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運で決まる。ガチャつく現代ダンジョン  作者: 甘井雨玉
2章

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第73話 トラブル


 魔物達の〝再誕の巣窟〟への登録作業を行った翌日、俺はまたヴェッセルナイトを操作して1階層へと訪れていた。


「あ、あの! 今配信をしているんですけど、撮影してもいいでしょうか?!」

「悪いな。今日は交渉人に用があるから勘弁してほしい」

「そうですか……」


 女性配信者が肩を落として去って行くが、すでにこれで8人目だ。

 全員素直に引き下がってくれて助かるが、声をかけられすぎだろ。


 前にダツサラの配信に出た影響だろうか?

 あの時の配信が伸びたのか知らんが、おそらく相応の反響があったからそれにあやかろうとしているんだろう。


 別に何の用事もなければ多少の受け答えぐらい構わなかったんだが、今回は国の人間に用があるので下手にそちらに気を取られてはいられない。

 さて、いつも通りならそろそろ来るはずなんだが……ん? またか。


 こちらの姿を捉えた派手なパーカーに自撮り棒を構えた天パの男が、満面の笑みでこちらに突っ込んでくるな。


「あ、いたいた! 例のダンジョンマスターさんっしょ? はいどーもー、今日も神回確定でーす!」


 なんだこいつ?

 さっきまで俺に声をかけてきた人達は撮影していいか丁重に聞いてきたが、こいつはそういう事をせずにいきなり撮影しだしたな。

 嫌な予感しかしない。


「悪いが今日は撮影は受けられない。またの機会にしてくれ」


 一応、ちゃんと断るか。


「いやいやいや、ちょっとだけ! マジで一瞬で終わるんで! 『ダンジョンマスターに突撃してみた』ってタイトルでさ、絶対伸びるんすよ!」


 男は俺の言葉など聞いていない。

 むしろ、断られたことすらネタにしているような顔だな。


「聞こえなかったか? 今日は忙しい。交渉相手を待っているんだ」

「交渉? あー、政府の人間とでしょ! それ逆に撮れ高じゃん! 外交の裏側に潜入してみた、ってやつ!」


 まるで会話にならない。もしかしてこいつ、迷惑系ってやつか?


「……しつこいぞ。帰れ」


 少し語気を強めても、男はニヤニヤ笑ったままカメラをこちらに向け続ける。


「いやいや、そんな事言わないで。視聴者も喜ぶし、ウチのチャンネル登録者も増えるし、Win‑Winじゃないっすか?」


 どこがWin‑Winだ。俺に全くWinがないだろうが。

 鬱陶しいな。

 イライラしてきたし、これ以上我慢する必要もないか?


 そう思い始めていた時だった。


「ナオト様!」

「ん?」


 そこに現れたのはスーツ姿の男で、交渉専門官の中村ではなく、植木鉢に意見書を投稿したりしている国の人間だった。

 毎日誰かが〝商人の間〟に来て、何かしら変化やこちらからの反応がないかを確認していて、その内の1人だ。


「無断での撮影は遠慮してもらおうか」

「な、なんだよあんた!? おい、止めろ!」


 サングラスをかけたボディービルダーのごとく鍛え上げられた護衛と思わしき男もおり、天パの男からスマホを取り上げ、腕を掴んで強制的にダンジョンの出口へと連行していった。

 正直助かったな。


 さて、相手は国の人間だ。ここからは丁寧に話すモードに切り替えないとな。


「いいタイミングで来てくれましたね」

「SNSで、またダンジョンマスターが1階層の入口付近に来てると投稿がいくつもありましたので、護衛の者も連れて急いで来たんですよ」

「いつもは護衛を連れてなかったと思うのですが?」


 〝商人の間〟に行くだけなら、危険な目に遭うような魔物や罠は無いし、わざわざ連れてくる意味がない。


「ああいった人間がいることを想定して念のため来てもらったんですよ」


 なるほど、確かにな。

 お陰であの野郎を殴り飛ばして、人類からの好感度が減らずに済んで良かったわ。


 さすがにあんなの相手でも、暴力を振るったダンジョンマスターへの非難は免れなかったからな。

 それでもし俺がSNSで炎上して誹謗中傷を受けたとしたら、ムカつくことになるのは間違いない。

 さらにダンジョンに来る人間も少なくなったり、噂を聞きつけたトラブルを起こすような人間が押しかけてきて、1階層の治安が悪くなる可能性があっただろう。

 そうなれば、さらに来訪者が減るのは目に見えるな。


「ところで、本日は我々に御用があったということでよろしいでしょうか?」

「ええ、そうです。えっと……」

「失礼しました。私は須川と申します」


 そうして俺は須川にある提案をした。


 3階層を改造して初心者向けの倒しやすい魔物を配置したから、民間人が入ってもいいか危険度を確かめてみないか、と。


 その話をした時、須川は目を見開いて驚いていたが――


「先日話のあった魔石の投資の件ですね。もう進展があったのですか」


 と納得していた。


 そして須川にその話をしてから数日後、すぐに3階層を自衛隊が来て危険度を判定していった。

 結果、この階層で死ぬことは人間()襲われるとかしない限りまずないと判断され、一般人でも問題ないとお墨付きをもらう事ができたので、俺は3階層の前にあった看板の内容を変更した。


 ◆


〔ここから先、チュートリアルはありません。

 出てくる魔物は完全にランダムのため、レベルが低い状態で入ると死んでしまう可能性があるので注意しましょう〕

 ↓

〔ここから先、チュートリアルはありません。

 3階層では初心者向けの魔物が徘徊していますが、気を付けて行動してください〕



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