第26話 〝名付け〟のメリットとデメリット
マリオネットジェネレーターから言われた言葉が受け入れがたかった。
今こいつなんて言った?
「……なんだって?」
『だから素材だよ。なんでもいいよ? 木でも鉄でも粘土でも。
ただ、素材によって人形の質、まあ戦闘力とかに耐久力に直結するからなんでもいいというのは語弊があるかもね』
聞き間違いじゃなかった。
こいつの能力を発揮するには少なくとも原材料がいる。
そしてさらに、こいつは自分が造ったものしか操れないのだから人形が1体もいない今の状態では無力も同然。
「「魔力で人形が出せないのか(ですか)!!」」
『うわっ!?』
思わずマルティアと同じ言葉を同時に発していた。
そりゃ叫びたくもなる。
なにせ戦力になると期待したURが、まさかの戦力外になるだなんて誰が想像できるんだよ。
『いやいや無理だから。もしもそんな事が出来たらボクの価値はもっと高かったんじゃないかな? いくらのポイントで交換したか知らないけど』
確かにURのさらに上にLRが存在しているようなのだから、そんな都合のいい強力な魔物であればLRだったか。
「そうか。無理言って悪かったな」
『別にいいさ。気にしてないよ』
ふむ。能力と軽い口調はともかく、性格的には取っつきにくいって感じではなさそうだから、その点は悪くないな。
とはいえ、素材か……。
『ところで素材なんだけど、木の一本もないの?』
「あ~それなんですが――」
マルティアが俺の代わりにこのダンジョンの説明をマリオネットジェネレーターにしてくれた。
『……マジ?』
「「マジだ(です)」」
信じられない者を見るかのような目で見てくるマリオネットジェネレーター。
目は口程に物を言うとはよく言ったもので、目しかないだけあってこいつの場合はよりそれが顕著だった。
『[ガチャ]で自分が召喚されたのも、素材1つ満足に渡せないような、まだろくにダンジョンが育っていないダンジョンマスターに召喚されたのにもビックリだよ』
「なかなかハッキリと言うじゃないか」
『言葉を濁したところで何も変わらないからね。
ああ、こんな酷い状況だからって裏切ったり、命令を聞かなかったりはしないから安心してほしい。一からのスタートみたいなものだから、クリエイターの端くれとしてはむしろ燃えてくるよ』
「は? 裏切る?」
「あっ……」
「おい、マルティア。『あっ……』ってなんだ?」
こいつ、うっかり忘れてたみたいにボソッと声を漏らしやがったぞ。
「す、すいません。藁にも縋る状況だったせいか、ようやくダンジョンがまともになりそうな魔物が[ガチャ]で引けた興奮で忘れてました。
その、実は魔物は確かにダンジョンマスターの指示に従いますが、交換するポイントが高いような強い魔物に限っては言うことをきかないどころか、忠誠心次第では他のダンジョンマスターに寝返る場合がありまして……」
おいおいおい! めちゃくちゃ重要な仕様じゃねえか!?
『そんなに心配なら〝名付け〟でもしておく?』
「〝名付け〟?」
「あ、そうです〝名付け〟です! 〝名付け〟を受け入れた魔物はサポート妖精同様、ダンジョンマスターと一蓮托生になりますから、裏切られる心配はなくなります」
「なるほど。そういう仕様もあるのか……」
さっきから説明されてない仕様がポンポン出てくるんだが、サポート妖精としてちゃんと役割を果たしてくれ。
まあ[ガチャ]とかで感情を乱高下させてたから、説明する余裕がなかったんだろうが。
「だが〝名付け〟を受け入れる魔物は何の得があるんだ? いざって時に逃げられなくなるだけだろ、それ」
「もちろん魔物側にもメリットはあります。ダンジョンが成長するにつれて、その魔物も連動して強化されます」
「単純に強くなれるのか。逆にダンジョンマスター側のデメリットは何かあるのか?」
「そうですね。わずかですが負の感情エネルギーがその魔物の強化に使用されることになるので、取得できるポイントが減ります」
「そうなると〝名付け〟もいい事ばかりじゃないのか」
全ての魔物に〝名付け〟を行って強化、ってのは甘い考えなわけだ。
「ですが今回ばかりは〝名付け〟を行っておいた方がいいかと。魔物本人もそれを認めてるわけですし、今の現状で知能の高い魔物が〝名付け〟を認めることはそうそうないでしょうから」
まあそうだな。
せっかく[ガチャ]で出た高レアのユニークが他のダンジョンマスターに取られるのはムカつくし、奪われないようにしておく方がいいだろう。
「それじゃあ名前だが……」
『できればカッコイイのにしてほしいな』
カッコイイって言われても、ネーミングセンスには自信がないんだが……。
マリオネットジェネレーターだし、最初の三文字からとって――というのはなんか土管工のオッサンが頭に過ぎるからなしだな。
それじゃあ――
「フィギュラス」
『へぇ、悪くないね。どういう意味だい?』
「単純にフィギュアをもじって、人形を生み出す匠っていう意味を込めてみたんだが嫌か?」
『匠……匠か。いいじゃないか。それじゃあボクはフィギュラスだ。この身が朽ちるその時までよろしくね、マスター』
マリオネットジェネレーター――フィギュラスがそう言うと、フィギュラスと俺の身体が光り、何かのパスが繋がったような不思議な感覚を感じた。
どうやら無事〝名付け〟が行われたようだ。




