第62話 証明
ナオト(仮)のダンジョンを早速見て回る事にしたオレは、動物部屋と家畜部屋と呼ばれる部屋を見て回った。
初めはウサギと馬だけだった動物部屋は、最近では犬や猫といった定番な動物からフクロウのような普段生でお目にかかれない動物までいた。
もっとも、その辺は他の配信者もこぞって紹介しているので、目新しいのがいなければさっさと次の部屋へと移動。
家畜部屋も似たり寄ったりだった。
牛、鶏、豚、ヤギ、羊って、何が目的でこの部屋を創ったのかいまいち不明な部屋だ。
とりあえずここも大差なさそうなので、次へと移動。
メインは魔物部屋と2階層だし、無駄に時間を使ってリスナーに飽きられないようにしないと。
「ん?」
家畜部屋から出ると、何故か周囲がざわつき始めた。
一体何なのかと思えば、全身甲冑の人物が魔物部屋のある方から歩いてきて、入口付近で誰かを待つように壁に背を預けだしたのだ。
・ちょっ、なんだあれwww
・こんな危険性の無いダンジョンでフル装備かよ……!
・勇者君に続いて騎士様現る
取れ高キタ!
配信してなかったらあんな不審者には絶対に関わらないが、配信中の今はむしろ率先して絡みに行かねば。
あ、ただ念のため撮影の許可を取ってからにしないと。逆上させて暴れられたらさすがに困るからな。
「悪いお前ら。撮影してもいいか聞きに行くから、一回カメラ下向けるな」
・行くのかダツサラ
・俺だったら絶対声なんてかけらんねえよ、あんな不審者
・許可取れるタイプの見た目じゃないんだが……
できれば普通に会話できる人物であることを祈る。
欲を言えばキャラの立ってる面白い人物であるとなお良し。
ふぅ……、行くか!
俺は甲冑の人物に近づくと、出来る限り相手を刺激しない言葉を選ぶ。
「あなた凄い格好してますね」
「ん?」
「すみません、少しお話いいですか?」
「……人が来るのを待ってるから、それまでだったら構わないが」
「それと撮影もいいですか? 必要でしたら……全身甲冑ですから顔が映る事はないですが、身体だけの撮影だけでもダメでしょうか?」
「撮影? 配信だよな?」
「はい、そうですけど」
「ふむ……。それならわざわざ来るのを待たなくても、こうして交渉できるようになった事をこの配信で気付いてくれるか。
よし、構わないぞ。全身映してもらっても問題ない」
シッ! 撮影許可が出たのはありがたい。
しかも軽く話した感じ、割とまともそうな人物だぞ。こんな場所で全身甲冑の人物がまともかどうかはさておき、少し謎な独り言をつぶやいていたが、話が通じるならまともと言っていいだろう。
「ありがとうございます。私は脱サラ冒険配信のダツサラ・レンと申します!
会社辞めてからは、こうして配信活動をしてましてね。
今日はこのダンジョンで活動させてもらってるんですよ」
・急に社会人モード入ってて草
・さっきまでの砕けた口調どこ行ったんだよ
・営業スマイル出てて笑う
・こういう時だけ妙に礼儀正しいのほんと好き
・ダツサラ、こういうとこで元会社員のクセ出るよな
・相手も普通に返してくれてるの意外すぎる
「いやぁ、しかし全身甲冑の方にお会いできるとは思いませんでした。
私のリスナーも絶対喜びますよ。もしよければ、ダンジョンの感想とか、
どんな目的で来られたのかなんかも伺えたら嬉しいです!」
「………」
オレがそう尋ねたら、甲冑の人物は無言になってしまった。
「あれ? 緊張してますか?」
「いや、ちょっと返答に困っただけだ」
返答に困るような質問だっただろうか?
「と言うと?」
「自分の創ったダンジョンの感想とか言われても、ここまで創るの大変だったなってくらいだぞ」
「えっ!?」
・は???????
・甲冑だけでもキャラ立ってるのに創造主とか盛りすぎだろ
・嘘乙
リスナーの大半は創造主発言を本気にしていないようだ。
そりゃそうだろ。オレだって痛々しいのと遭遇したと思ってるくらいなのだから。
しかし配信中の今はむしろラッキーですらある。
だがあまりに突拍子もないと仕込みを疑われかねないから、手っ取り早く正体を暴かないといけない。
「つまり、あなたがナオトさんということですか?」
「ナオト(仮)なんだが、まあそうだな」
・あ、イタタタタ
・これは香ばしい
・ダンジョンマスターを偽称するとか、本物がそこにいるのによくできるな
あくまでも自分がダンジョンマスターだと言い切るか。
それならその証明をしてもらうか。
偽物には絶対にできないことを言えばさすがに観念するか、これ以上の撮影を断られるだろうから、この場から離れられる口実になるだろう。
「それじゃああなたがダンジョンマスターだと言う証明をしてみてくれませんか?
私のリスナー達が本当にあなたがダンジョンマスターか疑っているんですよね」
・そりゃ疑うよ
・ダツサラだって内心疑ってるのに、俺らのせいにして自分はあたかも疑ってないムーブしとるw
・ダツサラ、しれっと自分は中立みたいな顔してて笑う
「証明か……」
甲冑の人物はちょっと悩む素振りを見せた後、植木鉢が乗ってる机を指さした。
「今から抹茶パフェが出る」
「はい?」
甲冑の人物がそう言った数秒後、机の上にポンッと現れる抹茶パフェ。
「え?」
・え?
・え?
・え?
・え?
・え?
「これで証明になったか?」
「ええええええっ!!!?」
マジで本物なの!?




