第44話 まだ動くか
『『『グルアアッ!?』』』
後方を警戒していたリザードマンにヘラクレスクワガタが攻撃を仕掛ける。
ヘラクレスクワガタがSRの魔物で出た時はバグかと思ったが、ちゃんと魔物枠だった。
見た目も18センチで普通の昆虫にしか見えないのだが、魔物枠だけあってその攻撃手段は強烈なものだった。
なんと風魔法のような力を使って全身を風の鎧で覆って高速で突撃することができるのだ。
まるで大口径のライフルで放たれた弾丸のごとく敵を次々に貫通していく。
襲われてるリザードマンも必死に抵抗して反撃しようとするも、身体の小さいヘラクレスクワガタにまるで攻撃が当てられていない。
しかも狭い通路で襲われているので、他の仲間が邪魔でろくに動けていないし。
「よし、今の内にドンドン敵の数を減らしていけ」
俺の命令とリザードマン達の行動が変わるのは同時だった。
先ほどまでは襲ってきたヘラクレスクワガタをどうにかしようと動いていたが、今は慌てて通路から部屋へと移動しようと行動し始めた。
どうやら向こうも魔物に指示をしたようで、狭い通路では不利だと判断したようだ。
そこそこの数を減らせたが、侵入してきた魔物の数300体に対し、一割ほどしか削れていない。
そうこうしているうちに全員が部屋の方へと移動してしまい、逆に鬼人武者がヘラクレスクワガタへと向かって来てしまう。
「すまん、ヘラクレスクワガタ。ヒットアンドアウェイしつつ出来る限り時間を稼げ。その間にオークバーサーカーと他の魔物で前方のケットシーを叩け」
ヘラクレスクワガタがその小柄な身体と風の鎧で鬼人武者の薙刀による攻撃を避け、逆に突撃して吹き飛ばしていた。
一瞬いけるかとも思ったが、さすがにカグラがほとんどのポイントをつぎ込んだ魔物だけあって、その鎧にはほんの少し傷がついた程度。
ヘラクレスクワガタではさすがに倒せないか。
「ヘラクレスクワガタ、足を狙え」
せめて機動力は落としておきたい。
本当なら他の魔物と協力させて鬼人武者を狙いたかった。
もちろん戦力の逐次投入は下策だと分かってはいるが、種族の違う魔物同士が連携するのは中々難しい以上仕方ない。
下手すればお互いの攻撃が味方を巻き込んでしまうのだから。
俺達自身気付かなかった、[ガチャ]で魔物を手に入れる弊害がまさかここにきて露呈するか。
しかし今更どうしようもないことを唸っていても仕方ない。
とにかく鬼人武者以外の魔物を削れるだけ削らねば。
『ブゴォーー!』
『『『ニ゛ャー!?』』』
巨大な棍棒を持つオークバーサーカーが他の魔物と一緒にケットシーを襲う。
と言っても、オークバーサーカーは身体能力が高い代わりに敵味方の判別が曖昧なので、他の魔物達はオークバーサーカーとは距離を取らせて、ケットシーやリザードマンをオークバーサーカーの方に押しやるよう命令しているが。
その指示が功を奏し、次々とケットシーやリザードマンは倒されている。
向こうも反撃に出てオークバーサーカーに攻撃を仕掛けてくるが、痛みに鈍いのかオークバーサーカーは攻撃を受けても気にせず、攻撃してきた魔物を叩き潰していた。
『ジュッ!?』
しかしそれも時間切れだった。
ヘラクレスクワガタがついに鬼人武者の薙刀に捉えられ、切られてしまった。
羽の部分に攻撃を受けて飛べなくなってしまったヘラクレスクワガタでは、鬼人武者の攻撃はもう避けられずトドメを刺されてしまう。
「ちっ、やられたか」
だがヘラクレスクワガタは頑張ってくれた。
足を集中して狙いに行ってくれたお陰で、鬼人武者が多少ではあるが左足を庇っているような動きをしている。
しかし鬼人武者はその様子を見せたのは一瞬で、すぐにケットシー達、いやオークバーサーカーのいる場所へと駆け出した。
「鬼人武者になりふり構わず攻撃しろオークバーサーカー!」
『フゴォー!!』
薙刀を構えて向かってくる鬼人武者に対し、オークバーサーカーは叩きつけるようにその手に持つ巨大な棍棒を振り下ろした。
しかし鬼人武者はそれを難なく避けて、オークバーサーカーの心臓のある位置に薙刀を突き刺した。
やられた。
『フゴォ!』
『っっ!?』
そう思ったが、オークバーサーカーは薙刀で刺されたにもかかわらず鬼人武者を殴り飛ばし、そして膝をついて倒れた。
痛みに鈍かったから、心臓を刺されてもそれに動じることなく動けたのだろう。
もっとも血圧が急激に低下し、意識がすぐに失われて倒れてしまったが。
オークバーサーカーの命を顧みない攻撃で鬼人武者は倒れ伏す――なんてことはなく、普通に起き上がってきたのは残念だったが。
多少とはいえダメージを与えられたが、この程度ではまだ動くか。
鬼人武者がヘラクレスクワガタを倒した段階で、オークバーサーカーを残して他の魔物達は撤退させたため、敵は再びケットシー、鬼人武者、リザードマンの順で俺のダンジョンを進んで行った。




