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運で決まる。ガチャつく現代ダンジョン  作者: 甘井雨玉
2章

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第74話 チョウカン


 ≪天パ男:チョウカンSIDE≫


「クソ……! なんであんなゴリラみたいな護衛を連れてくんだよ!」


 スマホを取り上げられて掴まれた手首がまだじんじんと痛み、それが余計にオレを苛立たせる。


 マンションの自室に帰ったオレはイライラしながら玄関を開けて部屋に入ると、配信者チョウカンのトレードマークである派手なパーカーを脱ぎ捨て、ソファに身を投げ出すように座った。


「ちょっと話しかけただけだろうが……!」


 ぶつぶつ文句を言いながら、サブ端末でSNSを開いた。


「おっ、もう拡散されてるな」


 オレが強制退去される瞬間を撮った誰かの動画がすでに広まっていた。

 そのコメント欄には――


 ・また迷惑かけてる

 ・こいつ懲りねぇな

 ・ダンジョンマスターに相手されてなくて草


 みたいな言葉ばかり並んでいるが、いまいち伸びてねえ……。


 あまりにも短時間だった上にダンジョンマスターにろくに絡みに行けなかったせいだ。まだコンビニで店員に無理な絡みをして反応を引き出そうとする企画をやってた方が伸びてたぞ。


 気付いたら、悔しさで思わず下唇を噛んでいた。


「このままじゃ終われねぇだろ。次、どうするよ……」


 机に突っ伏しながら、ノートに思いつく企画を書き殴ってみる。


〝ダンジョンの裏側暴露〟

〝政府の護衛に密着してみた〟

〝ダンジョンマスターの弱点考察〟


 他にもいくつか案は出るも、どれも伸びる気配をまるで感じない。自分でも分かっているくらい面白味もなければ炎上する何かが見えなかった。


「もっとインパクト……。もっとバズるやつ……」


 そこでふとSNSである投稿が話題になっていたのを思い出した。


「……そうだ。確かあのダンジョンに〝商人の間〟とかいうので、ポーションが交換出来たよな? しかもかぐや姫並みの無理難題を要求する商品があったはず……」


 オレはその記憶を手繰り寄せながら、思わず笑う。

 あの不可思議な空間で取引される特殊なアイテム、そして()()()()()が撮れ高になりそうなあの雰囲気。

 あれを利用すれば、ただ突撃するよりもよっぽどバズる企画が作れるだろ!


 オレはどうすればよりバズれるか、綿密に計画を練ることにした。


 ◆


 ≪ナオト(仮)SIDE≫


 政府からお墨付きをもらった俺は、ヴェッセルナイトで再び1階層へと訪れていた。

 もちろん3階層の宣伝のためである。


「すいません、今日は大丈夫でしょうか?」


 ダンジョンの入口近くに来てすぐに配信者と思わしき女性に声をかけられた。

 見覚えのある人物で、須川が来る前に俺に撮影してもいいか聞いてきた人物の1人だな。


「問題ない。そもそも今日は、先日撮影を断ったら()()()()()()()()()()()に協力してもらおうと思って来たからな」


 俺が“すぐに引いてくれた者達”を強調して言うと、すぐに察したのか苦笑いを浮かべた。


「あっ、なるほど……。〝チョウカン〟みたいな配信者はNGってことですね」

「チョウカン?」

「あなたにしつこく声をかけてた迷惑系ユーチューバーですよ。

 人が配信している時に無理矢理絡んできたり、コンビニなどのお店で迷惑行為を行ったりしてて、関わりたくない嫌いな配信者です」


 鬱陶しいなと思っていたが、やはりそういうタイプの配信者だったか。


「あんなやつの事はともかく、今日は撮影オッケーってことですよね!?

 それに協力してほしいこととは一体何でしょうか!?」


 取れ高チャンスだと思っているのか、目を輝かせてこちらに尋ねてきたな。


「それは何人か集まってからな。前に断った者達と一緒にある事を配信してもらいたい。

 他の配信者と一緒でも問題ないよな?」

「全然大丈夫です! 突発的なコラボもなくはないですし、そんな事でチャンスを逃すわけにはいきませんから!

 あ、チョウカンと一緒でなければという条件がつきますが」

「チョウカンは共演NGだから安心しろ」

「あはは、ですよね〜」


 女性配信者がただ待っているのもなんなので、配信を始めてもいいか聞いてきたから、俺は先日断った配信者達に呼びかけるのに都合が良さそうだったので許可した。


「はいどうもみなさんこんにちは、しのぽんチャンネルへようこそ!

 本日はなんと、あのダンジョンマスターのナオトさんとの接触に成功しました!」


 ・しのぽん、ついにダンジョンマスターとコラボか!?

 ・前は断られたもんね

 ・今回はよく受けてくれたな


「そうなんですよ! 今回もダメ元で尋ねたら快く承諾をいただいたんです。こちら、ダンジョンマスターのナオトさんです」

「どうも」


 ・安定の不愛想w

 ・でもダンジョンマスターなのに配信に参加してくれるんだから優しい

 ・何か裏があるのでは!?


「裏というほどじゃないが、先日撮影を断った配信者たちに協力してもらいたいことがある。

 だから前に撮影を断った配信者たちは、この配信や、リスナーがSNSで広めてくれた情報を見て気づいたら、来られるなら来てほしい。

 ただし、今回は先日撮影を断った配信者たち限定だからな。あまり人数が多くなりすぎても困るし。

 今から1時間は待つからよろしく」


 ・まさかのダンジョンマスターの企画!?


「内容はある程度集まってから説明する。まあ、難しいことでも危ないことでもないはずだ」


 ・しのぽん、これはガチで神回では?


 そのコメントを見たしのぽんが、自分もそう思っているのか自然と満面の笑みを浮かべ、カメラを見た。


「というわけで、他の配信者さんたちが集まるまで少し待ちますね! 皆さん、今日は絶対最後まで見逃さないでください!」


 ・待つ!

 ・これは期待しかない


「ただしチョウカン。てめえはダメだ」


 ・チョウカンだけ名指しで拒否www

 ・ダンジョンマスターのまさかのパロディネタ(笑)

 ・あんな風に絡まれて快く受け入れるわけないよな

 ・チョウカン来ないのなら安心して見られるわ


「来たらうちの魔物をけしかけるから、来るなら覚悟して来い」


 ・やべぇw

 ・これ、逆にチョウカン来てほしいんだが!

 ・魔物けしかけるって脅し文句のスケールがデカすぎて草



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