第129話 配信(1)
人間側の情報を得るために〝オファリング・メイデンズ〟の3人に話を聞いた結果――
「あの日、急に天の声が頭に響いてきたと思ったら、ダンジョンから魔物が大量に現れたんだからビックリしましたよ」
「悪いな。あれに関しては俺もどうすることもできなかったんだ。
魔物は勝手にダンジョンの外に出されるし、こちらの指示も中途半端にしか聞かなくなって、油断するとすぐに人を襲おうとするしな」
・やっぱりナオト(仮)は人類のために動いてくれてたんだな
・騙されるな!ダンジョンマスターは悪だ!
・ポーション(弱)を大量に配ってくれてありがとう!
何故か〝オファリング・メイデンズ〟の配信に参加することになった。
リスナーの反応は俺への悪意が2割ぐらいあるって感じか。思ったより少ないな。
やっぱり他の地域よりも被害を少なくしたり、〝ポーション(弱)〟を配ったりしたのが効いたか。
「マスター様。リスナーから【ポーション(弱)を配ってくれてありがとう】というコメントがありますが、そういえばどうしてあんなにも大量に用意できたのですか?」
「そ、そうだよね。マスター様って、望んだアイテムを取り出すのに多大な負荷がかかる状態なんじゃありませんでした?」
・やっぱり嘘をついてたんだ!ダンジョンマスターはやはり悪だ!
さっきからダンジョンマスターは悪だとコメントするやつがいるな。と思ったらそのコメントが【このメッセージは削除されました】になった。
さすがにしつこいし、配信の空気が悪くなるからモデレーターが動いたんだろう。
「あれは元々あったアイテムを薄めて量を増やしただけだぞ」
「え、薄めたって〝ポーション(強)〟や〝ポーション(中)〟を薄めたってこと!?」
・え、もったいない!?
・それがあれば病気の家族が救えたのに!
・怪我人は自然治癒に任して、ポーション(強)やポーション(中)を配ってほしかった……
リスナーの反応がそれはないだろ、みたいな空気になっていったが、俺の次の発言でそれが一変した。
「いや、薄めたのは〝エリクサー〟だ」
「「「えっ!?」」」
・そういえばあったな
・商人の間にオリハルコン相当のものと交換できるようになってた、実質交換不可能なアイテムですね
・死んでなければ何でも治せるアイテムじゃなかったっけ!?
「そんな希少なアイテムを使って良かったんですか?」
「希少ではあるが、今の人類では誰も交換できなかっただろ? ずっと〝商人の間〟の肥やしになるくらいなら、人類のために使った方がいいと思ったんだ」
・や、優しい……
・俺ならずっと使わずに、いつか日の目が来ると思って抱え込んでるだろうなぁ
・↑みたいにエリクサー症候群に普通はなるだろうに
ちなみに〝オファリング・メイデンズ〟と何を配信で話すかは打ち合わせ済みなので、〝エリクサー〟の件は3人とも知っているから、先ほどまでの反応はただの演技だ。
望んだアイテムを取り出すのに多大な負荷云々に関して疑問を抱いている者がいるという話だったので、その内情を説明することにしたというわけだ。
本当は試練のことも細かく説明したかったのだが、やはり詳しくどんなものだったのかは伝えられなかったので、大雑把な説明となっている。
「なるほど。それであんなにも〝ポーション(弱)〟を用意できたんですか」
「まあそうなんだが、実はあれ、全部じゃないんだ」
「どういう事でしょう?」
「薄めていく段階で〝ポーション(強)〟、〝ポーション(中)〟と段階を踏むことになるんだが、その一部を薄めずに残してある」
・えっ!?
・つまりそれって、ポーション(強)やポーション(中)を大量に用意できたってこと!?
・オーディションまたやるんですか!!?
「オーディションですか!?」
「前やった時の最終選抜者は、まだ必要なのであれば優先して契約してもいいがな」
・マジで!?
・ホントですか!?
・あれ? でも拘誓紙とかいう契約書が貴重だったから、あのオーディションやったんじゃなかったっけ?
よく覚えてるな。
オーディションやったのは半年前だっていうのに。
「リスナーの言う通り〝拘誓紙〟は無いな」
「それじゃあ契約できなくないですか?」
「確かにそうだが、政府を挟んで契約すればポーション代くらいは徴収できるだろ」
「ええ~。でもそれだとわたし達のように拘束力がある契約ではないですから、不平等じゃないですかー」
「夕莉と詩織が言うなら分かるが、茉奈がそれを言うなよ」
「なんで?!」
・残当
・茉奈ちゃんは自分から率先して契約しに行ったからね
・自分の身を差し出してダンジョンマスターと契約しようとか、キ〇ガイじみた考えを実行に移した女にその権利があるとでも?
コメントが俺より辛らつだな。
「茉奈のことはともかく、別に不公平ではないだろ」
「わたしの扱い……」
「ま、まあまあ」
「私達は納得して契約しましたし、半年早く治療を受けられたと考えれば別に文句などありはしませんが、不公平ではない、とは?」
「そいつらからはポーション代しかもらわない代わりに、こちらからそれ以外の援助を一切しないからな。
具体的にはお前らが使ってるような、専用装備になってる〝収納の指輪〟とか」
「「「ああ」」」
支払い額が増える代わりに便利なアイテムを俺から貰える方がいいか、一定額の支払いを自力で完遂するかの違いだな。
前者は支払いが長引く代わりにアイテムで効率よく強くなれ、魔石を回収できるのに対し、後者は支払い額が増えることはないが、自力で魔石を集めきる必要があるというわけだ。




