第92話 オーディション
〝商人の間〟にいるやつの事情と、今後もこういう奴らが増えるであろうことを考えて、勢いでオーディションとか言ってしまった。後悔はない。
「あの、それでなんでわたしはここにいるんでしょうか?」
「茉奈のパーティーメンバーを決めるためでもあるからに決まってるだろうが」
今、俺達は〝酒場〟で両隣に座って、面接者を待っていた。
数週間前にオーディションをすると宣言し、配信者や国の役人の力を借りて大々的に宣伝。
もう〝商人の間〟で騒ぎ立てるやつが出ないようにガッツリと宣伝し、一次審査の書類選考を行った。
結果、応募数約12万人。
嘘だと言ってほしいが、ガチでこれだけの応募が来たのだ。
あの契約書の内容で。
俺の予想だとそこまで集まらないと思ったのだが、このままだとかなりの数になると言われたので条件を設けたにもかかわらず、その上でこれなのだから驚きである。
その条件は――
・治療したい病人1人に対し、1人の応募に限る
この条件にすることで、病人1人に対して家族全員で応募、みたいなことにならず、応募数もそこまでではなくなるはずだったのが、蓋を開けてみたらこの有り様だ。
全部を1つ1つ見ていったら手間がかかり過ぎるので、仕方がないからこの書類の中で、ある条件に当てはまる者のみ選別。
履歴書のように誰にポーションを使用したいかや、どんな病気かなども詳しく応募用紙に記載する必要があったから選別が出来た。
その選別基準は、ポーション(強)を必要としている者だ。
茉奈の場合はポーション(中)で済んだが、それだと魔石の支払いがすぐに終わってしまう。
もちろんそうならないように適宜装備を支給したりして、長期的に魔石を得られるようにするつもりだが、それでは一気に魔石を持ち込まれて返済されてしまうかもしれない。
だからそう簡単に返済されないためにも、ポーション(強)を使わせる方が都合がいいのだ。
他にもポーション(強)でなければいけない人間に使う方が、世間も納得するだろうという目論見もある。
そう考えると、茉奈は自分から率先して行動したからこそ健康な身体を得られたんだな。
もし仮にこのオーディションに応募したとしても、ポーション(強)を使うか使わないかの微妙なラインなら落としてるし。
ただ、その行動力は褒められるべきではあるが、もう少し思慮深く動いてほしいとは思う。
俺と契約した後、両親があいつと共に来て平謝りしてきたくらいだし。
もっとも、あいつはまるで反省していなかったがな。
「わたしなら大丈夫! 体は動くんだから自分でちゃんと魔石を集めるよ!」
「「このバカ娘!!」」
その時の会話の一部がこれである。
契約内容はあれだったが、ちゃんと学校に通うことと、定期的に俺のダンジョンに来てレベルを上げること。
そして短期的にではなく長期的な計画で魔石を回収してもらう予定であることを伝えると、両親も納得したのか、それともバカ娘のことを止めても行動するであろうと諦めてるのか、割とすんなり認めたが。
そんな茉奈のお陰で契約内容は割とハードルの高いものになったのだが、それでも12万も応募されるとは思わなかった。
ポーション(強)を使うことになる人間だけに絞っても、まだ2万人もいるとか多すぎだろ。
その書類選考で、とりあえず茉奈と年の近い人間を選別することにした。
茉奈とパーティーを組むことになる以上、年齢は近い方が一緒に行動しやすいだろうし、年寄りよりも若者にポーション(強)を使う方がいいと考えたからだ。
ポーションが必要な本人が意思疎通できず、その親が契約したいというパターンも当然あったが、親では茉奈との年齢が離れているのでもちろん省いた。
契約できるのは2人しか無理な以上、どうしようもない。全員は救えないのだ。
なら最初から応募の段階で制限していれば良かったのかもしれないが、ここまで応募が集まると思っていなかったのが1点。
あと、年齢が離れていたとしてもダンジョン探索をする上で優秀な技能を持っているのなら、そいつと契約するのも悪くないと思ったのが1点。
具体的には自衛隊の人間だったり、なんらかの武術を修めているなら、そいつでもいいからな。
だが、こんなにも人数がいるなら契約する人間の年齢を20代までで絞っても、余裕で候補が残るのだ。
それに技量などなくても、剣や槍などで魔物と戦う経験があるやつなんてまずいないのだから、茉奈と一緒に俺のダンジョンでレベルを上げつつ、魔物との戦い方を覚えてくれればいい。
そんな考えの元、書類選考で選んだ人間は4000人。
一応カモフラージュとして30代、40代の人間も混ざってはいるが、この人物達は最終的に落とすことになる。
元から年齢で選別していると知られたら、面倒な事になるのが目に見えているからである。
そして二次審査は国の役人との面接である。
国としてもおかしな人間が俺と契約を結ぶのは避けるため、面接を行い、人柄に問題が無ければその人物の調査を行って選別される。
これに関しては、「オーディションやるけど国として口出しするか?」と尋ねたら、是非そうしてほしいと言われたのであり、俺から頼んだわけではない。
頼んだわけではないが、このお陰で選別が楽になったので助かっている。
そうして今回、最終審査である俺と茉奈との面接に100人の人間が挑むのだ。
一人ひとりと面接をするつもりだったので、100人前後まで絞ってほしいと頼んだら、ピッタリ100人が選ばれてきたんだよな。
別にそんなシビアにやらなくても良かったんだがな。
それはともかく、これから面接である。
される側になったことはあっても、する側になったことはないからどうしていいか悩むところだが、好きにやらせてもらうとしよう。
――コンコンコン
「入ってくれ」
そうして俺達は1週間かけて、候補者たちの面接を行っていった。




