第67話 新たなるポイントの収入源
カグラから話を聞いた翌日、俺は国の人間とようやく交渉の場につくことができた。
場所はもちろん〝酒場〟だ。
ここなら個室があるしな。
〝酒場〟は魔石を対価にその魔石の価値に応じたお酒と交換できるが、今回は真面目な話をするのでお酒を飲んだりはしない。
〝酒場〟を創る前なら〝商人の間〟か隠し部屋で人払いをすることになっただろうから、思いつきで設置したわりに悪くない判断だった。
「こうして対面でお話しするのは初めてですね。外務省の交渉専門官の中村です」
「確かにそうですね。もっともこの身体は仮初の物なのですが」
「そうなのですか?」
興味深げにこちらを見てくるが、今日はそういう話がしたいわけではないので本題に入らせてもらおう。
「私の身体のことはさておき、以前手紙ではダンジョンが何故急にいくつも消滅したかについて尋ねられましたよね?」
「ええ、そうですね。もしやあの時は回答をいただけませんでしたが、それについてお答えをいただけるのですか?」
「他にも色々と。ダツサラと呼ばれる配信者の方の配信は拝見されましたか?」
「はい、もちろんです。ナオト様の案件は我々にとって最重要なものでありますし、ましてやあれほどまで話題になったものを確認しないわけにはいきません。
ただ、あの配信では影響が凄まじく、諸外国の方でもナオト様に対して何らかのアクションがあるのではと懸念されています」
「え、そうなのですか!?」
ただ世間話をしたようなもんだぞ?
「当然でしょう。ダンジョンは世界各地に出現しているというのに、ダンジョンマスターと呼ばれる存在は表向きナオト様しか確認されていないのですから」
「表向きですか?」
「はい。もしかしたら秘密裏にダンジョンコアへと到達した国もいて、我々のように交渉していないとは限りませんから」
それはそうか。
自国の益を優先するなら隠そうとするだろう。
「我々の国では隠蔽する前に情報が拡散されてしまい、隠しようがありませんでしたが」
そりゃすまんね。
俺がダンジョンの入口付近に交渉できる有無の〝看板〟を設置したせいだろうが、ああでもしないと交渉という選択肢よりも破壊するという選択肢を取られていたかもしれなかったから、仕方がなかったんだよな。
「そうですか。まあ諸外国についてはひとまず置いておきましょう。どう対処するかは私の一存で好きにしても構いませんよね?」
「そうですね……。できれば我が国を優先してほしいというのが率直な意見ですが」
「〝商人の間〟で基本誰でも交換できますからね」
俺にとっては交換してくれるなら誰でもいいからな。
「ですが私が欲しいモノをあらかじめ伝えておき、こちらが提供できるものをお教えすることはできますので、一番初めに交渉の場についてくださった貴国には最大限の配慮をしたいと考えています」
「っ!? あ、ありがとうございます!」
「つきましては、今欲しいものを提示させていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、ぜひお聞かせください」
俺はマルティアから聞いた、新たなるポイントの収入源となるものを提示することにした。
「魔石です」
「魔石、ですか? 魔物部屋で倒した際に得た魔石をお返しすればいい、ということでしょうか?」
「いえ、違います。私が欲しいのは、私のダンジョン以外で獲得した魔石です」
魔石は人類にとっては新たなエネルギー資源になり得るのだが、それはダンジョンにとっても同じだ。
もっとも、ただ他のダンジョンから魔石を持ってこられてダンジョンに置かれても吸収はできず、〝商人の間〟で交換する過程を挟むことによって、ポイントに変換できる。
大抵の物をポイント交換できるから、〝商人の間〟なんてものはそこまで重要じゃないと思っていたが、まさかこんな使い道があったとは思いもよらなかった。
マルティアも〝商人の間〟を得る前までは知らず――というより知識を封印されており、〝商人の間〟を獲得した段階でその知識が解放されたのだとか。
こういった、解放しないとサポート妖精から聞くことができない隠し要素はまだまだありそうだな。
もちろんカグラにはこのことを伝えており、〝商人の間〟の設置を検討しているとのこと。
もっとも俺と違って必要な物しかポイント交換しないから、いらない物がない以上不要な施設なので必要性が薄く、即設置とはいかないだろう。
とはいえ、ダンジョンの1階層にそれがあれば人を呼び込める上に、ポーションなどの物を仕入れよりも高いポイントで交換すれば儲けられるので、十分価値はある。
それに気付けるかは〝商人の間〟についての知識がなければ難しいのだから、意外と意地悪だよな。
「そうですか……。しかし魔石はエネルギー資源として活用できるので、その要望に応えるのは難しいかもしれません」
「それならそれで構いません。何か欲しいものがあればお伝えしますが、魔石であれば常時受け付けているというだけなので」
「では、他になにか希望するものはないでしょうか?」
「申し訳ありませんが、今のところ必要としているものはありませんね」
前はダンジョンバトルが直近で迫っていて、急遽戦力が必要だったからマネキン1万体を要求しただけだし。
今は差し迫ってなにかあるわけでもないので、要求する物はないのだ。
しかしこのままでは特に変化もなく終わってしまうし、ちょっと交渉してみるか。




