第95話 オファリング・メイデンズ
詩織達と契約して一月経った。
あれから彼女達は週に6日、俺のダンジョンでレベル上げや魔物との戦い方を覚えるのに精を出している。
平日は学校があるため、放課後の少しの時間しか訓練はできないが、それでも着実に成長している。
ちなみに日曜は完全に休みにしてやった。
あまり根を詰めても仕方がないし、元々魔石の回収プランは長期的にやっていこうと思っていたので、問題はない。
「いくよ、2人共!」
「いいですわ!」
「は、はい!」
茉奈の掛け声に2人は頷き、5体のゴブリンの兵士と戦いだした。
3人がパーティーを組んで最初の内は、無限湧きするスライムを倒してレベル上げをしていたが、最近は他のダンジョンでも通用するように様々な魔物と戦わせている。
俺のダンジョンは多種多様な魔物がいるから、練習相手は事欠かないだろう。
人でも魔物でも、どちらが死んでも生き返れるのだから、思う存分真剣勝負ができるのもいい事だ。
「こちらを見なさい! [ウォークライ]!」
それを喜んでいるのはまともに運動が出来なかった茉奈と、今挑発スキルを使った夕莉だろうな。
リモート通話で見た時の夕莉は顔色が悪く、いつ倒れてもおかしくないような様子だったが、今は〝ポーション(強)〟のお陰で病が完全完治――しただけでなく、薬の副作用で抜けていた髪まで元通りになった。
今は姫カットのロングで、後ろ髪だけ首元でひとつに束ねており、彼女がゴブリンの攻撃を避けるたびにその髪がなびいていた。
……しかし選んだジョブが〔格闘家〕、か。
見た目薙刀とか使いそうな和風美人なのに、ステゴロを好むか。
役割的には避けタンクをしているが、ゲームでならともかく、一歩間違えれば大怪我するような役割をするとか、色々はっちゃけてないか?
いくらアバターの状態で怪我しても、ダンジョンから出れば傷が無くなるとはいえ、痛覚はあるだろうに。
「ギャッ!」
「っ! 脳腫瘍で苦しんでた時に比べれば、この程度、痛い内に入りませんわ!」
ゴブリンが振り下ろした剣がかすったにもかかわらずこの発言。
茉奈のストッパーになりそうな人選をしたつもりだったが、この少女もヤバかったか。
よくよく考えたら、病気で苦しんでいた時に、自らオーディションに応募することを決断して実行したくらいには行動力があるのだから、それを考慮しなかった俺が悪いか。
でも、笑顔でゴブリン殴ってるのは絵面的にどうよ?
茉奈も体が思う様に動くからか、ゴブリン相手に2人が笑顔で戦ってる様は、中々に酷いぞ。
「[ファイヤーボール]!」
「ギャーッ!?」
そんな中、このパーティー唯一の良心――とまでは言わないが、冷静に周囲を見ているのが詩織だった。
少し離れた位置から弓で夕莉に矢を射ろうとしていたゴブリンに対し、[ファイヤーボール]で攻撃。
そのお陰で夕莉が攻撃されずに済み、さらにゴブリン達の動揺を誘っていた。
その隙を逃す2人ではなく、4体いたゴブリン達をボコボコにしていた。
お前ら、見られてること忘れてねえかな?
――ジィー
・げ、元気になって良かったね……!
・元気の一言で片づけていい光景じゃない
・わ、笑い声をあげてないだけマシだから!
3人がパーティーを組むことになったが、他のダンジョンで手に入れた魔石は俺に渡すことになる以上、どうしても収入は落ちてしまう。
一応収入がなくても装備などを俺から支給してもらえばいいのだから、そこまで問題はないように思えるが、あらゆる支給品を俺に頼ってしまうと、いつまで経っても魔石の支払いが終わらなくなってしまう。
そこであいつは考えた。
「じゃあ配信してお金稼いで、それで必要な物買えばいいよ」
それを言ったのは当然茉奈だった。
茉奈の知名度はあのチョウカンの配信の切り抜きのせいで滅茶苦茶高く、街を歩いていると声をかけられるほど。
そしてオーディションを大々的に行ったので、2人の人間と契約したことは世間に知れ渡っており、契約時には身バレしないようにしたとはいえ、今後茉奈と一緒に行動している2人がその人物だと推測されるのは目に見えている。
それならいっそのこと、自分達から発信してお金にすればいいよ、という発想になった。なるか普通?
まあ、その話を聞いて、自動で着いて行き撮影してくれるSRの〝配信ドローン〟を支給してやったが。
「いえーい! わたし達の勝ち!」
「うふふ。楽しい時間でしたわ」
「ふ、2人共、もっと周囲を見て戦わないとダメだよ……」
・さっきまでのギャップで死にそう
・ゴブリンをリンチしてる光景から、一転して部活の試合直後みたいな光景になったからな
・もっとキャッキャウフフな光景を見せて
配信を始めた当初はこんなにも好意的なコメントだけではなかった。
たった二枠しかない治療の機会を取られた者や、こういった幸運を得た人間に対して妬む者が、批判的なコメントをしてきたのだ。
今ではなくなったが。
もちろん俺が動いたからである。
動いたと言っても政府に丸投げしただけだが。
俺の配下であるあの3人の邪魔をするならどうなるか分かってるよな? って言ったらすぐ動いてくれたんだよ。
結果、政府は3人が世間に好意的に見られるようプロパガンダを行い、批判的なコメントをしていた連中は軒並み開示請求が行われて粛清された。
そのお陰で3人は外部の声に惑わされず、活動できている。
「みんな、今日も応援ありがとう!」
「配信はマスター様のダンジョンでしか行えませんが、他のダンジョンでの冒険は動画として残しています。そちらも見ていただけると嬉しいです」
「こ、高評価とチャンネル登録よろしくお願いします。以上、オファリング・メイデンズでした!」
そう。彼女達〝オファリング・メイデンズ〟――〝献上する乙女たち〟の名前の通り、余計な心配をすることなく魔石を俺に献上し続けられるというわけだ。
……いや、パーティー名!?
俺の評価がだだ下がりするような名前にしたの誰だよ!?
最初聞いた時、「へーカッコイイ名前だな」って思ったのに、調べたらとんでもない意味じゃねえか!
せっかく今まで築いたダンジョンマスターのイメージ、崩すの止めてもらってもいいですかね?
今回の騒動で俺は相応のプラスを得た代わりに、世間に対してマイナスイメージが持たれてしまったことに少し涙した。
2章完結です。
1章と同じようにスレで終わりにしてみようかと思いましたが、クドくなりそうだったので止めました。
統一感はでるでしょうが、90話でもスレ回を出してるせいでスレの内容が薄くなりそうでしたから、仕方ないですね。
それにマルティアをいい感じにイジメる最後には今回もできませんでした。
1章はダンジョン側をメインとしてるからともかく、今章は人間側をメインの話にしてるので、脈絡なくそんなこともできませんし……。
マル)「何故この作者は私を虐げようとするのか……」
作者)『それを求める読者がいるからだよ』
マル)「そんな声無視してくださいよ!」
作者)『そんなことしたらこの作品が薄味になって誰も読まないでしょうが!』
マル)「別に私は読んでほしいとは思ってませんよ!?」
作者)『作者としては読んでほしいんだよ!』
マル)「こんな誰もが見る場所で、本音ぶちまけないでくれません?」
作者)『でも書き手が全員思ってることじゃん』
マル)「それはそうでしょうが」
作者)『だから今後も読んでもらえるように、面白おかしくマルティアをいじめられたらいいと思ってる』
マル)「いい加減それ止めません?! 結局今章でもガチャ回で滅茶苦茶しばかれたんですけど!?」
作者)『でもそのお陰でLR出たじゃん』
マル)「いや、あれ、タイミング的に見てもプリン食べて上機嫌になってたからでは?」
作者)『その前に散々ハリセンで叩かれまくって、機嫌がめっちゃ悪くなってたけどな』
マル)「………」
作者)『………』
マル)「ま、まさか感情をマイナスから一気にプラスにすると、レア度が上がるって言いませんよね?」
作者)『言わない言わない。うん、言わない』
マル)「なんか意味違ってきてません!?」
作者)『設定とかメタい話だからとか、言わない言わない』
マル)「もうほぼ言ってるんですけど!?」
作者)『勘の良い読者君もいたけど気のせいデス!(`・ω・´)キリッ』
マル)「決め顔とパロディーネタで誤魔化せるとでも?」
作者)『明言しなきゃ後からなんとでもなるんだよ』
マル)「ガチャとかこの作品において重要な要素で適当すぎる……」
作者)『何言ってんだよ。そもそもガチャなんてランダムなんだから、マルティア関係なくLRが出るパターンだって十分あるだろうが』
マル)「じゃあ私をガチャ演出のごとく絡ませるの止めてくれませんかね!?」
作者)『主人公に言ってくれない?』
マル)「マスターにやらせてるのは実質あなたでしょうが!」
作者)『じゃあ何言っても無理って分かるじゃん』
マル)「ち、ちくしょう……!」
2章じゃ後半の方ではあまりマルティアを活躍させてあげられなかったから、3章ではしっかり活躍(笑)させてあげたいところです。
え、そんな事よりもこれ見よがしろに出てきたエリクサーはなんだったのかって?
やだな。ガチャで出てきたものってランダムだから、使うとは限らないんだよなぁ~。
ガチャは基本ガチでランダム生成で決めてるせいで、重要そうなアイテム名のくせして活躍せずに空気になることがこの作品ではあるんだよ。
ぶっちゃけ、フィギュラスもテン君も全員ランダムだったから。
能力的な付加価値は足したりしましたが、種族とかの部分はランダムでした。
さて、それはともかく3章ですか……。
できれば3章では人とダンジョンの両方がメインにしたいとこだけど、たぶんダンジョンよりかな?
まあどうなるかは続きを読んでくれれば分かるか!




