらでも来れるからありがたいと好評だ。
でも、武器とか使い回しだから自前の物を用意した方がいいと思うんだがな。
それはさておき、[ガチャ]である。
「ある程度ポイントが貯まったから、[ガチャ]を回してもいいと思うんだが?」
「別に非難してるわけではありませんよ。どうせ私達は[ガチャ]でしかポイントを消費しませんから」
「じゃあなんで呆れた目で見てきた?」
「[ガチャ]を回すと言った時に、私をどう料理してやろうかという目で見てきたからですかね」
さすがマルティア。分かってるな。
俺は複数の[称号]の効果で[ガチャ]を回すしかまともにダンジョンを創れなくなってるわけだが、その中でも〈妖精泣かせ〉はマルティアの感情変動で運の振れ幅が大きくなる以上、マルティアに何もしないわけがない。
ここはLRが出た時の行動にあやかって、マルティアの感情を下げてから上げる方向でいくとしよう。
「マルティア。ここに今日のおやつがあるわけだが」
「話の流れからして嫌な予感しかしない」
「[ガチャ]でURが出たら食べられるというのはどうだろう?」
「あーはいはい。今日はおやつ抜きですか。お疲れ様で~す」
「やっぱダメか?」
「今までどれだけ[ガチャ]を回してきたと思ってるんですか。URなんてそうそう出ないんですから、それで乗り気になれるわけないじゃないでしょ」
理不尽な要求をしてみたが、[ガチャ]前に今まで色々やりすぎて慣れたせいか、あまり不機嫌にはなってないな。
またいつものか、ぐらいの反応でかなり微妙だ。
「ところでマルチーズよ」
「マルしかあってないじゃないですか!? で、なんですか?」
「名前をわざと微妙に間違えるネタも微妙、っと」
「一体何の調査をしているのか……」
耐性が付きすぎたせいで、まるで感情を揺さぶれる気がしない。
さて、どうするか。




