第70話 代理ガチャ
マルティアが渋々といった様子で俺からスマホを受け取ると、[ガチャ]の画面に切り替えた。
「こんなの誰が回しても同じだと思うのですが……」
「ガチャ運を上げる手法の1つ、他の人にガチャを回してもらう〝代理ガチャ〟をご存じでない?」
「そんな世間一般に浸透していない言葉を、当たり前のように使わないでくれませんか?」
ソシャゲをやる人間なら知ってると思うんだけどな。
無課金でコツコツソシャゲしてる人間にとっては、ガチャ運を上げる手法は馬鹿にできないから、こういうジンクス系には頼るものだぞ。
「それより[ガチャ]ですが……、13万5000もあれば本来〝魔物発生陣〟の数を揃えるのなんて余裕なのに、凄く勿体ないですね」
「いい加減諦めてくれ。1350回、ポイントが99以下になるまで回さないと、[称号]の〈浪費こそ甘美なる幸福〉の効果で幸運値が大幅に上昇しないんだから、下手に残すなよ」
「分かってますよ。でもそうなると、100連ごとにゲン担ぎとかしてたら効果がリセットされません?」
「ポイントを一気に大量消費しないと幸運値が大幅に上昇しない可能性があるか……」
しまったな。そこまで考えてなかった。
ゲン担ぎをしている間もポイント消費の一連の行動だと判定されればいいが、そうでなかったら13万5000から99以下にまでした結果の幸運値ではなく、5000から99以下にした分の幸運値程度にしかならないかもしれない。
10万以上もポイントを一気に使う機会は中々ないから、それはさすがにもったいなさすぎるんだよな。
「今回のゲン担ぎはハリセンで叩くだけにしとくか」
それならゲン担ぎしながら[ガチャ]でポイント消費できるだろ。
「止めるって選択肢が何故出てこないんですか!?」
「出るわけないのはこれまでの付き合いで十分分かってるだろ?」
「分かってても抵抗したくなるんですよ!」
マルティアはそう叫んだらガックリと肩を落として、スマホに向き直った。
「こんなポイントを無駄にするようなことに加担させられる上に殴られるなんて、あんまりです……」
「〝魔物発生陣〟かURが出たら殴らないから安心しろ」
「それの今までの排出率がどのくらいか覚えてないんですか……」
2600回くらい回して〝魔物発生陣〟が1つ、URが5つだから、合わせて0.2%くらいか。
うん。
「頑張れ」
「張り倒してぇ……!」
いつもの口調が乱れるくらい、プルプルと怒りに震えているな。
いい調子だ。その荒ぶる感情のまま[ガチャ]を引いてくれ。
そうしてマルティアが[ガチャ]を回した結果。
100連目:SR13個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証7回。
「ぶへっ!?」
200連目:SR14個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証6回。
「ぴぎっ!?」
300連目:SR15個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証6回。
「ぱひょっ!?」
400連目:SR12個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証8回。
「べひっ!?」
500連目:SR14個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証6回。
「ほみゃっ!?」
600連目:SR10個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証10回。おい……。
「みゅめっ!? ぷぎゃっ!? 2発!?」
700連目:SR15個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証6回。
「ぐぺっ!?」
800連目:SR16個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証4回。
「ぼぎゃっ!?」
900連目:SR12個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証8回。
「いぎっ!?」
1000連目:SR13個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証7回。
「ぐえっ!?」
1100連目:SR16個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証5回。
「げふっ!?」
1200連目:SR17個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証3回。
「あぐっ!?」
1300連目:SR14個、〝魔物発生陣〟、URなし。最低保証6回。
「ぐぼっ!?」
これは酷い。
「わざと殴られたくてやってるのか?」
「んなわけねえですよ!!」
[称号]の〈欲望の召喚士〉の効果で10連に1回はSRが手に入るのだが、最低保証があまりにも多すぎる。
600連目の時なんか100連回して全部最低保証とか、むしろどうなってるんだと声高に叫びたいほどだ。
マルティアに任せたのが失敗だったか?
「ここまでやったなら、最後まで回してくれ……」
「別に私のせいじゃないのに……」
仕方なさそうに残りの50連を回し始めた。
もはや希望などないな。やはりそう簡単に出るもんじゃない――
「あ、〝魔物発生陣〟が2個出ました」
「いや、なんでだ」
諦めかけた時に40連目で唐突に2枚抜きするなよ。
しかもまだ最後の10連が残ってるから、〈浪費こそ甘美なる幸福〉の効果が発揮してない状態でそれとか、ホントどうなってるんだ。
「それをせめて途中で出してれば、こんなにもハリセンで叩かれずに済んだのにな」
「素直に褒めてくださいよ!?」
「はいはい。じゃあ今さっき出た、Rの高級プリンを好きなだけ食べていいから」
「そ、そんなのでさっきまで叩かれ続けた鬱憤が晴れるわけないでしょうが!」
「でもこれ、こんな小ささで1個2000円するやつみたいだぞ。5個入りだから1万もするな」
俺は箱に記載してあった値段を見せてみたが、マルティアはピンときていないのか首を傾げていた。
「え、それって高いんですか?」
「安いものだと100円前後であることを考えると、20倍は高いな」
「マジですか!?」
驚くマルティアをしり目に、蓋を開けてスプーンと共に手渡してやる。
「こ、こんなので機嫌が直ったりは――うまっ! これがお値段相当の味ですか!?」
美味そうに食ってるけど、割とあっさり機嫌が直ったどころか上機嫌になってるぞ。
「プリンはまだあるから落ち着いて食いな。あと[ガチャ]を最後まで回してくれ」
「わふぁりまふぃた」
口をもごもごさせながら、マルティアは最後の10連を回した。
1枚ずつカードが出てきて、10枚目のカードが――ん? 最後のカードが白?
――カァッ!!
「「えっ?」」




