第58話 あれから半年
あれから半年。
とくに代わり映えの無い日々を過ごしている。
そう……ビックリするくらい何もなかった!
ダンジョンバトルとかのイベントがまたいつ来るのだろうかと思っていたが、一向に来る気配はない。
いきなりダンジョンの数が半分になったのが原因だろうか?
まさかとは思うが、ほとんどのダンジョンマスターがダンジョンコアを破壊して残機を得る、そんな当たり前の思考をする事を想定していなかったわけじゃあるまいな?
普通に考えて自分の命が大事なんだから、保険が手に入る機会があれば手に入れるに決まっているだろう。
まあ、さすがに想定してないなんてありえないか。
イベントは不定期という話だし、そもそもダンジョンマスターになって一カ月であんなイベントを起こしたのも、俺達に危機感を与え、ちゃんとしたダンジョンを構築させるためだろう。
俺に限って言えば、無意味としか言えないが。
「URの魔物が[ガチャ]で出ねえ……」
[ガチャ]で出てきたものを並べるだけなのだから。
問題はその[ガチャ]が、この半年の間でUR以上の魔物を一度も排出しないということだが。
ダンジョンバトルのようなイベントも無ければ、[ガチャ]の結果も特筆することがないという、無いない尽くしの半年なのだ。
「UR自体は出てるんですけどねぇ……。2個だけですけど」
マルティアがそう言ってきたが、数の上ではその通りでも、その発言は認められないな。
「そのうちの1個が〝宝箱用アイテム〟だったから、実質1個じゃねえか!」
800回近く[ガチャ]を回したはずなんだが、いくらなんでもおかしくねえか?
以前、ダンジョンマスター共を36人屠って1600回くらい回した時は、URは2個だったからそれと比べればマシなのかもしれないが、あまりにもURの出る確率が悪すぎる。
URのさらに上、LRが出てくる日は一生来ないとすら思えてくる。
……そのLRが〝宝箱用アイテム〟で出た日には、憤死するレベルだろう。
「SRですら普通は[ガチャ]で出てきませんから、出てるだけマシなんですけどね。
〝宝箱用アイテム〟ですし、また〝商人の間〟で交換アイテムに使うくらいですかね」
「問題はそれと釣り合うものを国が出せないだろうってことだな」
〝エリクサー〟
それが2個出たURの内の1つである〝宝箱用アイテム〟だ。
効果は『飲んだりかけられた対象が健康な肉体になる』というもの。
遺伝性疾患のような遺伝子の問題すら治してしまう代物で、ぶっちゃけ死んでなければこれさえ飲めばどうとでもなるという、とんでもないポーションである。
〝ポーション(強)〟がSRだった時点でこの次は何がくるのかと思ったら、伝説の万能薬が来たか。さすがに安直に(極)とか(超)ではなかったようだ。
いや、名前とかどうでもいい。
それよりも〝エリクサー〟の効果が高すぎて、〝商人の間〟に出しても交換できないということだ。
「……考えたところで交換できない以上、どうしようもないか」
「ですね。でも一応交換アイテムとして掲示しておいてはどうですか?」
「そうだな。下手に交換しやすいものだと価値が薄れるし……オリハルコン相当のものって記載しておくか」
『本当かいマスター!?』
俺のつぶやきが聞こえたのか、フィギュラスがキラキラした目をこちらに向けながら近づいてきた。
『今、オリハルコンって言ったよね! 手に入ったら……』
「お前以外使うやついないだろ」
『ひゃっほーー!!』
かなりのハイテンションで飛び跳ねてるが少しは落ち着け。
「まだ手に入ると決まったわけじゃないんだから、ぬか喜びにしかならないぞ。
オリハルコンなんてどこのダンジョンもまだ出してないだろうし」
半年以上経ったが、それでもオリハルコンをドロップさせられるようなダンジョンはまだいないだろう。
魔物を倒せばドロップ品が手に入るが、オリハルコンをドロップするような魔物なんて、それこそフィギュラスクラスの魔物でないと出ないのは間違いない。
『それでも手に入る可能性があるなら十分だよ。でも交換を待つよりマスターが[ガチャ]で出しちゃう方が早い気もするけど』
「〝エリクサー〟が出たくらいだし、オリハルコンの剣とか出ても不思議ではないな」
少なくとも人類がオリハルコンを手に入れられるのに、あと数年は少なくともかかるであろうことを考えると、半年で[ガチャ]から〝エリクサー〟が出た実績から、確かに[ガチャ]の方が早そうだ。
『あ、〝エリクサー〟の話が出たついでだけど、それとは別のもう1つのURを使った人形がようやく出来たけど見る?』
「それはもっと早く言うべき案件だろ」
『ごめんごめん。でもこれの出番って急ぎじゃないよね?』
「今大してする事がないから、重要な案件がそれくらいなんだよ」
この一月、フィギュラスは自身の工房にこもったと思ったら出て来たりの繰り返しをしており、人形作りに今までで一番時間をかけていたが、それがようやく完成したようだ。
一週間程度なら工房にこもりきって作業していたが、一カ月もかける代物だと、工程と工程の間に待ち時間が発生することもあるらしく、その場合は息抜きに出てくることもあったから、今回もそれなのかと思ってたぞ。
「しかし、あれをよく人形に落とし込めたな」
『大変だったよ。一発勝負だったし、失敗したらあの〝ダンジョン施設〟アイテムは消失してたんだから』
「成功確率が低くても、成功した時の恩恵が大きすぎるから賭けをするのは当然だろ」
『マスターの場合、恩恵が小さくても賭けに出たんじゃない?』
「マスターですから間違いなくそうですね。これだから【挑戦・賭博願望】持ちは」
「フィギュラスが上手くやってくれたんだから問題ないだろうが」
ジト目で見てくるフィギュラスとマルティアの2人は置いておいて、早速作られた人形を見ようじゃないか。




